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緑の奇跡 〜なぜJ1に復帰できたのか〜

ヴェルディ・サポーターは試合前から奇妙な感覚にとらわれていた。

「どうしよう、また負けるかもしれない。」
「最後の最後に逆転されるかもしれない。」

長過ぎるJ2暮らしのせいか、ネガティブな感情でいっぱいになることがほとんどだったヴェルディのサポーターが

今度は勝てる気がする、絶対に昇格する

と、根拠もなく想い始めていた。
その数は始めはそんなに多くはなかったかもしれない。ただ時間の経過と共にその想いは確信に近いものになっていく。そのせいか先制された後ですら、スタジアムにはより大きな声援が飛び始めた。

負けるはずがない

いつもなら虚勢を張って、カラ元気でそう唱えていたのだが、今回だけは違う。すべてがこの勝利のためにある。その気持ちが1点ビハインドの中でも一段と声援を大きくしたように思えた。

そして選手を支え続けたその声が、ついに歓喜に変わる。

染野のPKが決まった瞬間、沸き立つような歓声と怒号にも似た雄叫びがスタジアムを突き破った。

僅かな残り時間を、選手たちは体を張って遣り繰りし、ついに試合終了のホイッスルが鳴る。

東京ヴェルディ、J1復帰の瞬間

涙混じりの歓喜の声がスタジアムを駆け抜けた。

長く細い昇格の糸を手繰り寄せ、15年分の思いを乗せ、ついにJ1への最終チケットを手に入れた。選手、監督、スタッフ、本当にお疲れ様でした。

1.なぜ今年は勝てたのか

ところでなぜ昇格できたのでしょうか?
今年は一つ一つ弱点というか、問題を潰してきた印象があります。
だいぶ前の自分のツイート。

これみんなやりましたよね。
①モダンなフレームワークを持つ指導者の招聘
城福さんがモダンか否かというのは疑問を呈する人もいるでしょうが、最先端とはいかなくても充分モダンだったのではないでしょうか?

監督としてしっかりとしたフレームワーク、普遍的な方法論は持ってる人なんだなというのは、書籍からも伝わります。

移籍と監督に関する話もあるので、気になる方は読んでみてください。具体的でわかりやすいです。

②OBの排除

今年はかなり意図的に今までのヴェルディ色を消してきた感じがします。今は離れてしまっている柴崎選手もその辺の変化は感じ取ってたみたいです。シーズン中に漏れ伝えられた情報として、古株のスタッフさんもポツポツ辞めているという話もあり、少し心配もしていたのですが、何とか上手く乗り切れたようですね。

③肉体改造、設備改良

去年のラウンドテーブルでも言われていたように、グラウンド改良には既に着手し始めていました。
トップの選手の肉体改造も進んでいるのは、森田選手をこの数年間の映像をずっと見てくるだけでもわかると思います。今年のプレーオフ前の画像、森田の腕がかなり太くなっています。

もちろんトップだけでなく、ユースの子たちも身体の大きな子が増えてきたように思われます。
今度上がってくる白井君とか180cm以上で約70kgと、かなりアスリート体型ですし、他にも180cm超えのプレーヤーはポツポツ出てきています。

④負けグセを治す
年間を通じて城福さんは意図的に手を抜く試合をなくそうとしてましたね。常にベストメンバーで勝ちに行くという姿勢を見せることで、負けてもいい試合などないという雰囲気を作り出すことに成功していました。この辺はやはりベテラン監督の上手さかなど思いましたね。

天皇杯後のコメントも上手く意識をコントロールしているのが伝わってきます。

「選手は、今持っているものをすべて出して、よく頑張ってくれた。勝てなかったのは私の責任。この(敗戦の)借りは、同じステージで返さないといけない。今日の悔しさを今季(残りの)すべての試合にぶつけて、必ず同じステージに立ってリベンジしたい」

この4つのポイントを抑えることで、しっかりとしたチームが出来、見事、J1に戻ることができたように思われます。

2.これからの課題

もちろんこれですべてが上手くいった訳ではなく、まだまだ課題は残されています。

HRM(人的資本管理)はこれからが勝負です。
上の話は何年か前に書いたものですが、そんなにズレてなかったですね(安心)。城福さんになってからポゼッションからパッキングレートに指標が変わったのが良かったのかなと思います。(この辺の数字は公表されてませんが・・・)
これからは、ヴェルディのサッカーというフレームワークに対して人を投入し、新たな価値を生みだす。そこで生まれた価値は投入された人に対しても分配されるので、人材自体の価値が上がる。その付加価値のついた人材をマーケットに放流することで、新たな資金を得て、さらに新しい人材を投入していく。そこで初めて人的資本が回りだすと言えます。
2023の経験をどのような価値に変えていけるのか。このオフシーズンの動きは非常に興味深いです。この課題をクリアできれば、J1定着だけでなく、更に上のステージに行くこともできるはずです。江尻GMの手腕に期待がかかりますね。

3.まとめ

サッカーチームが売れるものは、次の3つしかない。

①試合(チケット・放映権他)
②グッズ類(看板等広告もここに入る?)
③人(Jr等の教育も含む)

①はリーグが仕切る形となっているので、各チームが個別に介入することは難しい。そのため②③が各チームが扱える商品となる。
②についてはこれまでも様々な開発・発見が行われているが、③については、まだまだ未開発なところが多い。指標の扱いやフレームワークに結果が依存してしまう部分などもあり、なかなか正解というものは現れそうにない。

逆を言うならば、圧倒的に伸び代しかない領域なので、ここで上手く立ち回ることができればヴェルディが常勝チームになれるのではないかなと思ってます。
頑張れ!ヴェルディ!

本日もご清聴ありがとうございました。(今日は短めです。)

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