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料理人のキャリアについて思うこと

こんにちは、飲食店支援会社のCAROT嶋田です。

起業する前はフリーランスコンサルタントとして全国の中小起業のIT・WEBマーケティングの支援をしていました。
もっと前(10年前)は星付きフレンチの料理人をしていました。

なぜ、料理人のキャリアというテーマを選んだか?
私自身が料理人だった事、新型コロナウイルスによる飲食店の打撃、そして、現在いろんな飲食店の支援をしている事で料理人と話す機会も増えてきた事がテーマを選んだ背景です。

独立or雇われ料理長or飲食企業の料理人



一般的に料理人のキャリアは大きく上記の3つの方向性+αになると思います。

1.独立
若いうちに調理技術だけでなく接客、採用、教育などを学び独立をするタイプ。独立をしてうまくいけば雇われ時代の何倍も稼ぐ事も可能かもしれませんが、現実そんな方はごく僅かなです。

余談ですが、独立前に勝てる飲食ビジネスの設計支援ができるような安価なサービスや新規開業希望のサークル運営などもしたいです。

2.雇われ料理長
会社の人員として採用、その店舗や業態の料理長として業務をまっとうする形もあります。経営者や会社によって方針は異なりますが、小さな会社では仕入れから価格設定まで、全ての権限を任されるケースもあります。
ポジティブな点は、経営の疑似体験ができる点。ネガティブな点でいうと、全てを任されるため精神的にも体力的にもキツイ事もあります。
※ここは事前の話し合いで、どこまでやるかを確認した方が良いと思います。

3.飲食企業の料理人
言葉を選ばずに言うと「サラリーマン」です。ホテルの料理人・外食企業の料理人・チェーン店の料理人などです。

+α.その他
・のれん分けによる独立
・料理人という技術や知識を活かして食品メーカー、工場などに転職
・大手外食企業のメニュー開発担当
・海外レストランの料理人や調理長(和食レストランはお給料が高い傾向)

その他でいうとあげるとキリがないので、このくらいにしておきます。


料理が上手いだけではうまくいかない



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 私自身がそうでしたが料理人時代は

「魚を上手に卸せるようになりたい!」
「ラムラックの掃除が早く綺麗にできるようになりたい」
「いろんなソースを覚えたい」
「パテ・アンクルートが作れるようになりたい」
などと、技術追求の事ばかりを考えていました。

若いうちから技術を追求して誰よりも仕事(料理)ができるようになれば僕は料理人として成功する!

このように考えていました。

しかし、実際は超一流の高級レストランの料理長よりも
客単価4,000円の居酒屋店長やカジュアルビストロの料理長の方がお給料も高く休みも多く取れていたりします。

私は10年前にこの事を理解した時、もの凄いショックをうけた記憶があります!笑

「調理技術のレベルと収入は比例しない」

「逆にそこまで料理が上手じゃなくても料理人として成功している人はいる」

「料理人のキャリアの成功の鍵は技術じゃない」

これはある意味、私が料理人を退いた理由の一つでもあります。
料理人は料理一筋だけではキャリアがうまくいかない。と知った時は、何かこれまでの自分を否定された気分になった記憶があります。


料理人もビジネスを理解しなければいけない



あなたのお給料は会社やお店の売上、利益の中からでている。
という話をすると、「そんなの当たり前じゃん、わかっているし、それは考えているよ」という声も聞こえてきそうです。

でも本当にそうでしょうか?
・一品あたりの原価を算出し、それをいくらで販売しいくらの利益が出ているか?
・コース料理あたりの全体の原価と販売利益
・逆に原価が安く、味もよく、製造量を担保できる料理にはなにか
・それを使って外販でプラスの売上、利益を作れないか?
・仕込み時間を考えた時に仕込みに人件費はどのくらいかかっているか。

ビジネスを理解している人であれば、このような事を考えていると思います。少しドライな言い方をすると、どんなに最高な食材を使い最高な技術を身に着けたとしてもお金を生まないのであればビジネスとしては価値はありません。

料理人がビジネスの視点を身につけることが、料理人がキャリアを描く上で重要だと考えています。

なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 

著者であるミシュランの一つ星を9年連続維持しておられるイタリアンレストラン「ラッセ」の経営をされている著者の村山さんの視点なども参考になるかもしれません。


構造を理解できる場所で働く



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実際の話なんですが、個人経営者で1店舗月商400万円以上の売上を上げていて赤字経営という飲食店があります。
お客さんからも愛されていてリピート顧客もいます。利益意識もありますが、利益が出る構造になっていないのです。

私が言っている構造とはなんなのか?わかりやすいものがあったのでこちらをご覧ください。

飲食店の利益率はどのくらい?儲かるお店の作り方。開業に必須な原価率・営業利益・FL比率って?(情報元:ミクリード)

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・飲食業界は利益を出しづらい業界。どんぶり勘定では簡単に赤字になってしまう。
・飲食店経営のために最低限知っておくべき利益は「粗利益」と「営業利益」。粗利益は「売上から原価を引いたもの」営業利益は、「売上から原価を引き、さらに経費を引いたもの」
・飲食店経営のために最低限知っておくべき経営指標は「損益分岐点」と「FL比率」。損益分岐点では、「下回ると赤字になるぎりぎりのラインの売上額」がわかり、「FL比率」では「売上高に占める食材原価(Food)と人件費(Labor)の比率」がわかります。

売上と経費があって、経費の内訳はこうなっていてと、最低でも月毎に正確に利益がどのくらい出ているかまで計算して経営ができている経営者や会社の元で働くべきだと考えています。
もちろん、それなりに大きな会社だと会社の全体数字は共有してもらえませんが、事業部や店舗単位であれば共有する会社もあります。

経営者、または会社として数字を意識しているところでビジネスの疑似体験をする環境に入り、数字を理解する事が料理人がビジネス構造を理解する手段だと考えています。


 他業界に目を向ける



これは独自の観点かもしれませんが、料理人はビジネスやコミュニケーションスキルを磨いて他業界にいく事でキャリアの幅が広がると考えています。

料理人のスキルで活躍できる市場は3つ
1.外食産業:飲食店など家庭外で調理された食品を家庭外で食事する形態
2.内食産業:家庭内で調理を行って食事を行う形態
3.中食産業:家庭外で調理された食品を、購入して持ち帰るあるいは配達等によって、家庭内で食べる食事の形態。

一般的な料理人が考える料理人のキャリアは、この「1.外食産業」を指しています。
ただ、料理人のスキルがあれば下記のようなキャリアの可能性もあります。
※下記はあくまでイメージです。

・独自のミールキットビジネス(オイシックスのような)を展開しているIT系企業の商品開発として参画
・食品加工工場のお客様のメニュー開発担当
・冷凍食品のメーカーの自社商品の開発
・デリバリー系のB2B企業にてコンサルタント
・フードテック系スタートアップで立ち上げメンバーとして参画(弊社はここにあたる)

など、考えればキャリアの幅は無数にあります。
料理人は厨房に入って仕込みをして営業時間になったらお客様に料理を提供する。というだけのビジネスモデルだけではなくなったと考えています。

日本の料理人の技術は世界最高峰、本場で食べるよりも日本人が海外の料理を作った方が美味しいこともあります。

私はそんな日本の料理人のキャリアの幅を広げたいと考えています。


成長市場に目を向ける



現在、コロナウイルスの影響で外食産業は大きな打撃をうけていますが、仮にそれがなかったとしても大きな成長を短期間ですることは考えにくい状況です。

しかし、1.263億が食事を取らなくなるわけではないので、その市場は他に流れます。下記の外食産業と中食産業の市場推移をご確認ください。

外食産業の市場推移(情報元;大阪学院大学/ホスピタリティインダストリー研究所/研究者コラム)

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 外食産業の市場規模は、「公益財団法人 食の安全・安心財団附属機関 外食産業総合調査研究センター」(以下、「外食産業総合調査研究センター」)の発表によると、1975年約8兆6,257億円だったものが、1997年には約29兆702億円へと3倍以上の成長を遂げた。しかし、この年をピークに徐々に減少し、2012年には23兆2,386億円になっている。(図表1)
 ここ数年は減少傾向に歯止めがかかり、23兆円~24兆円で推移している。市場規模が減少した原因は、長引く景気低迷と少子高齢化。日本の総人口が横ばいであるにもかかわらず、景気低迷による価格競争をした結果、市場規模が縮小するという悪循環を招いた。またコンビニ等による弁当・惣菜の販売強化による「中食市場」へのシフトも市場規模縮小の一因と考えられる。外食産業総合調査研究センターの発表によると、中食の市場規模は、外食産業のピークであった1997年には約4兆3,000億円だったものが、2012年には約6兆4,648億円へと2兆円強の成長していることからも、中食へのシフトが裏付けられる。

15年で規模3倍に!急成長中の「中食業界」を徹底紹介!現状・今後・将来性は?(情報元:飲食特化型求人情報サイト食べるんだ)

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1987年では約1.9兆円の規模だった「中食市場」も、2015年には約7.1兆円と、15年程で3倍以上の規模へと急成長しています。このように、外食をする人が減った事で、必然的に外食産業の中心だったファストフードやファミレスなどがテイクアウト品を出すなど、中食産業にシフトしていったことも大きな要因と言えるでしょう。

一般的にビジネスは成長市場にいち早く参入した方がチャンスがあると言われています。
現状、外食産業は低迷しており仮に今の状況が落ち着いたとしても市場は顧客獲得競争になる可能性が高くとても厳しい状況になると考えています。

料理人に伝えたいこと


お伝えしたように私自身が料理人でした。奨学金を借り池袋の調理師専門学校に入り、新宿の寮で寝泊まりしながら昼は学校、夜はホテルで調理バイトして寮で寝る。
「街場のレストランはキツイぞ、辞めておけ」と言われていましたが、
料理の世界に憧れ日本で活躍する料理人になるためにフレンチの現場に飛び込みました。
想像の7倍くらいキツくて毎日泣いていました。

ミシュランが日本に上陸して、東京の下町にある個人店が調査対象になったと聞いた時は驚きました。ミシュラン1つ星を獲得し、私はセクションシェフになりました。家で一人で泣いて喜んでいました。

料理ってこんなキツイし大変なのに、なんて面白いんだ。
休みの日もずっと料理のことばかり考えていた。

この業界の素晴らしさ、技術追求の楽しさ、本物を知った時の感動みたいなあの感覚は今でも残っています。

だからこそ、その技術や才能を社会的に評価されるやり方と場所で発揮してほしいと考えてしまいます。

成長する事で料理人の新しい可能性やキャリアの幅が作れるように私達は頑張ります。




CAROT株式会社
代表取締役 嶋田 光宏


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