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水中都市

海が綺麗だ。青い海。濃い青の海。
陸から、海上へ、真っ直ぐに道路が伸びている。海上に道が続いている。

道路の真ん中には、白い破線のセンターラインが引かれている。よく車道で見るものだ。
道路の左右の端には、防音壁のような壁がある。いや、防音壁と言うには、ちょっと低い。
人の腰の高さくらいしかない。

しかし、結構丈夫そうだ。鉄か何か、堅い金属で出来ているようだ。
白に近いような薄い緑に塗られている。表面には、規則的な凹凸がある。
縦に長い山型の切れ込みが、繰り返し続くような……まさに防音壁のようだ。
これは、波を防いでいるのかな、と思った。そうだとしたら、それはそれで、少し低いのだが。

道路は、海の上で、包丁で切ったように、唐突になくなっている。
道が途切れているのは、陸から100mか200mくらいの沖だろうか?
まるで何かの発射カタパルトのようだと思った。
道は橋になっているわけでもなく、海底に石を積んで、その上に道を通しているようだが、道路があるのは海面スレスレで、まるで海の上に浮いているかのように見える。

この道路と、陸との間の海を、覗き込んでみると、透明度が高くて、非常に深いところまで、よく見える。
たかだか100mくらいの沖合いなのだが、随分深いようだ。
そして、海面の下には、沢山の建物が見えた。

それは都市と呼んでよい程の規模だった。高い建物、低い建物、複雑に絡み合っている。
人類の文明には全くないような、複雑な構造。
まるでガウディが全ての建物を設計したような、奇怪な都市。
しかもそれは、引力とか物理法則とかを無視したような、建築不可能な、いや存在不可能と言えるような、全く訳の分からない造りになっている。

その都市の上を、歩いてみた。
あまりにも複雑な構造の建物群なので、海自体は4階建の建物がすっぽり沈むくらい深いのだが、足場を選べば、上半身が海上に出るくらいのところで足が着く。

吹き抜けのように、高い建物に囲まれて、広い空間になっている場所があった。
広場のような場所だろうか。しかし、そこの海底は、あるのかないのかも、よく分からない。本当は物凄く深いのかもしれない。

少し海に潜ってみた。私はあまり泳げないから、注意しないといけないな、と思いながら。
潜ってみると、全てが青く透けた、ガラスの中にいるようだった。
青いガラスの中にある、複雑な構造の都市。

潜ったまま、広場を囲む壁のような部分に辿り着き、水中で立ってみた。水面下1mくらいのところだろうか。
海はとてもよく透き通っているが、海底は見えない。
建物の壁は、垂直にどこまでも続いている。普通であったら、足を滑らせたら、真っ逆さまという、恐ろしいところだろう。

しかし、ここは水中だ。浮力がある。私はあまり泳げないのだが、それでも、怖くはなかった。なぜなら、垂直の壁とは言いながら、とても複雑な構造の街だから、色々な形に、出っ張ったりへこんだりしているからだ。足場はどこまでも、とても沢山ある。

私が立っている壁面には、人の身長を超えるような、大きな輪が、いくつも連なっている。輪は真円でもなく、それぞれの輪も、多少不揃いだ。輪の外側、ギザギザしているものもある。

ここで一度海上に顔を出してみた。どこまでも続く海が見える。海上から見ても、美しい海だ。
しかし、そろそろ帰らないと、帰れなくなってしまうな、と思った。

ここで夢は終わり。ヘッダーの写真は、与那国島の、いわゆる「海底遺跡」。
人工物なのか、自然地形なのかは、説が分かれるところだ。
これは「最北端」どころか、「最南端」に近い海だが(ちなみに与那国島は日本の最西端)、自分が撮った写真の中で、海中の人工物というようなものは、これくらいだったので、「海底遺跡」の写真を載せた。

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