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2023寒露日記

三連休中日はちゃんとした時間に起き、冷たい水を飲み、熱い風呂に入って洗濯を終え、ビールが飲みたくなるがせめて12時まではとがまんする。昨日実家から新米と野菜を送ってもらった。雨が降る前にとスーパーへ行ってココナッツミルクと鶏肉としめじを買い足し、ここで初めてビールの栓を抜き、久しぶりにグリーンカレーをこしらえる。すでに煮込み料理が苦ではない季節になっちゃったようだ。

しかし気圧も低く、プライベートでもいろいろあって気分が優れない。こういうときは寝っ転がっていても本は読めるから、思うさまだらだらしつつもよく読めた休日になった。夜もビールをさらに3本開ける。いろいろうまくいかないものだから、空き瓶を前に自己嫌悪する余地すらない。祝日はいつものカフェへ、月曜のジェノベーゼを食べに行く。なんとなく白ワインをつける。帰ってきてまた本を読む。うとうとと昼寝をはさむ。夜は報復性夜更かしというのだろう、やたら牛や馬が出てくる動画をえんえんと眺めて夜中の三時まで。

休み明けには気圧が上昇し、気持ちも持ち直した。持ち直すというか、「なんにせよ前に進むしかない、一行でも多く書くためには」と思えるようになっていた。自分の力で速やかに立ち直るスパンが年々短くなってきたから、歳を取ることは悪くないと思える。実際に誕生日があって、歳を一つ重ねた。日付の変わる瞬間は『遠い太鼓』を読みながらワインを飲んでいた。何も優雅に過ごそうと思ったとかではなくて、『遠い太鼓』を読んでいたらとにかくキュッと冷えた白ワインが飲みたくなるのだ。新しい朝には後回しにしていた実務的な電話を何本かかけた。

土曜の予定がなくなってしまったので昼間からワインとビールを飲みまくって、これはさすがにちょっとよくないなと反省した。近所の金木犀をチェックして、それから文学フリマの宅配搬入の準備をこつこつと進める。

日曜は気を取り直し、洗濯をして布団を干して部屋の模様替えと衣替えを一気に済ませ、奇跡的に十年以上ぶりくらいに連絡がついた友人と大阪で飲んだ。お互いに変わりないことを見てとり、昔から笑い上戸の友人につられて近況を話すだけでも5分に1回は声をたてて笑った。将来の不安を抱えながら、夢もちゃんと持っていて、明日仕事嫌だとか言いながらそれでもなんとか十年以上やってきたことへの深い共感があった。今までの健闘を称え合い、良いところを褒め合った。出版社に編集として務めていること、趣味で書き続けていることを伝えると喜んでくれて嬉しかった(高校生のころからの夢を叶えているように見えたのだと思う)。読んでくれるかなと思って『詩集 水の反映』を渡したら、最初の2篇を読んだだけで気に入ってくれて嬉しかった(仕事に疲れ、パンが好きな自分にぴったりだという)。お互いにコーヒー好きということもわかり、二軒目はカフェで落ち着いて話した。また遊ぼうと約束して気分良く別れる。

友人にミュージシャンが多く、気に入ったらライブとかも行こうよと話しながら見せていたYouTubeで友人らがまさにライブ配信中だったので、乗り換えの駅で降りて夕方カフェに足を伸ばした。ライブは終わってしまっていたが、ほとんどわたしのために入れてくれている焼酎をほとんどわたしだけが頼んでいるデカサイズで2杯つくってもらった。月末のイベントのために物販を回収させてもらい、機嫌よく帰宅。

今を楽しく生きること、同じテーブルで美味しいご飯を食べ、酒を飲んで笑い合い、自分がやりたいことの話がそれぞれにできて、わざわざ相手を不快にさせるような話題を選ばないこと…。今までそれが当たり前の人間関係でやってきたし、それを再確認できてほっとした。それが恋人とは簡単にはいかない。久しぶりに喫茶店で待ち合わせ、いろんな話をしたけれど、僕が(チョリソーをハイネケンで流し込みながら)「君が憂いている文化の衰退というのは強者のための文化であり文明じゃないのか」と指摘すれば相手は(サンドイッチと付け合せのポテチを食べコーヒーをすすりながら)「もちろん強者・弱者を含めた多様性のことを前提にしているよ。弱者のためだけのコミュニティを作ったところで新たな強者・弱者が生まれるだけだから」となどと、ああいえばこういう。僕は口がうまい方ではないし、恋人としたい話題ではないんだけどな~と呆れつつ。すっかり寒い夜の中、恋人が原付きを押しながら「〇〇(某商業施設)の屋上って行ったことある?」と言う。ホンダのGIORNOかな、ペールブルーの色が可愛い。ヘルメットと青いボーダーのシャツは今日新品をおろしたと言っていて可愛かった。「ない。屋上なんて入れるの?」「入れる。京都市が一望できる。今度行こう」とのこと。それはちょっと楽しみ。

少し体調を崩し、メルマガの配信が遅れているが、ぼちぼちでいいやと開き直っている。急ぎの仕事もないし有給休暇も使い切れないからと思い切って休んだ。たっぷり寝て(どれだけ寝ても眠いのだ)、いつものカフェでパスタを食べ、バスに乗って本を読みながら金木犀香る一乗寺へ。お年寄りと学生くらいしか利用のない時間帯、生々しい営業係数の掲示をぼんやりと眺めながら、黄金の日差しが秋だった。

恵文社一乗寺店で写真展を見て、つばめでコーヒーとおやつを食べ、また本を読んだ。夕暮れのなか叡電に揺られ、仕事や勉強を終えてどこかに帰ろうとしている人波に交じりながら、「ああこういう日が必要だったんだな」と思った。やわらかな風が街中に甘い匂いを運んでいる。

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京都での気ままな暮らしを綴っています。日記ですが、毎日書けないので二十四節気ごと、つまり約15日ごとにつけています。それで「二十四節記」と…

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