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逆イールドとは

米国経済がソフトランディングするのかハードランディングするのか
インフレ率がピークアウトし、パウエル議長は2月1日のFOMC後の会見で満足そうに「ディスインフレが始まった」と発言した
FRBの大幅利上げとサプライチェーンの回復により、猛威を振るった物価上昇は一旦は落ち着きを取り戻しつつある
市場が気にするのは高金利政策によって米国経済が景気後退する可能性
景気後退は避けられないとしても、軽微な落ち込みか、大きな落ち込みか、市場は測りかねている
一つの見方として「逆イールド」という指標があり、「景気後退のシグナル」と言われている

逆イールドは長短金利逆転とも言われている
文字通り長期金利と短期金利が逆転している現象ですが、どういうこか
通常金利は短期より長期の方が高くなりやすい
資金を借入する時をイメージしてみると、明日返済予定の100万円と10年後返済予定の100万円とでは後者の方が金利が高くなりやすい
後者は長期で資金を借りるため、貸倒れリスクが大きく、そのリスクを軽減するために金利が高くなる
しかし、ごく稀に、高いはずの長期の金利と低いはずの短期の金利が逆になってしまうことがある
これを「逆イールド」と呼んでいる

逆イールドは景気後退前に発生しやすい
通常、景気が良いときはの金利は、中央銀行が景気過熱を防ぐために利上げを行うため、上昇しやすい
しかし、いざ景気が悪くなってくると今度は中央銀行が景気刺激のために利下げに動く可能性があるため、金利は低下しやすい
下図はFRBの政策金利であるFFレートの長期推移となり、グレーの網掛けは米国政府が認定する景気後退局面となっている

政策金利(FFレート)推移

図を見ると認定された景気後退局面に合わせて利下げが行われ、その後利上げが行われている
実際は認定された景気後退局面に入る前には企業業績の悪化や失業率の上昇という形で景気後退は始まっており、認定された期間には遅効性がある
つまり、景気後退に入りそうな状況になると株価は下落し、国債の利回りは先々の金利低下を見越して低下しやすくなる
その後に実際に景気後退し、政策金利は引き下げられる
というのが基本的なサイクルとなっている

では、逆イールドはどういう状況で発生するのか
下図は米国の2年債と10年債の利回りの推移となっている

2年債と10年債の利回り推移

2年債利回りの方が10年債利回りを上回っている時期があり、現在もそのようになっている
2年という比較的短期の金利が10年という長期の金利を上回っているので、この状態が「逆イールド」となる
下図は米国の2年債と10年債の利回りの差の推移となっている

2年債と10年債の利回りの差推移

黒線の0の値を下回った水準が逆イールドの発生しているタイミングとなっている
逆イールドが景気後退のシグナルと言われる所以は、逆イールドが発生した後に景気後退局面が訪れていることにある
上記グラフの灰色の部分が米国政府の認定した景気後退局面となっており、逆イールドが発生した半年から1年後に景気後退入りしているのがわかる

現在の逆イールドは約40年ぶりという大幅な逆転現象となっており、インフレ抑制のための急速な利上げが利回り差を拡大させている

株価との関連性は以下の通り

青線がNYダウの値動きとなっており、オレンジ線は10年債と2年債の利回り差となっている
同様に灰色部分が景気後退局面となっている
左の灰色部分はITバブル崩壊時、真ん中の灰色部分はリーマンショック、右の細い灰色部分はコロナショックとなっている
この資料を見る限りでは今後に景気後退局面がくる可能性があると言え、株価が大きく下落する可能性を指している

また、景気後退局面に入る前に逆イールドが解消している点にも共通項がある
逆イールドが解消する局面は、一例としては利上げサイクルが終了するタイミングであると言える
金利の先高観がなくなり、短期金利が低下することにより逆イールドが解消するものと考えられる

現在の米国の経済状態から考えると、インフレ率の低下が鮮明となり、FRBが利上げサイクルを終了しても2%に向けて安定的に低下する局面が逆イールド解消のタイミングとなりやすいと思われる
最もインフレ率の低下が鮮明となるには、財価格の低下に加え、雇用コストの低下が必要であり、失業率や平均時給などの悪化が必要と思われる
経済状況が底堅く推移するうちは、そのタイミングが後ずれする可能性がある
インフレ率を力づくで下げようとFRBが過度に利上げを断行した場合は、ある時点で急速に経済が悪化する危険性もある

逆イールドは発生後に景気後退というパターンがあるものの、実際の景気後退のタイミングを正確にとらえるのは難しく、参考程度の情報として扱うのが適している
尚、当記事・当アカウントは今後の株価動向の予想を目的としておりませんので、投資は自己責任でお願いします

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