見出し画像

ドサクサ日記 6/19-6/25 2023

19日。
買い出しなどを行い、グラストンバリーの街を少しだけ観光。丘の上の大きな塔からの景色が美しかった。遠くにはフェスの会場が見え、巨大なはずのピラミットステージが小さく見えた。街中は魔女でやらせてもろてます的な、魔女推しの店が多くて不思議な感じだった。道ゆく道は樹木と牧草、そして牛、みたいな風景ばかりだけれど、ときおり住居がギュッと集まった街があって、建物が古くていい。

20日。
スーパーでキャンプ用の食材を買い込んでから、とあるPUBのあまり美味しくないご飯を食べ、車で会場へ。駐車場からテントエリアまで徒歩で30分という前情報に精神が縮みあがっていたけれど、案外に近くて嬉しかった。が、追加の荷物を運ぶ再入場の際にチケットもぎりの係の人に止められてしまった。俺のチケットを確認したスタッフいわく、「チケットとパスのプライオリティに差があるのがおかしいもんで、入れんよー」とのことだった。そんなわけはないので、プレスエリアの重鎮に連絡を取ってほしいと頼んだが、「忙しいもんで、電話が繋がらんやー」とのことだった。他のスタッフは「大丈夫だらー、通してええらー」と言っていたが、その言葉は届かず、お陰で土砂降りのなか、チケットとパスの関係の確認が終わるまで待たされた。ずぶ濡れでテントまで帰ったところ、突然の虹。美しい。

21日。
まだ水曜日だと言うのに観客がわらわらと集まり始めていて驚いた。無数にある小さなステージのいくつかでは演奏が始まった。夕刻からはグラストンバリーフェスの会場が一望できる丘の上に登った。夏至の太陽がゆっくり沈み、周囲の人々や遠くのティピ、観客たちのテントや巨大なステージがやけに立体的に見えた。フェスというよりは街のようなサイズだ。様々なコミュニティが根を張って複雑に絡み、そうしたコミュニティがガイドブックに大きくプリントされないステージやワークショップ、そこら中のオブジェクトやアートワークを作っている。それがフェスの中心部を作り上げ、観客たちのテントがそれを取り囲むように設営されている。その全景に感動した。丘から自分が泊まっているキャンプエリアへの道は人でごった返していた。一時間かけてテントに戻って、夜食も食べずに倒れるように眠った。

22日。
木曜日。会場はほぼ満員ではないかと思うくらいの人数になった。きっとまだ増えるんだと思う。会場で鍼灸師と知り合って、四十肩の施術を受けた。本当に幸運だと思う。かと思ったら、くんくんに酔っ払った友人のカメラマンが俺のテントの上に転んでしまって、何本かの支柱が折れてしまった。笑う以外になかった。仕方がないので、この日からは友人たちのテントに居候させてもらうことになった。

23日。
ようやく金曜日。あと3泊もテント生活が残っているなんて信じられない。会場は「ほぼ満員」と思ったことを後悔するくらいの人の出で、メインステージに至ってはまったく前に行けない。半分くらいのところまできたが、前に5万人。シークレットで出てきたFoo Fightersは米粒どころかまったく見えず、しかし会場の一体感はさすがのひとことで、なんとも言えない体験だった。逆説的に、あんなに近くで見られるフジロックって素敵、と思ったりもした。観客たちは日本に比べてどうこうというわけではなく、イギリス人らしいツボで盛り上がっている。それぞれが音楽というよりは自分の人生を楽しんでいる様子で、それがとてもいいと思った。音楽が良いとか悪いとか、音響がどうだとか、そういうのはすべて個人的な体験でもある。批評家でないなら、どうあれ「楽しい」と思うことは才能だと思う。

24日。
爆裂な人の出に驚く。至る所が人だらけだけれど、会場の隅まで歩く。巨大なオブジェが設置されたDJブース、素朴なテントのステージ、そこらでゲリラ的に始まる演奏とパフォーマンス、詩人やコメディアンのステージなど、本当にいろいろなステージがあって驚く。食事も堪能。店員と客が言い争う熱い店の本格的なケイジャンチキンが美味しかった。マニックスは最高だったが、歩きすぎて疲れた。

25日。
少し人が減ったかなとか思ったら、エルトン・ジョンに向けて人が溢れ、エルトン・ジョンの演奏中は会場がガラガラになった。プレスが入れるホスピタリティエリアの片隅が裕福そうな人たちでいっぱいだった。楽しいフェスとはいえ、格差について考えないわけにはいかない。ロシアのことが前日から気になっていたが、フェスの開場では皆、どこ吹く風といった様子だった。相変わらず、凍りついたように肩が痛い。足もくたくたになった。ただ、10代から憧れたグラストンバリーフェスの精神みたいなものには、少しだけ触れられたように思う。SMASHの日高さんがFUJI ROCK FES.に持ち込んだこと、やりたかったこと、くっきりと言語化はできないけれど、音楽やメロディーやビートを掴むように体験できたのではないかと思う。あれから随分経ったけれど、ここに来れて本当に良かったと思う。

この記事が参加している募集

フェス記録