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ドサクサ日記 5/29-6/4

29日。
石川幹子さんに神宮外苑前の開発の問題点を聞いた。「どういう方法だと多くの人が納得する都市計画になるのか」みたいなことを考えていたのだが、石川さんはその300歩前で平然と憤っている様子で驚いた。「環境問題が叫ばれるなか、こんな愚策を実行するのは現代の都市では東京だけだ」とのことだった。伐採を2本に抑える対案も仕方なく出したが、開発そのものに問題があるとも。市民が意見を表明しないと、3000本(と言われている)木がサクッと伐採される。これらは100年前に後世のことを思って日本中から寄付された樹木だという。そうした文脈を排除してしまえば単なる「木」で、「新しく植えちゃえばいいじゃん!」という開発業者の言葉もうっかり受け入れそうになるが、こういう時代に文脈を剥ぎ取って考えるのは知的な作業だとは思えない。もっと素敵な開発案があるに違いないと思う。

30日。
ゴミゼロの日に徳島県の上勝町へ。上勝町はゼロウェイストを掲げた町で、町民がゴミを45種類に分別している。先進的過ぎて真似するのは不可能と思ってしまうが、問題を自分ごととしてのローカルにまで砕くと、真似できることはあると思う。社会問題の難しさはさておいて、出会った人たちが朗らかで楽しそうだったことが印象的だった。そういうのは一面であって全体ではないので、この町に暮らすひとたちが見せてくれた朗らかさのなかにも、それぞれの生活上の陰鬱さがあると思う。もちろん、そういう負の側面は俺も抱えていて、誰しもが似たようなところがあるだろう。そういう陰鬱さのなかで朗らかさを発露するのは、それだけで尊いことだと思う。藤原辰史さんとの対話も、自分の演奏も、とても楽しかった。終演後にいただいた料理と上勝ビールがとても美味しかった。ヘベレケになった。

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31日。
HOTEL WHYで目覚める。カーテンを開けると森の深緑が目の前に広がる。雨がシトシト降っているのも良い。コーヒーより晩茶が合う環境音と風景。宿泊で出たゴミの分別を体験してから、上勝ビールの工場見学。出来立てのビールを飲ませてもらって感激した。その後は町の仙人と呼ばれる中村さんの自宅を訪ねる。ミシマ社のY君がボットン便所に靴を落として困っていた。どうして便所で靴を脱いだのかというところが謎だが、運転手である三島さんがビールを一切試飲できないにも関わらず、Y君はガッツリとビールの飲み比べを楽しみ(こういう勾配のなさがミシマ社の魅力でもある)、午後からは営業に向かうとのことだったので、全体的な彼らしさの発露としての靴の落下であったのだろうと思う。三島さんは男性社員のリクルートに関して、こうした魅力的な人材を採用する癖があって面白い。

6月1日
一日中地下のスタジオで作業に没頭していると、当然のことだけれど、日記に書くような面白い出来事に出会わない。地味にマイクの調子の悪さを実感して、歌上手くないなぁとか思いながら自分の歌唱をディレクションして、右肩にお灸を据えたり剥がして捨てたりしながら、気がつくと夕方で、思ったより日が長くなったなぁとか思いながら、ビールを買って家に帰り、いつのまにか寝てしまった。

2日。
大雨で足止めを食らう。予定したことが上手く実行できないと、実際には身体的な疲労を感じるような行為がなくても、精神の側から雨水が染み込むようにじっとりと疲れてしまう。雨には特別な意志がなく、単純な偶然として、適当なところに降り注ぐ。何も今日に限って、とか、こんな場所に降らんでも、みたいなのはこちらの都合であって、そんなことを考えているのは人間だけで、故に俺は疲れた。

3日。
大雨の影響で新幹線がてんやわんや。しかし、こういう天災以外の状況下ではてんやもわんやも出てくることなく、ダイヤをきっちり守って運転されている日本の交通機関はどう考えてもすごい。ドイツに行ったとき、平然と違う列車が自分が乗る列車のホームに入ってきた。時間もぴったりだったので「間違いない」と乗り込んだその列車は、まったく違う方向に走り出して肝を冷やしたものだった。

4日。
あれやこれやと街を巡り、ナイスな休日を過ごすべく努力したが、いつの間にか閉店してしまっていたり、予約がないと入ることすらできないという込み入った事情に遭遇して、へとへとになった。知らない公園の芝生で寝っ転がり、駅のベンチでパンを齧る。みんなが休日を合わせるから諸々大変なわけで、輪番休日、とかでいいのではないかと思う。でも、みんなで休みが揃っているのも悪くないんだよな。