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おくりもののうた 1曲目 「おくりもののうた」

「おくりもののうた」1曲目はミュージシャン、作曲家として活動する僕自身のことを曲にしました。
他人の評価を気にして足りないものを埋めてきた自分に、得意なことで人を笑わせればいいんだよと背中を押す曲を贈ることをこの企画のスタートにしました。

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エピソード
小学2年生の時に近所のローソンで万引きをした。「Mr.マリックの超魔術」という本を見つけて子ども心に超能力が使いたくなったのだと思う。

無理やりズボンの中に突っ込んで店を出たところで店長のおばちゃんに捕まった。
けっこう大きな本だったからバレバレだったのだろう。

「家の電話番号を教えて」と言われたけれどおかんに怒られるのが嫌で「分からない」と答えた。結局おばちゃんが一緒に家に来ることになり、意味のない嘘は憂鬱を引き延ばすだけになった。

おかんがおばちゃんにひとしきり謝り終わった後、僕はバシバシに叩かれ泣いた。おかんも泣いていた。

「あんたなんかうちの子じゃない!出て行け!」

おかんとばあちゃん3人暮らしとはいえ母子家庭の僕には「親」はおかんだけだった。ただただ悲しかったからこその言葉だと今では分かるけれど、子どもの僕にその言葉は抜けないトゲのように深く突き刺さった。

マンションの廊下の隅っこでうずくまってまた泣いた。鍵っ子だったので一応鍵は持って出たかもしれない。でも、自分から帰る勇気は持てなかった。

僕は人に見捨てられることが怖くなりひとりぼっちになるのが嫌で人の目を気にして生きるようになった。できることよりも、できないことを埋めないと嫌われると思うようになった。完璧主義になったのはそれがきっかけかもしれない。
「自分のことばっかり」
嫌われないようにマシにならなきゃと言われたことを何日も考えたり、自己啓発本を読み漁ったりしているのにそう言われてばかりだった。

「人の気持ちを考えろ」
2時間ぐらい考えて送ったメールの返信がそんな内容だったことだって何度もあった。これ以上どうやって人のことを考えればいいんだと何もかもが嫌になった夜が数えきれないほどあった。

でも、確かに僕は自分のことばかりだった。

おかんのことを大事にしたいと言いながら全然実家にも帰らなかったし、病気になってからも仕送りもしなかった。ご飯を作ってくれた彼女にありがとうも言わなくてそれどころか不満ばかり言ったりして「私は家政婦じゃないで!」とドラマみたいなセリフを言われたりもした。

自分しか守るものがいなかった。よく言えば自分を守ることで精一杯だった。

小学2年生のあの日から「何もしないでも愛されること」を何処かの誰かに期待していたのだ。そんな自分に気づいていた。冷たいやつだなとどこかで思っていた。
自分のことしか考えていない自分を知られるのが怖くて夢を言い訳にした。

ライブやツイッターで周りを大事にしてそうないいこと風なことを語ったり、
活動で時間もお金もないからと友達の誘いを無下に断ったりもしていた。

達成できもしない目標を立ててはまた熱く語って、
しんどくなったらけじめもつけずにヌルッとやめた。

見捨てられたくなくて自分を大きく偽って、嫌われたくなくてごまかしてヘラヘラした。僕は人のことを考えていたのではなく自分のことを考えていた。
高校生のころマクドナルドで初めてバイトをした。
何かができるようになる度に名札にシールが増えていくシステムなのに
僕が辞めるまでにもらったシールは3枚ほどだった。

時給は上がらなくてもいい、後輩より立場が下でもいい、だからとにかく責任のない立場でいたい。問題が起きたら全部社員に任せて済ませたい。

マクド時代から29歳で作曲家を始めるまでずっとそういう考えだった。
怒られると自分の存在を否定されるようで怖かったのだ。

だけど作曲の仕事をさせてもらえるようになって180°変わった。

自分が作ったものの評価が全てそのまま自分に返ってくる。
そういう環境になっても音楽でできることがあるならという気持ちが
背負う意思を持たせてくれたのだ。

そうやって取り組んでいたら信用して依頼をくれる人が現れた。
曲を聴いたお客さんが楽しんでくれた。
責任を持ってやった分は喜びも全部自分に返ってくるのだと教わることができた。

そして責任を持つと決めると人のせいにしなくなった。「なんで僕を受け入れてくれないんだ」という勝手な期待が「自分で自分を受け入れよう」と信じる気持ちに変わった。

不思議なもので今まで自分勝手な僕のことを支えてくれていた人の存在や、とても失礼なことをしていたなあという場面がいくつも浮かぶようになった。卑屈さが消えると感謝が見えてきて、そうすると守るべきものが自分以外に広がっていった。

嫌われないようにできないことを埋めるより、できることを大きくして喜んでもらいたい。満たされ方が変化していくのを感じた。

今でも歩けばこの道は穴ぼこだらけに見える。それでも、僕は僕の背中を押しながらできることを選びとっていきたい。嫌われないようにいきなくても得意なことで人を笑わせればいいんだよと僕自身が笑っていたい。

「おくりもののうた」

人に嫌われない そんな超魔術が使えても
きっと僕を好きにはなれないんだ

心を万引きして ズボンの中に隠しても
ズルして手に入れたものじゃ ふと気まずくなるんだろう

居場所から追い出されて 廊下の隅でうずくまる
ただいまとドアを開けれないまま 鍵っ子は大人になった

必要とされたいなら このままじゃいけないから
凸凹は全部均さなきゃ くるしい
見捨てられるのが怖いだけ 口数が増えて穴ぼこになっていく
僕のいいところってなんだっけ

何もしないで愛されたい 小学2年生の期待はずれ
人の気持ち考えなきゃって 自分の気持ちのことばかり

カセイフジャナイとドラマみたいな台詞を言われてしまうような
情けない姿を隠すため 言い訳に夢を語る

必要とされないのは 本当を見せないから
意味のない嘘はついただけ さびしい
見捨てられるのを避けるだけ 信頼が減って穴になっていく
嫌なところばっか気になって

勇気の数だけ名札に貼ってもらえたシール
まだたった3枚しかないけれど

必要としてもらえた このままでいさせてくれた
だからもっと がんばろうと思えた
そんないくつかの瞬間が 卑屈さを取りはらって
ありがとうの意味を見せてくれた

必要とされたいなら このままでいていいんだ
凸凹も全部認めて 笑おう
見捨てられるのは怖いまま でも 好きだと言ってもらえる部分で
あのドアの鍵を開けよう

僕のいいところってここにあるんだね


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