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答えの無い問題:複雑系から考える

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前回は明確な答えの有無をもとに世の中の問題を二つのタイプに分けて考えてみた。今回は複雑系の5つの特徴について考えてみることで、答えの無い問題の多くは複雑系っぽいことを示していきたい。また複雑系についての認識を深めることは、システム思考の肝でもあると私は考えている。

相互依存:簡単に線引きできず、横断的

複雑系の最も重要な特徴としてまず相互依存関係がある。色々な要素が互いにフィードバックし合っている。ラグビーやサッカーのフィールドプレーヤーがまさに複雑系システムの典型例だといえる。試合の流れが悪い時、それは特定のプレーヤーの責任だろうか?ハイレベルのチームにおいては、そのような原因単純化はできず、多くは相手チームも含めたプレーヤー同士の関係性に起因しているだろう。これに対して野球はチームスポーツであるが、プレーヤー同士の相互依存という視点からは、前者よりも複雑度が低いと言えそうだ。

文脈依存:答えが当てはまらない

ヨーロッパで上手くいっている政策は、日本で上手くいくだろうか?島根の出雲市で上手くいっているまちづくり施策が、他の地方都市でも当てはまるだろうか?私が習慣化できた運動・食事方法はあなたにとってもベストであろうか?答えは当然否(もしくは分からない)であろう。一見似ているシステムを見てみても、それぞれ固有、唯一無二のストーリーを持っている。私にとってのベストプラクティスはあなたにとってのベストプラクティスとは限らないなのだ。

動的:常に変化し続け、予測不可

複雑なシステムは常に変化し続けており、またその変化を正確に予測することは不可能である。互いに重力相互作用する僅か三つの質点の運動がどのようなものになるかさえ我々には予測することができない(三体問題)。サッカー・ラグビーにおいてもプレーヤーがどのように動くか予測することは多分不可能であろう。またどんなに優れた監督であろうとその動きを完全にコントロールすることはできない。自分の部下、子供、お客さんなど我々の周りは動的で予測不可能なものばかりである。

とはいっても複雑なシステムにもパターンは存在する。このパターンに注目することが大事となる。

多様性:レジリエンスの源

複雑系の世界は多様性で満ち溢れている。様々な要素が共存しており、画一化できない。森では色々な生物が、町では色々なアイデアが互いに競争・共存しあっている。多様性は複雑系にとって必然であると同時に、新奇性とレジリエンスの源でもある。効率を追い求め、多様性という非効率を犠牲にしたシステムは変化に驚くほど脆弱となる。

創発:自己組織化

東日本大地震後、様々な支援活動、NPO、ボランティア、新たな生き方・働き方を体現した社会的企業、ネットワークなどが次々と出現した。これらは中央政府による号令のようなトップダウンではなく(復興のための補助金は一役かっているかもしれないが)、ボトムアップ的にそれぞれの個人・コミュニティが自己組織化したものである。複雑系システムはこのように重大なイベントをきっかけとして、新しい性質を創発する力が備わっている。

まとめ

複雑性の特徴をまとめます:

  • 相互依存(簡単に線引きできず、横断的)

  • 文脈依存(答えが当てはまらない)

  • 動的(全てを制御できず、予測不可)

  • 多様性(レジリエンスの源。様々な意見が共存。画一化不可)

  • 創発(自己組織化。自然と新しい性質が生まれてくる)

多様性、創発性は復興や創造力の源となるといわれてる。つまり答えの無い問題、複雑なシステムに取り組む時は、これらの特徴をembraceし、活かしていくアプローチを取ることを考えていく必要があるであろう。世の中ではその反対の方法が跋扈していそうだが。。。

Links​

  • 今回の記事は私が受けたDr Jean Boultonの講義をもとに作成しました。より深く学びたい方は博士の著作 "Embracing Complexity"をご参考に。


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