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街にあふれるフランス語

母によると、私が最初に読んだ文字は「たばこ」だそうである。
何故たばこだったのかよくわからないが、あの時代は今よりも「たばこ」という文字を見る機会が多かったかもしれない。私が子供の頃、両親とも喫煙者だった。当時は「たばこ」という看板を掲げる小さな店や、酒屋で買っていたように記憶している。

私は保育園にも幼稚園にも行っていない。その年齢の頃は家で過ごしていたのだと思う。何をして1日過ごしていたのか記憶はないが、両親は本をたくさん買ってくれた。そのおかげか、小学校に上がる前から少しは漢字も読めていたと思う。


英語はどうだっただろう。中学校までに多少の単語は知っており、中1の教科書程度は苦労しなかったが、養護学校の英語の授業では洋楽の歌詞は読めなかった。
大学の時に取ったドイツ語は今どれだけ覚えているかすら怪しい。ただ、名詞の最初の文字は大文字と決まっているから、品詞の区別はしやすく、思い出そうとすれば多少読めるかもしれない。

日本語や英語と比較して、またドイツ語と比較しても、大人になって自ら意思をもって学び始めたスペイン語とフランス語は、スキルが上がっていくのがはっきり自覚できる。
特にフランス語は、気づけば街中で見かけるフランス語の意味がわかるようになった。


眺めてみると街にはフランス語があふれている。
母のエコバッグ、読んでみるほとんど意味のない言葉が書かれている。レストランや外資系コスメの商品名、店名、壁紙、バスや電車の乗客が持っているバッグや小物、様々なところにフランス語が書かれている。そのうちのいくつかは、私がかつてそうだったように、文字をお洒落なイラストの一部とみなしている。
日本人が、外国人の日本語タトゥーを見て滑稽だと思うように、また意味の分からない日本語Tシャツを笑うように、滑稽なフランス語が日本のあちこちにあるのだ。それはもちろんフランス語に限らず、英語も同様である。


幼い私が、「たばこ」という文字を読んだとき、その字面をお洒落なイラストとして見たなどということはない。また、「たばこ」の本当の理解してたとも言い難い。単純に





という文字を読んでみたに過ぎないのだろうと思う。
そして幼児の口から出る「たばこ」という音声の不釣り合いさが、大人にとって微笑ましい光景であったことも、当時の私は知らなかったはずだ。

文字が読めることと、その意味がわかることは違う。
多少なりともフランス語の文字が読め、意味がわかる私は、これから街中にある更にたくさんのフランス語と出会うだろう。そして、そのフランス語を書いた人が何を言わんとしているかにも気づくはずだ。
文字がわかると面白い。意味がわかるともっと面白い。


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