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心に美術品を

皇居三の丸尚蔵館で開催されている開館記念展「皇室のみやびー受け継ぐ美ー」を見に行ってきた。

この展覧会は会期が長く、一定の期間で展示内容が変わる。私が見たのは「近世の御所を飾った品々」をテーマに、平安時代から江戸時代に渡る屏風・楽器・日用品・書き物など、国宝も含め様々な品だった。ほとんどが撮影可であり、大喜びで撮影してきたが、結局図録を買った方が早いということになり予定外に購入してしまった。
皇居内に入るなんていうことも滅多にないので、建築物や皇宮警察に思わずときめいてしまい、美術品の観覧と併せて2時間程をゆったりと過ごした。
その後、銀座に移動し、遅めのランチとショッピングを楽しみ、充実した1日となった。

さて、その道中での出来事。
朝、最寄り駅でスロープの手配をお願いようとした時、駅員室には先客がいた。ヘルプマークをぶらさげた女性で、顔つきから知的障害のある方だとわかる。その彼女が用事を済ませたあと、私たちに対して何か言った。それが「いってらっしゃい!」だということはわかるまで、1~2秒を要したと思う。私が「行ってきます!」と返事をすると、彼女はもう一度「いってらっしゃい!楽しんできてくださいね!」と朗らかに言った。続いて「私は仕事に行ってきます!」と言うので、「いってらっしゃい!頑張ってね!」と言言い、お互い駅員室の反対方向から出た。
大変失礼かとは思うが可愛らしいなと思った。きっと彼女は周囲の人から大切にされているのだろう。

美術品の観覧を終えて丸の内線で銀座に到着後、駅員室に三越への出口を尋ねた。私の代わりにヘルパーさんが聞きに行ってくれたが、戻ってきた彼女は少し不満そうな顔で「あちらだそうです」と言った。どうやら駅員があまり親切ではなかったようだ。言われた方向の改札でもう一度尋ねると、「いや、あちらだ」と言う。私たちは最初に尋ねた駅員室に戻された。
総合すると、銀座駅の丸の内線にはエレベーターがなく、あるのは三越からだいぶ離れた数寄屋橋交差点付近で、そこから地上を通って行って欲しいというようなことを、かなり遠回りして言っているようだった。構内にはエレベーターの代わりに階段昇降機があるが、その為に人員を2名確保せねばならず、対応が面倒なのだろうという想像に至った。
以前なら揉めたくない、迷惑そうな態度をされたくない一心で、目的地から遠いエレベーターを選択していたかもしれない。しかし、今はそういう時代ではない。設備がないなら人力で(機械はあるのだから)対応していただく権利を私たちは遂行した。

ここで、知的障害のある彼女と、何の障害もないと思われる駅員の態度を単純に比較することはできないかもしれない。挨拶的なものと、サービスの比較も難しいかもしれない。
私は彼女の中に、大切にされた美術品のようなものがあるのではないかと思った。人から愛され、大切にされてきた人は、自らの心に輝くような光の玉を持っているような気がするのだ。
障害者に対する「面倒くさい」という態度をあからさまに見せる人の存在は今に始まったことではないが、そういう人たちの心には何があるのだろう。人から雑に扱われ、ボロボロになって輝きを失った玉だろうか。
人からされた無碍な扱いを別の誰かに向けぬよう、どんな時も私たちは心に美術品を持たなければならない。

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