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マーケター・事業家が読むべき書籍【3選】

どうも、バッタです。

今回は僕がマーケターあるいは事業家として仕事をする上で非常に影響を与えられた本について取り上げたいと思います。

僕自身、本が好きで、大学時代には書評のメルマガを書いていたこともあり、様々なジャンルの本を読んできました。

社会人1年目には、ビジネスマンとして最速で成長したいと思い、仕事後、毎日夜の12時から3時までロイヤルホストで読書漬けの毎日を送っていました。(その結果新卒入社後最初の半年で4回の寝坊をかまして労務責任者(男)から壁ドンをされるというイベントが発生しました。本当にすみませんでした。)

大学時代を含め、おそらくこの10年で1000冊以上は本を読んでいると思うので、その中から選りすぐりのものを紹介していきます!
ただ、いわゆるビジネス書、マーケティング本を紹介しても、マーケターのみなさんであればすでに読んだことがあったり、大体の内容を知っていたりすると思うので、あえてマーケ系やザ・ビジネス系は外して選びました

少し気楽に、単純な知的好奇心を満たす意味も含めて興味を持ってもらえる本があれば幸いです。

それでは紹介させていただきます。

①銃・病原菌・鉄

最初の本は、ジャレド・ダイヤモンドさん著作の人類史の本です。
おそらく、人類史という意味では、「サピエンス全史」の方が日本では有名であり、読んだことや聞いたことがある人が多いのではないかと思います。

内容としては、サピエンス全史が「なぜ人類が世界を支配することになったか?」という人類vsその他生物の支配関係に関する問いへの回答であるのに対して、銃・病原菌・鉄は「なぜ近現代において西欧が世界史上の覇者になったか?」という人類間での支配被支配関係の因果関係を解き明かした本になっています。

ただ、銃・病原菌・鉄はサピエンス全史が刊行される20年近く前に出版されたものであり、考え方の斬新さという意味では前者が突出していたような気がします。(サピエンス全史もとっても面白いですが)

僕は大学2年生の時にこの本を読み、衝撃を受け、同時に地理的な環境が人類に与える影響、そこからマクロ的な経済が連動していくダイナミズムをより深く研究したくなり、人口学のゼミに入るほどでした。
(人口学や食糧問題、地政学についてはたくさん本を読み自分で勉強しましたが、ゼミでは講義中にWBC日本代表の最強メンバーをゼミ同期と考えて誰が最強の布陣を組めたか競うようなクズ大学生してました。教授、ごめんなさい。)

人口学や地理学、人類学について多少勉強した後でも、やはり銃・病原菌・鉄の考察、示唆はずば抜けたもので、何回読んでも得るものが多い本でした。

この本の何が面白いか、また、マーケティングや事業という観点で何が参考になるかというと、複雑に絡み合った壮大で難解なテーマに対して、構造的な説明を試みている点にあります。

僕自身は凡庸な頭しか持たないので、どれだけ世界史が好きで、大学になってからもいろいろ世界史について勉強をしていても、「西欧が近現代世界の覇権を握った」ことがたまたまというか、覇権を握ったのがたまたまユーラシア大陸の西端にある白人たちの地域だったと考えていましたし、それが違う世界線であれば中国だったかもしれないし、アフリカだったかもしれないし、ひょっとしたら日本だったかもしれないくらいに思っていました。

おそらく、高校や大学で世界史を学んだ人も、なんでアジアじゃなくてアフリカでもなくて西欧が覇権を握ったのか?について論理的な説明を持っていることは少ないのではないかと思いますし、そもそもそれを試みようとしたこともないと思います。

ジャレド・ダイヤモンドさんは、この誰もが歴史の偶然性として片づけてしまっていた問題にメスを入れ、それが論理的に説明できる事象であることを証明しました。

つまり、彼の考えによれば、人類の歴史を何回やっても、やはり西欧がどこかで覇権を握り、世界を牛耳るようにできていたということです。
大航海時代にアメリカ大陸を見つけたのがコロンブスだったことや、ナポレオンという英雄がフランス生まれたことなどはもちろん偶然でしょう。

コロンブスが乗った船が難破してた可能性も全然あったでしょうし、ナポレオンが馬から落ちて早くに亡くなっているような世界線もあったかもしれません。

しかし、もっと大きな流れとして、ユーラシア大陸という横に長い大陸の西の果てに住み着いた人類が他地域の人類より優位性を持ち、他の地域を圧倒するという構図はおそらく何回やっても変わらないのです。
単に研究結果として素晴らしいだけでなく、全人類の当たり前を疑い、新しい仮説を1つ1つを解きほぐそうとする知的探求心がすごすぎると思います。

一方で、他の地域を圧倒する力を持った国や地域がどのようにその他の地域を扱うか?はその文化圏の考え方に依存するので、自然の摂理の外の話しのように思います。

それが西欧圏の考え方により進んでしまったのは、個人的には世界にとって不幸なことだったように思いますが、それが自然科学とは違った「人間」という不純物を含んだ歴史という学問なのだと思います。

理系と文系の違いは、理系(というか自然科学)が再現性のある学問、文系が再現性の少ない学問と僕は大別していましたが、実際にはどちらにも再現性は存在し、理系はそれが絶対不変の自然の法則に従っているのに対して、文系の学問は「人間」という不確実性を含む要素が介在してくる中で大枠の再現性・原理原則に則って思考されるべきものだと今は思っています。

どちらも根源としては、この世界がどうやって成り立っているか?という起源への回帰と、この世界はどうなっていくのか?という未来への思索であり、因果関係と原理原則を用いて解き明かそうとする取り組みなのだと理解するようになりました。

とまぁこの本が好きすぎて、この本から受けた影響が多大すぎてどんどん話しがズレていってしまっていますのでちょっと戻しますが、とにかく「考える」ということについてこの本が与えてくれる示唆は非常に深いように思います。

マーケティング活動はどんどんデジタルでデータが取れるようになってきていますが、テレビCMなどのようにどこまで影響があるか測りにくいものもあります。
ブランド名やパッケージの色のようなものも、果たしてそれが正解だったのか誰にも分らないように映るでしょう。
しかし、そこに「再現性」はないのか?
複雑に絡んだ事象を1つ1つ解き明かし、大きな流れや方向性として、どのような構造になっていて、何がどれくらい影響しているのか、それを「分からない」で片付けずに仮説を立て、検証して真相を解明していくプロセスがマーケターという職業には求められているように感じます。
そして、そのような姿勢と脳の使い方のダイナミックさをこの本から学ばせてもらったように思っています。

ぜひ、果てない人類の歴史を想像しながら、読んでみてください。上巻だけで十分上記のような思考プロセスを味わえると思います。

②使える弁証法

次に紹介するのは、田坂広志さんの「使える弁証法」です。
田坂さんは多数の本を出版しており、ジャンルも経営系から人生についてまで非常に幅広いですが、どの本を読んでも、「あ、この人天才だ。」と思わせてくれるすごい人です。

田坂さんの本を読むといつも自分の頭の硬さを痛感させられるのですが、読んだ後は少しだけ新しいものの見方や頭の使い方ができるような気分にさせてくれます

この「使える弁証法」もまさにその1つで、ヘーゲルが提唱した弁証法に基づきながら、田坂さんならではの物事の見方を提示してくれます。

この本も大学時代に読んで非常に大きな影響を受けた本なのですが、なぜこの本がマーケター・事業家にとって有益な本だと思ったかについて少しだけ説明させていただきます。

まず、この本の趣旨としては、弁証法を活用してものごとを観察し、考えてみようというものです。その中でも「螺旋的発展の法則」が最も有用な法則だと述べられています。

この法則は、要約してしまうと、ものごとは直線的に進化するのではなく元いた位置への回帰と上方への進歩を同時に起こしながら発展していく、というものです。

例えば、昔は地域コミュニティにおいて行われていた「ボランティア」という文化が薄れ、サービスとして金銭報酬でより安定的に行われるようになっていったところから、インターネットの登場により、Q&Aサイトのようなナレッジ・コミュニティとなって発展して回帰し、無料で助け合う仕組みが特定コミュニティ内で出来上がっていったようなことが当てはまります。

一見、インターネットにより新しいビジネスモデルが生まれたように見えるのですが、元を辿れば似たような仕組みがあり、一度それが損なわれ対極的な仕組みが出来上がってから、螺旋的に発展して元の文化を踏襲する形に戻ってきているのです

この時、単に元に戻ることはありません。必ず新しい形に発展して姿を表します。
このような発展の仕方は、様々な業界や市場で起こっていて、逆に次に起こりそうな変化を予見する上でも非常に有用になります。

また、この発展形として紹介されているのが、「矛盾に対する止揚」です。(いまだ人生で止揚という言葉をこの本以外で見たことがない気がします笑)

本書の中で紹介されている矛盾だと、企業における社会貢献と利益の追及が挙げられています。

僕が身の回りで感じるものでも、生活の便利さと環境への影響、自社の利益と業界全体の発展、会社のみんなの裁量・成長と会社全体のマネジメント機能、好きなものを食べて幸せを感じることと健康を保つこと、など挙げればいくらでも矛盾が生じそうな事柄があります。

せっかちで思慮の浅い僕は何かと100か0かで考えてしまうのですが、田坂さんは「割り切って考えない」ことの重要性を説きます。

なぜなら、矛盾するように見えるものがあるからこそ、両者を肯定し、統合することでもう1つ上の次元へと昇華できると考えられるからです。

この本のおかげで、矛盾を解消しようとするのではなく、止揚することを意識して見る癖を少しはつけられるようになりました。

そもそも、矛盾は大概、欲同士のぶつかり合いです。
利益も上げたいけど、社会貢献もしたい、みんなに成長してほしいし裁量をガンガン持ってほしいけど、会社としてちゃんとマネジメントも行っていきたい、欲張りだから矛盾が生じます。
そしてその欲が1人の中でなくて、別々の人がそれぞれ持っている欲だったりするから難しいのだと思います。
妥協ではなく、どちらの欲も叶え、片方しか叶えない時以上の結果につなげる
そのような姿勢がいろんな人の欲をとりまとめ、最大の成果につなげる役割の人には必要なのだと思います。

で、またまた遠回りになってしまいましたが、この考え方はまさにマーケター・事業家に必要なものだと思うのです。

なぜなら、マーケターは商品を売らなければなりません。その一方でユーザーの満足度も高めなければなりません。誇大広告のようなことをすれば、一旦売上を上げることができるかもしれませんが、それではユーザーに満足してもらえませんし、クレームに繋がって次の商品はもう買ってもらえないかもしれません。
かと言って商品をあるがままに説明しても、良さが伝わらなくて、購買には繋がらないことがほとんどだと思います。

クリエイティブを作ったり、キャッチコピーを考えるマーケターなら誰もが悩んだ矛盾だと思います。
大体考えてアイディアをコネコネしているうちに、少しずつ表現が大げさになったり、言いすぎになって、上司に止められますよね笑

この矛盾を知恵と発想で解消し、多くの人の興味を惹き、かつ買ってくれた・使ってくれたユーザーに期待通りの満足を感じてもらうのがマーケターの使命だと思います。

どちらかだけに偏るのではなく、どちらも中途半端な妥協をするのではなく、どちらも超越した止揚を視野に入れ、考え抜けるのが素晴らしいマーケターなのではないかと、僕は考えています。

また、マーケターは社内で中間に立つことが多い職業だと思います。営業職と開発職の間だったり、人事職と現場の間だったり。

そのような立場だからこそ、両者の欲を取り入れながら、より大きな結果につなげる姿勢が必要になってきます。

どちらかだけの御用聞きになるのでもなく、どちらの意見も取り入れないのでもなく、その矛盾を歓迎してより高次の結果につなげる。
このスタンスを取ることができれば、ただの仲介人としてのマーケターから複数組織を率いるリーダーに発展できるような気がします

そして、マーケターと同様に、事業家にとってもこれは非常に重要なことだと思います。

なぜなら、事業を作るとは常に止揚の連続だからです。
ほとんど全ての事業には既存の競合がいます。それぞれの競合より何か優れたところがないと後発で勝つことはできません。
でも、1つの競合に対してだけ優位であっても、別の競合がそこを抑えていることがほとんどです。

ポジショニングマップで言うところの、横軸と縦軸です。
どちらにも潰されないようにしようと思ったら、その矛盾から新しい軸を生み出さなければいけません。
非常に難しいですが、逆に止揚のない新規事業はおそらく何も新しい価値を生みません

競合を乗り越える発展を生み、その事業をさらに乗り越えるアイディアを生むことで業界がどんどん発展していきます。
そこには必ず異なる欲が複数あり、それが矛盾となっています。それを乗り越えるアイディアを生める人が素晴らしい事業家なのではないかと思います

と、僕は思っていますが田坂さんの書いていることの半分も多分理解しきれてはいないと思います。
それくらいたくさんの思慮に富んだ本なので、ぜひ読んでみてください!

③シャーロックホームズシリーズ

いや、全然ふざけてないです。お前が好きな本なんて知らねぇよ!と言われてしまいそうですが、本当に素晴らしい本なんです!

現代のリメイク版のドラマなどを見た方もいると思いますが、シャーロックホームズは本で読むに限ります。
ストーリーとして面白いだけでなく、その観察眼、そこから得られるヒントを元に次々に仮説を構築し、検証し、間違っていたらまた戻って観察しなおす
そのプロセスがまさにマーケターなのです。

普段何気なく見逃すようなものを、全て何かのヒントのように見ている姿勢は様々なところにアンテナを張り、そこから商品開発、販促に活かしていくべきマーケターが見習うべき姿のような気がします。
コナン君が全てに対して、「妙だな。。」と勘ぐるのを100年以上前にシャーロックさんがやっているのです。

ジャレド・ダイヤモンドさんがマクロな観点から構造を掴み取る思考フレームを教えてくれるのだとしたら、ホームズはミクロな観点を糸口に真実にたどり着く思考法を教えてくれているようなイメージです。

では、マーケターとしてどうそれを活かすかというと、ホームズやコナン君は疑う、という方向性で観察眼を発揮しますが、マーケターは「期待する」という方向性で観察眼を発揮することで新しいアイディアや気付きを得られるのではないかと思います。

もしかしたらこう考えている人が多いのかもしれない。もしかしたらこれに興味を持つ人が増えているのかもしれない。ちょっとした言葉や人の行動、新しいサービスや商品などからきっかけを掴む能力がマーケターには求められます
そういう面で、マーケターとはポジティブホームズなのではないかと思います。

疑うと期待するという違いがありますが、小さな小さな糸口から何かを類推し、そこから思考を始めるというプロセスを超ハイレベルに体現してくれているのがホームズです。
その考え方、検証の仕方はマーケターや事業家にとってすごく参考になるのではないかと思います。

そして、ホームズの隣にワトソンがいるのも、マーケターや事業家として考えさせられる部分です。
全てを人と違う角度から見て、何かを得ようとするホームズの隣に、普通の人と同じ目線のワトソンがいてくれるからこそ、ホームズはそれと対比的に考えられます。

つまり、ワトソンはマーケターにとっての大衆の顕在的心理であり、その心理を踏み場として、そこからいかに思考を発展させられるかを試みているように感じます。
ワトソンがいるからこそ、「普通」がどこかを見失わず、そこから思考の探索に出かけられているのではないかと思います

あと単純にミステリーとしての出来がハイクオリティすぎます。
ほとんどのミステリーのトリックや展開がコナンドイルとアガサクリスティによって生み出されたとも言われていますが、原点にして頂点とはこのことだな、と思います。

結構作品数が多いですが、とりあえず「バスカヴィルの犬」「恐怖の谷」「四つの署名」あたりがベタなので、ぜひ読んでみてください!
一夜漬けで読破しちゃうこと請け合いです。

というわけで、僕がマーケター・事業家として非常に強い影響を受けた本3選でした!
他にも紹介したい本がたくさんありますが、どんどん脱線しそうなので、このくらいにしようと思います。

動画で本の要約を見たりすることもあるのですが、やはり自分の考え方の軸になるようなものは、実際に1冊の本を丸ごと読み、著者の考え方を汲み取りながら自分のものにしようとした時のものな気がします

この記事を書いていて、新しい考え方やスタンスを得られるよう、本から学ぶことを続け、事業家としてもマーケターとしても僕自身より成長していこうと改めて思いました!

少しでも読んでくださった方の本選びの参考になっていれば幸いです。
ご覧いただきありがとうございました!

バッタ


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