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至高のミュージカル『ドリームガールズ』(好きなシーン等を順不同でつらつら)

※ネタバレしています。
※映画は未視聴です。
※観劇は1回のみです。もっと観たかった…でも1回観れただけでも本当に良かった。観るべき作品。

https://twitter.com/xxx3220amo/status/1623945210081468417?s=46&t=VGpR7p8R2YIOr-MYrvkUiw

言語化する…(できるのか……?とにかく劇場で観て体感してください、と書くことが一番良い気もする。そのくらいの作品だった。)

望海風斗さん主演の『ドリームガールズ』を先日観劇できました。
『レ・ミゼラブル』のようにほぼ歌で紡がれるミュージカルで、そんな構成で歌がとびきり上手い皆さんが巨大感情をぶつけあうので、ミュージカル好きにはたまらない作品。いや「望海さん主演」って時点でそんなことわかってたし、キャスト発表で岡田浩揮さんや駒田一さんがいらっしゃる時点でそりゃそうだと思ったけど、予想以上に歌が!!すごい!!!皆さん上手すぎない…??この人歌うま!!え、あの人もうま!?!ってやってたら一幕終わった感。引き込まれてあっという間に終わる作品ってよく「体感5秒」みたいに言われるけど、ずっと歌を聴いてたしずっとクライマックスみたいな気分なので(歌が上手すぎるのでリサイタルに来たような満足感もある)、休憩なしの一幕モノなのかと錯覚するほどの充実感で、まだ二幕もあるなんて贅沢すぎない…?という感じたった。望海さんのディーナは控えめなシーンとパワフルなシーンのギャップがすごくて、やっぱり歌はさすがだな〜と惚れ惚れしてたら、エフィ役の村川絵梨さんとローレル役のsaraさんも全然負けてない!!ミシェル役のなかねかなさんも!!この3名のお歌を初めて聴いたけど凄すぎた… 個人的には“あの”望海さんと同レベルで張り合える方がこの世に3名もいらっしゃるなんて…という衝撃。Wキャストの福原みほさんを含めると4名。どちらのパターンも観たかったな… 本当に圧倒された。

舞台セットの撮影は禁止だったと思うので目に焼き付けてきたけど、壁には「I HAVE A DREAM」「is this freedom?」「BLACK VICTORY」という落書きのような表記が様々。ザ・ドリーメッツの3人だけじゃなく、カーティスやジミー達の想いも書かれてたんだろうな。
物語が進んで、ドリーメッツが有名になっても、ザ・ドリームズに改名しても、メンバーが入れ替わっても、この壁はずっと残り続けて、中でも「I HAVE A DREAM」の文字が、メンバー達のステージが何処であろうと、客席からよく見える位置にあり続けることが、ディーナの夢が「スターとして有名になること」から「虐げられる黒人のために自分にできることをやりたい(映画に出演したい)」と徐々に変わっていくことの象徴のようでもあって、すごく胸に来る光景だった。(まさか最後にこの文字が光るとは思わなかったけどね!笑)

作品の主役は望海さん演じるディーナ・ジョーンズだけど、初めはエフィやローレルのように恋をすることもなく、自分達に迫り来るチャンスに対して派手な行動は取らず控えめな立ち位置なのかな…と考えながら観ていて、どちらかというとメンバー3人の中ではエフィとローレルが決断して、カーティスの采配のおかげもあり、ディーナ以外が物語を進めていくような印象。自分の意思ではなくリードボーカルに選ばれてグループの顔になってしまったり、カーティスとの恋仲をエフィに疑われて苦しんだり、能動よりも受動的なすごく難しい役だと思った。でもバラバラになったグループで、エフィとローレルの手を繋いであげる役目を果たせたのは、ディーナだからこそなし得た役目だったと信じてる。ジミーとの関係に悩むローレルの手を繋ぐディーナ、カーティスを訴えることを話に来たエフィとも手を繋ぐディーナ。悩める仲間の手を取るディーナの底知れぬ慈愛が、抜擢されてスター街道を昇っていく中でも廃れなかったことがすごく嬉しかったし、ディーナを演じる望海さんを観ることができて良かったな。そしてグループの顔として花開くディーナには我々も魅了されがち。『ガイズアンドドールズ』の時も思ったけど望海さんのショースターっぷりが堪らんのよ…だからこそ『ムーランルージュ』のサティーンも最高に楽しみなんです。そんな中、運命に身を任せながらも、本当の自分の夢を見つけてカーティスとの別れを決めたのはディーナ自身。ザ・ドリームズの解散も、ディーナの歌うことをやめたいという決断が大きな要素だったと思う。解散会見を現メンバーだけじゃなくエフィも含めた4人で迎えられたのもディーナのおかげ。ディーナあってのドリームガールズだったなぁと改めて思う。そして最後の最後に自分の道を切り開くディーナ、よりいっそう輝きを放ってて最高に素敵だった。優しくて華やかで女神のよう。
望海さん、一幕の初々しさも可愛かったけど、二幕冒頭のロングウィッグのディーナが神々しかったな… トロッコ的なものに乗りながらテーマソングを歌うゴージャスなディーナ、好きすぎて舞台写真買ってしまったよ。そして抜群のスタイルで沢山着替えてくれるから目の保養でもあった。衣装は有村先生だったね…美術は松井るみさんだし盤石の体制だったんだなとプログラムを読み返してる。

エフィはグループを脱退したり、ソロで活動したり、別行動を取るから見せ場も沢山あって、歌い上げるソロも多いし、ものすごく充実した役だった。グループ脱退前のソロ曲『And I Am Telling You I'm Not Going』のエネルギーといったら!強い意志に強い歌唱、ひたすらに圧巻だった。今思うと、あの頃にエフィが不安定で体調が悪かったのは、リードボーカル交代を言い渡されたショックによるものだけじゃなく、カーティスとの子を身籠ってたらからだったのだろうな。それをわかった上でもう一度聴いてみたい。改めて村川さん素晴らしかったな。
エフィによる『One Night Only』からのディーナによるディスコ調の『One Night Only』の歌い継ぎのシーンがあまりにも良くて、かなり印象深く残ってる。C.C.ホワイトが作った楽曲をカーティスが盗用したことを考えると許せないけど、そういう現実を知らずに音楽だけを受け止めた世間からは2パターンの素晴らしい歌唱が評価されチャート上位に食い込むという、エンタメ業界の皮肉さを感じるシーンだった。そして「黒人がヒットを出せば白人がパクる」という当時の残酷な仕打ちが黒人同士でも生まれてしまう象徴的なシーンでもあり、2人が素晴らしく歌えば歌うほどしんどく感じる構成なのが憎いわ…。

東京楽後の映像内のsaraさんがすごく好き。眩しいほどの笑顔とウィンクが可愛いね…
saraさん、まさに“ソウル”という言葉がふさわしいくらい歌い上げるし難解なリズムや旋律でもブレない技巧が素晴らしすぎたのだけど(ジミーと別れるか別れないかを争う歌、すごく難しい曲だと思うけどすごかったな)、夏の『ファントム』でクリスティーヌを真彩ちゃんとWキャストで演じるなんて楽しみすぎて。ローレルとクリスティーヌ、歌い方も真逆のタイプのように思うのだけど、引き出しのとんでもなく幅が広いんだね… 

カーティス役のspiさん、プログラムの中で「登場人物たちの心拍数が速いところに共感する」と仰ってて、その視点素敵すぎるな…?!spiさんの舞台を初めて拝見したけど、いやほんとにめちゃくちゃかっこよかったです。カーティスはカーディーラーで培った営業力もあるのだろうけど、やはり黒人としてこの国で虐げられてきたことが全ての原動力になっているようなパワーがあって、だからこそ手段を選ばない怖さもあって。1番好きだったのは、マイアミのステージで黒人を初めて出演させようと悪戦苦闘されてるところ。「全員連れて行ってやる、あっちのホテルを買ってでも連れて行ってやる」、取引先との電話を切ってそんなこと呟かれたらもうカーティスについて行くしかなくない…?(惚)
黒人でものし上がろう、どんな手を使ってでも。そんな男性陣のコーラスが響く『Steppin' to the Bad Side』もめちゃめちゃに良かったな… 1番低いパートを担当されてた岡田さんの低音が好きだったしこんな低い声出せるの…?ってびっくりした。プロってすごい。
岡田さんといえば『ファントム』のキャリエール、駒田さんといえば『メリーポピンズ』のジョージ・バンクス、『レ・ミゼラブル』のテナルディエ、『ミス・サイゴン』のエンジニア、と何度も別の作品で舞台姿を拝見してきたけど、2人とも今まで私が見た事のないキャラクターで本当に面白かった。岡田さん演じるジミーは節操なく周りの女性に手を出すし、売れるためにカーティスに素直に従うというよりも、最後は自分の気持ちを貫き奇行に走って縁を切られる。駒田さん演じるジミーのマネージャーであるマーティは、カーティスがジミーをプロデュースすることを面白く思わないし、“私の”ジミーだと強く主張するほど、愛と独占欲の境界線がわからないほどジミーへの気持ちが強い。

この作品中のアメリカにおける大スターは、一幕では既に大人気のジミー、二幕では一幕中にのし上がってきたディーナ(ドリームズの中でも群を抜いて人気だし特別扱いされる)という位置付けだったけど、二幕終盤では二人とも自分のやりたいことを主張し、カーティスの意図しない行動を取ろうとする。金になるものをやるか、自分の気持ちに従うか。自分のやりたいことをやってカーティスから縁を切られたジミーと、自分のやりたいことをやっても結果的にカーティスから背中を押されたディーナ、という2人の対比もなんだか切なくなった。(ジミーは人として倫理的にアウトだったとは思うけど…ってそんな問題児ポジションをあの岡田さんが演じてる、っていうのも新鮮すぎました。)

最後にめちゃくちゃ好きだったシーンの話。ザ・ドリームズの解散会見でディーナが最後に「ありがとう、良い夢を」って締めていたことが良すぎた。好きすぎた。“夢”がテーマのこの作品で、そして一つの夢がゴールを迎える瞬間に、こんな素敵な言葉ある?
「ローレルと決めたの、泣かないって。」と語るディーナだけど、解散会見に3人ではなく4人で望む姿に、客席の私は爆泣きでした。エフィを迎え入れる時のBGMが『One Night Dream』なのも、この曲がザ・ドリームズではなくC.C.ホワイトとエフィの曲だということをメンバーも世間も認めていることを表してるようでとても良かった。
あと会見前にカーティスと決別して去っていくディーナが開く扉が、あの「I HAVE A DREAM」が書かれた壁なのも(照明の使い方が凄く良かった。まるで暗がりの舞台袖から明るい舞台に出ていくかのようで…)、終演後のカテコではそのディーナが出ていった同じ扉から望海さんが今度は入ってくるの。もう何度泣いたら良いのか…っていうくらい涙腺崩壊ポイント多すぎた。

シスターフッドが描かれるミュージカルとしては、他に『シスターアクト』が大好きだけど、『ドリームガールズ』のほうが、実話に基づいてることもあってリアルだよね…夢が孕む栄光と闇。泥沼のような要素を持ちつつも、最後に救いとなるのは女性同士の絆。

とにかく観れて本当に良かったな!素晴らしい作品を望海さんのおかげで知ることができて光栄です。


グッズも可愛かったね〜 プログラムが大きくて良き。中のモノクロ写真が超可愛い…トートバッグは普段使いしたい。

私が観劇したのはイープラス貸切だったけど、カテコで望海さんが「私の夢はプラみちゃんに会うことです!」って高らかに宣言しててとても可愛かった(笑)プラみちゃん、どうか我らがディーナの夢を叶えてくださいね……おわり。


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