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最高のラガービールを作ります

ロブはビール作りのプロフェッショナル

グレートデーンブリューイングとして、語るべきことは山ほどあるのですが、何と言っても我々はビール屋さんですから、肝心のビールについてまずはしっかりお話しさせてください。

グレートデーン(USA)の創業者であり、ブリューマスターであるロブが作り出すビールへの評価は非常に高く、2012年には全米の年間最優秀醸造家(Brewer of the Year)にも選ばれました。ちなみにロブは縁あって、長野県松本市の松本ブルワリーの醸造アドバイザーも務めています。

仙台・秋保のホップ畑の手入れをするロブ

そんなロブは数えきれないくらいのビールタイプを自在に生み出すことができるので、私たちとしては「数ある選択肢の中で、どんなビールを前面に打ち出していくべきか?」という点で、逆に迷いが生じることになったのです。ある意味、贅沢な悩みです。

ラガービールとエールビール

さて、ここでビールそのものについて少し説明させてください(ビールに詳しい人にとっては常識の話ですので、しばらく読み飛ばしてくださいね)。

まずビールは大きく2つのタイプに分けられます。一つは「ラガー」、もう一つは「エール」と呼ばれます。ラガーは「下面発酵」と言われますが、摂氏5度前後の低温で発酵をさせ、ビール酵母は発酵タンクの下の方に沈んでいきます。一方、エールは「上面発酵」で、常温かそれ以上の温度で発酵をさせ、酵母はタンクの上部に浮き上がっていきます。

こちらのサイトの説明がシンプルでわかりやすいです。

日本の大手ビールメーカーのつくる主力商品のほとんどは、このうちのラガータイプです。「大手の商品はどれも味が似すぎていて、目隠しをして飲んだら、どれがどれだかわからない」などという皮肉を言われることもありますが、裏を返せば、それだけ多くの日本人がラガータイプのビールを深く愛していることにほかなりません。日本人はラガータイプの持つ飲みやすさや、のどごしの良さを楽しむ傾向が強いようです。

一方で、クラフトビールの人気商品の多くはエールタイプです。エールタイプは香りが華やかなものが多いので、一口飲んだ時に「おっ、いつものビールと全然違う!」という反応が返ってきやすいものです。ビール好きの間では近年「IPA(アイ・ピー・エー)」、正確には「India Pale Ale (インディア・ペール・エール)」と呼ばれる、ホップを存分に効かせた非常に苦味の強いタイプのビールが大人気ですが、こちらは「エール」という単語が入っている通り、上面発酵スタイルの香り高いビールです。

フラッグシップをどうしよう?

さて、私たちは考えました。自社を代表するビール、いわゆる「フラッグシップビール」はどんなタイプであるべきなのだろうか。個性を出すという点では、エールタイプのほうが取り組みやすいのは間違いありません。特にクラフトビールファンから歓迎されるのは、間違いなく個性的で美味しいエールタイプでしょう。

けれども、随分長い時間をかけて考えた後に、ロブはこう結論づけました。

「多くの日本人が本当に好きなのは、エールじゃなくて、ラガーなんじゃないかと思うんだ。グラスをしっかり冷やしたり、のどごしを重視したり、日本には日本らしいビール文化があるけれど、それに一番マッチしているのはラガービールだよね。ラガーなんだけれど、大手メーカーのものとは一味違う、グレートデーンらしい香りや味わいのあるビールを生み出すこと。それが僕たちがトライするべきテーマだと思う。さあ、みんなでグレートなラガーをつくろう!」

ロブのこの意見を聞いて、チーム全員が深く納得しました。もちろん私たちは全員が大のビール好き。IPAをはじめ、エールタイプのビールの美味しさは十分に理解しています。そしてグレートデーンとしても、エールタイプのビールをこれからたくさん作っていくつもりです。

けれども、一部のビールマニアのためではなく、大手メーカーの商品を愛飲している「普通のビール好き」の皆さんに「いつものビールとはちょっと違うけれど、これも美味しいね」と言ってもらうためには、ラガービールにこそチャレンジしたいと考えたのです。

そして「GREAT LAGER」の誕生

アメリカのグレートデーンでは、ありとあらゆるタイプのビールをつくっていますが、一番人気があってファンが多いのは、実は「ジャーマンピルスナー」という名前のラガービールなんです。つまりグレートデーンというブランドは、そもそもラガービールがしっかり支えているということなのかもしれません。

アメリカで一番人気のジャーマンピルスナー

日本人に愛される、グレートデーンらしいラガービールをつくろうということで、チームではロブを中心に詳細な議論が始まりました。どの麦芽を使う?ホップの品種は?それらの比率は?液体の色はどうあるべき?香りは?苦味は?アルコール度数は? 一つ一つの要素を徹底的に話し合い、そして何度も試作を重ねていきました。

チームで食事をしていても話題は自然とビールのことに

と言っても、日本ではまだビールをつくる設備も揃っておらず、ましてやビールの製造免許がない状態ですから、自分たちのブリュワリーでビールをつくることができません。そこで、アメリカのグレートデーンやロブの友人のブリュワリーで、何度も実験的につくってもらいました。

アメリカでの試作品。ここからさらに何度も調整。

サンプルができたとなれば、確認のためにわざわざアメリカまで試飲に行ったり、あるいは国際便で日本に送ってもらったりして、そのたびに微調整を繰り返し、少しずつ完成形に近づけていきました。

こうして出来上がったのが、私たちのフラッグシップビール「GREAT LAGER(グレートラガー)」です。この絶妙なバランスの味わいを、ぜひ多くの皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。

これが「GREAT LAGER」の見本缶

もちろんエールビールもつくります!

最初はフラッグシップである「GREAT LAGER」に力を入れていきますが、脇を固める商品も続々と開発中です。まずは先ほども触れた「IPA(India Pale Ale)」。IPAはブームということもあって、多くのブリュワリーから、かなり先鋭的なものが登場しています。

IPAでは苦味のもとであるホップを大量に使いますが、そうして出来上がったビールの中には、驚くほど苦味の強いものもあります。もちろんそれはそれで美味しいのですが、私たちが目指したのは苦味のパンチが強すぎるものではなく、「食事にも合う、バランスの良いIPA」。刺身や豆腐のような薄味の和食とも合わせることができる、そんなIPAを目指してつくっています。

この他にも、ウィート、スコッチエール、アメリカンペールエール、ポーター、スタウトなど様々な定番のビールタイプを商品として打ち出していきます。それに加えて、季節ごとにもっと遊び心のある、そしてチャレンジングなものも生み出していきます。それらは秋保のブリュワリーでどんどん発表していくつもりです。

我々としてはまずは一刻も早く、グレートラガーを皆さんに味わっていただきたいと思っています!お楽しみに!!


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