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いち病院薬剤師が『アンサング・シンデレラ』第3話を見た感想

『アンサング・シンデレラ 第3話』
いい話でした。感動しました。
薬剤師が進む道には、主に病院薬剤師と薬局薬剤師があります。

同じ薬剤師という資格でありながら、違う職種に感じられるほど、仕事内容が異なります。

優劣は決してないはずなのですが、成田凌演じる薬局薬剤師が言うセリフ、一つひとつが、病院薬剤師として働く私には耳が痛かったです。
いつか行った学会で、パネリストとして壇上でディスカッションしている調剤薬局薬剤師から病院薬剤師への提言、という名の指摘がドラマで再現されたような感覚でした。成田さんが何か言うたびに、病院薬剤師の私が「そう!そうだ!そうだそうだ!」と合いの手を入れていましたから。

成田凌…。カッコよかった。代役。病気で倒れられた清原さんという俳優の代役で、サッとあそこまで演じられて、さすがです。目ヂカラがあって、表情だけで気持ちを伝えることができる。素晴らしい俳優さんですね。上半身裸の時、悶絶寸前でした。話は逸れましたが、ドラッグストアで白衣を着崩す成田凌は、本当にそこら辺にいる薬局薬剤師にしか見えませんでした。(カッコ良すぎるけど)

薬薬連携が叫ばれて久しいところです。病院薬剤師と薬局薬剤師の連携。しかし、少なくとも私のいる環境ではまだまだ発展途上です。

葵さんが、患者さんが自分で使いやすいように薬袋から出してバラバラになった「持参薬」を整理していく場面、今の自分の仕事と重なり、共感して見ました。たいがいの患者さんは、重要な情報満載の薬袋から薬を出して管理しています。かくいう私もその一人。ものすごい偏見をもって反応を恐れながら言いますが、医師が患者として入院した時の持参薬、グッチャグチャです…(^^;;多分、全部わかり過ぎているからでしょう。そんな私の薬用の巾着袋の中は、古い残薬も捨て切れず、まぁひどい状態です。巾着の中はゴミ屋敷です。話は戻り、山のような持参薬を仕分け、老眼がつらくなったので時には虫眼鏡で識別記号を調べます。薬の残数のバラツキから、普段の服薬コンプライアンス(飲み忘れ具合)を推察します。

この時、薬手帳や薬の説明書を持って来てくれていると、非常に助かります。調剤薬局で発行されているこれらの情報は、こちらからしたらほぼ解答を写しながら問題集の宿題をするような感覚です。特に近年では、薬局のデータも高度化し、どこの薬局の資料も遜色なくわかりやすいです。

透析を受けながら教師の仕事を頑張る患者さんに、最後、お薬カレンダーを提案する場面、感動しました。しかし、あのカレンダーを持参薬としてまた持って来られたら、それはそれで持参薬報告が大変だろうなあ、ミイラ取りがミイラにならなければいいが、と思った次第です。カレンダーにセットするのが患者さん自身だった場合、そのセットが間違っていないかチェックし、全部バラバラになったのをまた出して数えなくてはならないからです。生徒からのメッセージが入ったケースで、カレンダーを使うモチベーションも、服薬を続けるモチベーションも高まるので大丈夫とは思いますが、老婆心まで。

確か、途中に薬剤師の揃った画面に、病院薬剤師だけでなく、薬局薬剤師も一緒に写っていました。これからはそれですね。病院で働いていると、とかく病院内の他職種同士のチーム医療を進めるよう努力することに気が行きますが、それとは別に、薬局薬剤師と病院薬剤師が手に手を取り合って、患者さんの情報を共有していくような道が開けて行くのだと思います。

正直に言います。最初、就職する時に、積極的に病院薬剤師になりたかった訳ではありませんが、それを言えば、もっと調剤薬局の薬剤師になりたいという気持ちはなかったわけです。

ドラマの中で薬局薬剤師が病院薬剤師に向かって言います。「薬局薬剤師のことを見下しているだろう」
……ゼロではないのかもしれません。

ただ、調剤薬局薬剤師のママ友ができたり、調剤薬局から転職して来た同僚がいたりで、分からないなりにも以前よりは理解が深まりました。

我々病院薬剤師がしなくてよい細々した知識が、薬局薬剤師にはたくさん入っています。レセプト、点数、加算(以上診療報酬)、加入している健康保険、ジェネリック薬品の選択、処方せんに書かれた薬品の選択、変更の権限、そして薬歴管理や、薬局によっては在宅医療に力を入れていたり、病院薬剤師のように輸液を調製していたり。院外処方せんに患者さんの検査値も載せる要望があったり、と、私たちのできないこと、知らないことをどんどんやっているようです。私は薬局で働いたことがないので、確かな情報ではないかもしれませんがご了承ください。

その代わり、私たち病院薬剤師は、医師、看護師と距離が近く、カルテも検査値もすぐに見られます。患者さんのリアルタイムの状態を把握しやすく、薬が原因で状態が変わっている可能性があれば、すぐに医師や看護師と連絡が取り合えます。調剤薬局薬剤師よりは注射器を触る機会も多いでしょう。そんな自分たちの仕事をちょっと誇らしく思っていることも事実です。

薬局薬剤師は患者さんの普段の生活情報、病院薬剤師は入院中の病態、退院後の生活に向けての指導に力を入れていく役割分担でしょうか。

薬局薬剤師のことを分かっていなくて書いているので、間違っていたらすみません。分からないと言えば、管理職の立場も分かりません。真矢さん演じる部長、勤続20年、おめでとうございます!残念ながら、勤続25年以上の私は一生現場で終わりそうです。管理する側の苦労は分からないままでしょう。しかし、登り坂、下り坂ありながらも、ここまで細々と働いて来られたことは、自分の中ではほんの少しだけ誇りに思っています。

最後に、こんな幸せなこと、あります?地味な存在、影の存在の薬剤師が主役のドラマが放送されるなんて!それを見て、「あるある」だの「ないない」だのぶつぶつ述べられる日が来るなんて。ビックリポンです。

今日も長々とすみませんでした。
特に夢だった職業に就いた訳でもない私が、ここまで薬剤師について熱く語る機会があるとは…。

このnote でも、こんな存在感のない私なんかの投稿が、アンサング・シンデレラ感想に関してはよくアクセスされているようで、驚いています。

このドラマが、キャストの華やかさもあり、注目されているからでしょう。少しでも現場で働く薬剤師の目線からの感想が役立てば幸いです。

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