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人はなぜ贈り物をするのか

人は本来ケチなのか?気前が良いのか?

 マーシャル・サーリンズ(アメリカの文化人類学者)は「友だちが贈り物をつくることもあれば、贈り物が友だちをつくることもある」と言ったそうですが、確かに私たちが贈り物をしたり、あるいはもらったりする時「互酬性」(贈与に対して社会規範として何らかの形で返礼を行うこと)が存在することがわかります。

 お中元やお歳暮、さまざまなお祝い事、クリスマス、誕生日のプレゼントなどは関係性があるから贈っているし、頂戴するわけで、一方で引越しをはじめ初対面の際のご挨拶の品は贈って関係性ができることもあります。
現代はこの両方のギフトコミュニケーションによって、人間関係が成立していると言えるでしょう。

 しかし異なる文化圏では意外な贈り方もありました。
アメリカの北西部に住むクワキウトル族などインディアン社会に見られるポトラッチ(威信と名誉をかけた贈答慣行 : 主催者は盛大な宴会を開き、蓄積してきた財物を客に惜しみなくふるまって自らの地位と財力を誇示し、一方で客も自らの名誉をかけて他の機会にそれ以上のもてなしをする)という贈与交換をしていた。パトラッチを行うことで自らの地位を上げていくことができ、この社会では財より地位や名誉が優先されていたようです。
 ニューギニアのトロブリアンド諸島で、男性たちは自分の菜園で摂れた主食のヤム芋を自分が食べる以外は全て自分の姉妹をはじめとする母系親族の夫たちへの贈り物とする慣習が残っています。人間は人から助けられることで生きているのだという考え方が根底にあるからです。



 モノの交換には、売り買いと贈答との2種類があり、これはまったく別な行為ですが、現代の社会では経済生活の基盤を無視して贈答を考えることができなくなっています。しかし贈答行為のルーツを探っていけば我々の遠い祖先も意外な贈り方をしていたのかもしれません。
 経済学者は「人間は本来ケチである」といい、人類学者は「人間とは本来気前が良い」と言うのもその象徴かもしれません。

 ギフト研究所は本年創設8年目を迎え、1月5日に「GIFT PRESS」を発刊いたします。
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一般社団法人ギフト研究所ギフト
代表理事 山田晴久


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