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ペットロスからの成長という考え方/PTG(心的外傷後成長)について

先日、チンチラ協会主催「ペットロスセミナー」の講師を務めさせていただきました。残念ながら、当日参加できなかった方が多かったのですが、何度か参加していただいた方に、少しでも新しい学びになればと思い、内容を再構成していた際に、PTG(心的外傷後成長)を盛り込むことにしました。
ここで、少しPTGについて紹介したいと思います。


PTGとは

posttraumaticgrowth (ポストトラウマティックグロース)の頭文字をとっています。日本語に訳すと心的外傷後成長。と言います。

皆さんも、「トラウマ」という言葉は耳にしたことがあると思いますが、「トラウマ」と聞いてイメージするのは凄惨な出来事ではないでしょうか。
一般的には、自然災害(地震、火災、台風など)、社会的不安(戦争、テロ、暴動など)、生命など危険にかかわる体験(暴力、事故、犯罪など)喪失体験(愛する者の死、大切なものの喪失など)です。

「愛する者の死」=ペットロスも、トラウマ体験なのです。

このほかにも、PTGのトラウマはもう少し広く見ています。例えば、受験に失敗する、失恋など。自身のアイデンティティを揺るがすような出来事などもトラウマと言えますよね。

さて、この衝撃的な出来事に出くわした際、私たちは、自分を守るために、様々な防衛反応が表れます。

トラウマへの心理的反応=グリーフ反応

2. 外傷(トラウマ)への心理的反応

 外傷体験によって、様々な心理的反応が生じる。これらの反応をトラウマ反応と呼ぶが、トラウマ反応は、異常な体験ではなく、極度の危険に巻き込まれた人ならば誰にでも生じる反応であり、「異常な状況に対する正常な反応」と考えられている。外傷体験がある場合、PTSDを予防することは重要な課題であるが、PTSDだけがトラウマ反応ではない。トラウマ反応では次のような様々な症状や変化が生じる。

(1) 感情・思考の変化
 信じられない出来事が起きたために、現実を受け止められない、何が起きたのか、どうすればよいのかわからない、ただ茫然としてしまったり、恐怖や不安に駆りたてられる気持ちで一杯になることがある。大切な人や物を失った喪失感から、悲嘆や落ち込み、うつ的な感情に支配されることもある。事件を引き起こしたものに対して、怒りやいらいらが生じ、その出来事に対する感情が抑えきれなくなり、突然、涙がでてきたり、自分自身の責任であると考え、自分自身を責めたりすることもある。
 方向感覚を喪失したり、注意が散漫になり、小さな物音に対しても過敏になったり、これまでできていたことができなくなったりする。出来事について、全く考えることができない時期と考えすぎてしまう時期が繰りかえされる。

(2) 身体の変化
 恐怖・不安のために、過度の緊張状態となり、眠れない、動悸、筋肉の震え、頭痛、腹痛、寒気、吐き気、痙攣、めまい、発汗、呼吸困難などの症状が現れる。

(3) 行動の変化
 感情の変化が行動に表れる。怒りが爆発したり、ふさぎこんだりする。出来事を思い出す場所を回避したり、閉じこもったりする。安心を求めて添い寝を求めたり、母親から離れなくなることも多い。過食や拒食、薬やアルコールへの依存などの行動も起きやすい。

文部科学省「外傷体験とは」より引用

上記に示されるような反応は、一般的に喪失体験の際に、現れる悲嘆反応とも言えます。ただし、(3)行動の変化では、故人を探す、生き返らせてほしいと願う、セレモニーを行うなど、死別特有の反応もあると思います。


そして、少しずつ、愛するペットの死と向き合い、現実を受け入れるていくのですが、お別れの事実は辛く悲しく、とにかく寂しい。肉体がなくなってしまったので、「触れる事ができない。」ペットロスでは、特に辛いことのように思います。

しかし、肉体はなくなっても、絆はなくならない。今までとは違う形になるけど、会える場所を作る。大切な思い出、辛い思い出、かけがえのない日々を思い出すこと、話すことで、「会える」のです。

そして、愛するものが、いない世界で、私たちの日々は続いていきます。

ペットロス後の成長という考え方

辛い体験から、徐々に大丈夫になっていくには、時間がかかる方も多いと思います。一方で、新たな人生を歩む過程で、辛さをバネに、新しい可能性を見出す方もいます。

一歩先へ。。。それを目指す必要はありません。

しかし、私たちは、辛さを経験したからこそ、人として成長することもできるのです。PTGでは、以下の要素が認められると言われています。

1.人間的強さ
辛く苦しい経験に、対応できた。自分は強いのだ。と感じる、自己肯定感の高まり

2.新たな可能性
喪失体験を契機に、自分と似たいような体験をした人のサポートをしたり、社会に役立てようと考える。
例えば、猫を亡くした方が、保護猫活動のボランティアを始めたり、家族の病気を経験した方が、医療への道を志すなど。

3.他者との関係
死別体験により、他者との関係が親密なることも多くあります。
家族や親戚、地域の方々との関係性が深まる。災害時の避難所で、お互い助け合ったり、仲間意識など親密性が増すこともあります。また、経験から他者を思いやる気持ちが芽生えたり、以前よりも気持ちに寄り添うようになったりします。

4.人生に対する感謝・スピリチュアル的変容
ペットロスで辛い体験をした意味を考え、自分が生かされている事への感謝や、幸福であると感じることへの感謝。
また、物質的な豊かさよりも、心の豊かさを大切にするようになる。
信仰心が芽生えたり、亡くなったペットと新しい絆を結ぶことなど。


成長するためには

とにかく、体験したことと向き合う。
その為には、「語る事」が重要です。
自分に何が起こったのか。自問自答しながら、ペットロスから目を背けるのではなく、向き合うことで、気持ちに折り合いをつけていくのです。
書き出しても良いのですが、できれば、信頼できる人に聴いてもらうこと、時には意見を貰うこと、類似体験者の話を聴くこと等を通して、自分なりに体験を解釈し、受け入れていくことになります。

ただし、人に話す際は、信頼できる人、安心できることが、最重要です。話す相手を間違えると、かえって傷つく可能性があります。

ソーシャルサポートの活用
ペットロスからの成長で利用できるソーシャルサポートといえば、ペットロスセミナーや座談会などへの参加が有効だと思います。
また、同じ動物を飼っている友人やコミュニティの中で、話を聴いてもらえると良いのではないでしょうか。

最後は、ウェルビーイグ

最後に、ペットロス後成長により、ウェルビーイングにつながるのだと、気づきました。改めて、ウェルビーイングの5つの要素をご紹介します。

Positive Emotion(ポジティブな感情)
Engagement(エンゲージメント、没頭)
Relationship(ポジティブな人間関係)
Meaning and Purpose(意味や目的)
Achievement/ Accomplish(達成)

PTG と重なりますね。

以前、考えがまとまらない。というか、知識不足(PTGの存在は知っていたが、調べようとしていなかった)だったので、やっとつながりました。過去の記事は以下です。ちょっと恥ずかしい。


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