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プラントベースフード開発の軌跡#3:試食会→フィードバック→改善のループ

前回OME先と無事に繋がった旨を書きましたが、ようやくスタートラインに立てたようなもので、まだまだやることは山積みです。やらないといけないことに気圧されつつ、やるべきことを愚直に進めていきます。

商品作りの一丁目一番地

さて、今回は肝心要の試食会について。OEM先の工場とシェフにコンセプトとやりたいことは伝わったものの、それが実現出来るかどうかが一番難しい。コンセプト、アイデアはいくらでも考えられますがそれを実現する作り手のテクニックと実現させるんだと言う気概のようなものも重要です。

僕がどれだけその気概のようなものを持っていても作って下さる方がそれに足る熱量を持っていてくれないと片手落ち。その点、僕らは恵まれていました。この工場の商品開発担当者とシェフがそれらを備えてくれていたので。

工場に伺ってお話ししたのが2020年のクリスマス。第1回目の試食会が1月2週目だったので、かなりのスピード感で仕上げてくれました。工場側も初めての取り組みで、シェフにとっても初めての取り組みで、私たちも初めての取り組みということで初めての三乗で苦難の香りしかしませんでした(笑)

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レンチン可能な真空パックに納まったGrino Version 1.0いや0.1?

初回の試食会にて

色々不安要素もあったものの、この日食べたグラタンの一口目で驚きました。

「美味い。予想以上に美味い。これで植物由来食材のみの食事なのか?」

植物性食材のみ、添加物は可能な限り使わず、さらには五葷(ニラ、ニンニク、ラッキョウ、タマネギ、アサツキなどの強い匂いがする野菜)抜き、という「どんなベジタリアンの方にも食べてもらえる商品を作る」というシェフ泣かせなルールの中仕上げて下さいました。

ただ、まだまだ改善が必要と感じた商品が多かったのも事実で、プロダクト全体の完成度を高めるには時間が要りそうです。まずは短期間で予想を超えるクオリティまで商品を高めてくれたシェフと開発担当者の方に感謝をしつつ、次の試食会に向けたフィードバックを早速行いました。

フィードバックの内容とは

試食会を受けて改善が欲しいと感じたのは以下の3点
1. 大豆ミート独特の香り。
2. 通常の食事で感じられる風味が足りないこと。
3. 基本五味のバランス。

食事を通して地球の未来を変えたいと大層なことを標榜しているので、美味しい、食べたい、と思ってもらえるものである必要性が高いです。ですので、味に関しては妥協せず最善を尽くします。ということで、上記3点についてシェフと開発担当の方に共有し改善に取り組んでいただく事に。

大豆ミートと代替品について

大豆ミートは肉を使った料理の歯応えを演出するために活用していますが、上手に調理しないと大豆の香りが強く出てしまうのが玉に瑕。良い食感が演出できる一方で、食事全体の香りのバランスが崩れてしまいます。対策として考えたのは2つ、商品の調理工程を変えるか、大豆ミート以外の食材を使うか。そこで、2案とも試した結果、特に目立って改善が見られたのは「オムニポーク」を使用したケース。香港発のプラントベースミートが、想像以上にクオリティが高く、以後様々なレシピで活用することになりました。具体的には大豆ミートや一般的なプラントベースフードでは表現出来ないコクやうま味のようなものを演出してくれ、風味に彩りを加えられました。

足りない風味対策

非常に美味しかったものの、グラタンで課題として感じていたのはチーズの風味。温まったグラタン独特のチーズの香りが食欲をそそるのですが、チーズはもちろん使えないため、その香りを楽しめない。地球環境に良いからと言って食事を楽しめないことを良しとしない私たちは少し物足りなさを感じていました。そんな中ヒントをくれたのが前述「アリサン」という食材輸入会社のヨーコさん。試食をした際に感じた課題をなんとなく相談していた際に「ニュートリショナルイーストが良いよ〜!」とアドバイスをくれたのです。早速手に入れて工場に手配しました。これを活用したグラタンを後日頂くと確かにチーズのような香りが立ち込めていました。

食品の世界もPDCAサイクルを回してプロダクトを磨いていくのだと感心した一連の流れでした。それでもなお満足のいくレベルには達していないということで、この部分に関しては引き続き調整を続けております。終わらない挑戦やで…

基本五味のバランス

以前行った試食会の際に課題として感じていたのが、試食の内容のアウトプット、フィードバックの難しさでした。味は当然ながら主観ですし、自分の感覚を文字で表現するのが非常に難しいです。自由記述による発見も大事でしたが、数値化してコミュニケーションが取れた方が試食側も作る側も理解しやすいのでは?ということで、指標とした項目の一部が基本五味でした。

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この指標をどうしても入れたかった理由のもう一つが、市販品のテストを行った際の違和感「プラントベースフード味がちょっと濃く感じる」問題でした。開発段階で多種多様な市販品を試したのですが、植物由来であるインパクトのなさを味を濃くしたり、添加物を活用するなどして補っているように感じる例が散見されました。これにより試食会後は参加者が胸焼けがするなどと言ったこともあり、ここは改善すべき点だなと感じていたのです。体に良いと言われる植物由来の食事をした結果胸焼け?なんか変だな?というのが率直な感想でした。

この胸焼けするような味の濃さなどをより詳細に理解して解消出来るように、特に塩味や苦味、場合によっては辛味も強過ぎないように、むしろ少し弱いくらいの方が優しく感じられて良いのではないかなどという議論のもと、五味を主観で数値化するという手段を取りました。

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少し長くなってしまいましたが、一連の商品開発の流れをご理解いただけましたでしょうか。結構なレベルで取り組みの内容を公開していると思いますが、これはユーザーになって下さる方々に僕らのこだわりや取り組みの深度について少しでも知って頂ければと思っているのと、これを参考に商品開発や競争が起こってプラントベースフードの業界がもっともっと活性化していくと嬉しいと考えているからです。

僕らはメーカー単体で社会を変えられると思っておりません。僕らはメーカー・D2Cブランドとして考えていることを世の中に発信していくことで、社会にうねりの火種を用意して、マクロ的観点で社会に変革を起こしたいと考えています。この記事を読んで下さった方、取り組みに興味を持って下さった方、ぜひ一緒に社会を変えていきましょう。残された時間は多くありません。

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