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カレー

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2018年7月の記事一覧

85. スパイスに味つけという作用はない、は本当か? 問題

85. スパイスに味つけという作用はない、は本当か? 問題

いちばん好きなスパイスはなんですか? と聞かれたら、答えは時と場合によってめまぐるしく変わる。コリアンダーだったりブラックペッパーだったりカレーリーフだったり。ときにはメースだったりする。
いちばん思い入れのあるスパイスはなんですか? と聞かれたら、答えは決まっている。シナモンだ。シナモンは、僕がスパイスに本格的に興味を持つきっかけをくれたスパイスである。

南インドの山間にあるテッカディというス

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84. スパイスの風味は多層構造にすると深まるのか? 問題

84. スパイスの風味は多層構造にすると深まるのか? 問題

スパイスカレーのゴールデンルールを解説するときにずっと「いまいちしっくりこないなぁ」と思っていたことがある。それは、構造の比喩表現だ。
スパイスカレーでは、ひとつの鍋に「香り」と「味」を交互に加えていく。そうすることで風味が重層的になり、結果的にカレーがおいしくできあがるという構造になっている。具体的に言えば、「1.はじめの香り(香り)」→「2.ベースの風味(味)」→「3.うま味(味)」→「4.中

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83. 何も炒めなくてもカレーはおいしく作れるのか? 問題

83. 何も炒めなくてもカレーはおいしく作れるのか? 問題

玉ねぎは炒めないことにした。

今年の新刊でそう書いたら、一部の読者をざわつかせてしまったらしい。そりゃそうだ。これまで僕はスパイスカレーにおける“炒めるプロセス”の重要性について、延々と語ってきたのだから。
強火で焼きつけるように! は、どこへ行った? キャラメリゼは、メイラード反応は、どうなった? 脱水が大事なんじゃなかったのか? こんなことを繰り返していると僕は狼少年になってしまいそうだ。だ

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82. 均質なカレーがいいか、不均質なカレーがいいか? 問題

82. 均質なカレーがいいか、不均質なカレーがいいか? 問題

炒めた玉ねぎと蒸し煮した玉ねぎとでカレーの味にどんな影響があるのかを実験した。僕が新刊で、「玉ねぎは炒めないことにした」と書いたのが多くの人をざわつかせたようで、カレーの学校の卒業生有志がAIR SPICEラボに集まってきて、「水野仁輔だけのおいしいカレー」のレシピを題材に2種類のカレーを作ったのだ。

結果、面白いことがわかった。玉ねぎを炒めたカレーは不均質でとんがったメリハリのある味に、蒸し煮

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81. にんにく5倍のカレーはどんな味になるのか? 問題

81. にんにく5倍のカレーはどんな味になるのか? 問題

「たいていのカレーは、油とにんにくを増量すればおいしくなってしまうだろう」

僕は今年の新刊でそう書いた。こういう言い回しは実はとっても危険で、「たいていのカレーってどんなカレーなんだ?」とか「あなたの言うカレーって?」、「あなたのおいしいって?」などと突っ込みどころが満載。「そんなはずはない」とか「言い過ぎだ」とか「何もわかってない」とか言われてしまうかもしれない。

表現がよくないのかもしれな

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