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娘の成長と代償

先日、新たな助っ人が我が家に登場したことによって、娘のお風呂に対してのモチベーションは最高潮に達している。

そんな娘はついに私に向かって「とっと、一緒にお風呂入ろ!」と誘ってきてくれた。「え?ついに、とっとと入ろう!って言ってくれたの?」先日までは私とお風呂に入りたくないと言っていた娘が、私とお風呂に入ることにノリノリになってくれている。嬉しすぎて、思わず娘を抱きしめる。娘が私を求めてくれる。私は充足感に溢れた。娘は息子とも一緒にお風呂に入りたいと言ってきたので、3人で脱衣場へ。

そして、私はさらなる奇跡に直面する。
なんと、娘は私と息子と自分のパジャマと下着まで、脱衣場に用意してくれていたのだ。これには、驚いた。娘はこれまでお風呂の時、自分の物すら用意したことがなかった。それが、この日はなんと、私たちのものまで完璧に用意してくれていた。恐るべし、娘。2歳でこんなこと誰にもできやしないよ!君は神童だ!(親バカ)

そして、娘は自分で服を脱ぎ、洗濯機の中に服を入れることまでしてくれた。完璧すぎる。いつの間に、ここまで成長したのだ。父は嬉しいよ。私はこの日の娘の姿にとても感動した。これまで育児をしてきて良かった。育児休暇を取った醍醐味というのは、こういった子どもの成長を感じ取れることにあるのだよ、と全世界のパパたちに自慢したくなる気持ちになった。

しかし、私は気づいていなかったのだ。
この成長の陰に、思わぬ代償が待っていることを・・・。



翌日、私は相変わらず体調が悪かったので、2階の寝室で一人休ませてもらっていた。そうすると、1階から妻の悲鳴が聞こえてくる。
「きゃー!なにこれー!」

どうせ、娘が変なことでもしたのだろう。我が家ではいつもの光景である。
私は妻の悲鳴を気にせずに、布団を深く被り込もうとした。その瞬間、

「ちょっと、大変!こっちにきてー!!」

妻からのSOSの合図が入る。本当はこのまま寝静まりたかったが、ここで妻のSOSを無視してしまうと後々にもっと大変なことが待っている。家庭内での最優先事項は妻の要求なのだ。

1階にまで降りてきて、妻に事情を尋ねる。
「どうしたの?何が、あったの?」
すると、妻は洗濯機の中を指差す。恐る恐る、洗濯機の中を覗いてみると、洗濯した衣服にジェル状のぐちゃぐちゃした物体が至る所にくっついていたのだ。

洗濯物に付着する物体。こいつは一体・・・。

「ナンジャコリャー!」
私も思わず、叫んでしまう。

誰かが、変なものを洗濯機の中に入れてしまったのだろうか・・・。
私はこれまでの行いを振り返ってみる。私はこれまでにもズボンのポケットの中にティッシュやボールペンを入れっぱなしにしてしまい、洗濯機を大変にしてしまった前科犯だ。おそらく、妻は私を第一容疑者として考えているに違いない。

しかし、私はこの物体には全く身に覚えがない。私は懸命に身の潔白を説明するも、妻は疑いの表情を向けてくる。もしかしたら、洗濯機の中に、原因となる物体があるのかもしれない。私は妻と洗濯機から衣服を一つずつ取り出してみた。すると、原因の物が現れた・・・。

そう、それは

娘のオムツだ!


なぜ?娘のオムツが入っているのだ?
私は前日の行動をよく振り返ってみた。そして、私と妻は閃いた。

前日、娘は自分の脱いだ服を洗濯機に入れた。
きっと、その時に一緒にオムツも入れてしまったに違いない。

私たちはあの時、娘の成長に見惚れてしまい、オムツが洗濯機に投げ込まれたことに気づかなかったのだ。

なんたる不覚。流石に、娘を咎める気持ちは湧いてこない。
むしろ、あの時に確認をしなかった自分自身を悔いた。

世の中には光の部分と影の部分がある。
いくら良いことがあるからといっても、裏を返してみると何かしらの弊害があるものだ。かつてイギリスで起きた産業革命も社会を便利にした一方で、大きな社会問題を生み出したではないか。

私は娘の成長した光の部分しか見ていなかったのだ。
自分の視野の狭さを悔い改めながら、洗濯物に付着した物体(ポリマー)を何度も何度も外で払い除けた。

これからは、用心深くオムツの行末を確認すると心に誓った。


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