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一枚の自分史:私の道楽は読書会

 2013年6月、当時63歳、全国一斉に行われた読書会があり、そこでファシリテーターしたのが私の道楽の始まりだった。
しつもん読書会と銘打った読書会はコーチングと9マスの回答シートを用いたものだった。これまで経験していないけれど、なぜか「この感じが懐かしい」と感じていた。
 子どものころから自他ともに認める読書好き、読み始めると周りの音が聞こえなくなった。それまで読書とは圧倒的に一人の世界のものだった。それが、「こんなに共有することが楽しいのか」と目覚めた。

 それからは、読書仲間のコミュニティを作りたくて、難波のレンタルスペース、秘密の地下室、府大のI-site、友人のお寺やセラピィルームなど継続してやり続けた。
 どこか定点で定期開催したいと京橋で始めた。そこは、サラリーマンのために開業したばかりのサードスペースで、とてもいい条件で場所を提供していただいていた。それ故に結果を求められた。夜のゴールデンタイムからは撤退を申し出た。集客できないと心が折れて自分の存在まで揺らいでしまう。開催するのが苦しくなった。大好きだった読書会が嫌になった。

 迷っていたある日、本を探してなんばパークスにある書店にいた。隣接したカフェでは書店の本が試読ができるようになっていた。お目当ての本とホットコーヒーを買って座ると3時間が過ぎていた。質問を通じて深い内観の時間を過ごした。
 ここでやろう、もし集客できなくても、一人で読書し、一人でしつもんに答えるという豊かな時間を過ごせばいいんだ。
 「一人からしつもん読書会」は本が好きで、本の話ができるところが欲しくて、読書会をしたくて、ただ、それだけだった。
 ファンつくりだなんて、コミュニティつくりだなんて、集客への導線だなんてことも思っていなかった。ただ、本のお話をしたいだけだった。
 だから、一人でもいい、一人で本と語り合えたらいい。そんなつもりでやり始めたら、「次はいつやるのですか?」と問い合わせが入るようになっていた。一人からでもやっていくという「一人から」に勇気を得てくださって一歩を踏み出した方もいらっしゃった。有難いことだった。

 2017年の6月第一火曜日の朝から難波のタリーズコーヒーに場を移した。軌道に乗ったので、会社勤めの方からのリクエストで10月からは第4金曜日の19時から「夜も一人からしつもん読書会」をスタートした。
 地元の堺市では老舗の本屋チェーンが倒産して、身近な場所から数軒の本屋が姿を消した。地元から本屋がなくならにように、JR堺市の本屋に人が集まるように応援したい。第3土曜日の午前中も「土曜日も一人からしつもん読書会」を始めた。「読書会が好き過ぎて月に3回やっています。これはもう道楽です」と居直ることにした。
 
 その翌年、大きく体調を崩して、キャリアカウンセラーの仕事を辞めることを考えるきっかけになったことがあった。絶不調の中で今後の仕事をどう継続していくか、その中でこのしつもん読書会をどうするかも考えることがあった。
 何故やっているのだろうか。何かを叶える手段でもないことは確かである。ただ本が好きだから、ただ誰かと本の話で盛り上がりたいから続けることにした。
 
 本を読むということは著者と一対一で向き合うことでもある。本を読む前に質問の答えを探してから読み始める。そうすることによってより理解が深まり腑に落ちる。質問はどんどん出てくる。答えは、即答できることも、まだまだ掘り下げる必要のあるものもある。答えは必ず自分の中にある。
 しつもん読書会ではそれぞれの課題にみんなで答え合う。だから優しい時間となった。他者のテーマを自分事として捉えるのだが、それは他人事ではなくて、不思議なことに自分事でもあることにそれぞれが気が付く。人は合わせ鏡だとつくづく思う。
 新型コロナ感染症でリアルで開催できなくなっても、細々とオンラインでも続けてきた。オンラインがあって繋がったご縁もある。
 質問で何かが変わる瞬間を見ていたい、人が変わっていくのを見ていたい。「あ~そうか~」あの嬉しそうな顔を見ていたい。
 できたらこの世をお暇するその前までやっていられたらいいなと思っている。この道楽は私の人生には欠かせないようだ。

 3年前に「ツナグ」というkindle電子版同人誌(旬刊)を発刊し、2022年この9月に13号を重ねた。一人から始まった読書会はしつもんで繋がる読書仲間のコミュニティとなった。「しつもんで繋がる読書会」と名を改めた。

 今後もコロナショックやポストコロナで先の見えない世界は続くのだろう。これからもオンラインとリアルを各月交互に開催していくのがいいかと思っている。
 課題本を扱ったり、テーマを設けたり、自由であったり、面白そうなことを企てて開催したい。これまでやってきた「著者を囲むしつもん読書会」や「旅するしつもん読書会」も開催したい。どこかの町の面白い本屋さんや宿で開催する。そんなことを考えてはワクワクする。

 ちょうどいいタイミングで人にも本にも出会う。私はエモーショナルな日々を過ごしている。読書会、同人誌というカルチャーが各世代の人々にとってメジャーとなる日を夢見ながら続けていこう。
 「出会いこそがセラピィ」とは、読書会で飛び出した名言である。

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