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週刊小売業界ニュース|2024/1/22週

2024/1/22週(1/20-1/26)にピックアップした小売業界ニュースをお届けします。今週のおさらいにぜひどうぞ!


出店で売上5倍に!中川政七商店、工芸メーカー向けECモールの仕組みとは | DCSオンライン

中川政七商店は、工芸品のSPA業態を確立し、全国に直営店を展開。2023年10月、工芸特化ECモール『さんち商店街 Selected by 中川政七商店』を開設し、出店ブランドの売上を増加させた。このECモールは、メーカーが制作費を支払い、商品を掲載。売上の7%を利用料として支払う。中川政七商店はメーカー支援に力を入れ、ECサイトと実店舗での販路拡大を目指している。

担当者による要約

工芸品を中心に、SPA業態(商品開発・製造・流通・小売を自社で管理・運営すること)で事業を展開している、株式会社中川政七商店。

現会長の中川淳(13代 中川政七)さんは、日本の工芸産業が斜陽している原因のひとつに、供給者である工芸メーカーが、会社としてきちんと経営がなされていないことを指摘しています。

動画のなかで、工芸メーカーが取り組むべき経営の要素として、具体的に以下の2点を言及されています。

  • 経営ビジョンに基づく、工芸品のブランドマネジメント

  • 収益体制の構築(まずは黒字化!)

上記の記事で特集されているECモールを活用することで、工芸メーカーは2つの経営課題に対処するサポートを得ることができそうです。

まずブランドマネジメントについて、工芸メーカー自身はサプライヤー視点でのビジョンを描くことはできるかもしれませんが、買い手目線に立って、ポジショニングや長期戦略を立てることは難しいでしょう。

自社の伝統工芸は、どこに他と違った良さがあるのか、それをどのように顧客に浸透させてゆくのかといった点に対して、目利きのプロである中川政七商店の視野をダウンロードすることができます。

収益体制については、利益率の改善と顧客分析という2つの面からメリットが得られそうです。

まず中川政七商店のECモールが新たな販路の柱となり、供給量(=製造業)が増加することで、多少なりとも規模の経済が働き、利益率の改善が見込めるでしょう。
そして、これまでは専ら商社や小売業者に委託していた販売面に関しても、このECモールを活用することで、顧客と直接にコミュニケーションできる機会や、顧客データの取得が可能となれば、収益のある価格帯で売れる顧客セグメントの探索や販促を、より効果的に実行できるようになります。

韓国│大型マート、義務休業を週末から平日に変えるだけでいい? 「年に24日休まなければならない事実はそのまま」

韓国政府は、大型モール・スーパーの義務休業日を、土日ではなく平日に設定できるようにすると共に、店舗が閉鎖する時間にもオンライン配送が可能になるよう法改正を推進。しかし業界側からは、「依然として365日の営業が可能なEコマースに比べて2日を無条件に休まなければならない」との不平不満の声が聞かれる。

担当者による要約

韓国では、大型スーパーマーケットの顧客誘引力から、地元の小売店を保護することを目的に、2012年に流通産業発展法を改正。
以来、大型スーパーは月に2回、消費量の多い日曜日・祝日に義務休業しなければなりませんでした。

しかし近年の調査によると、日曜日・祝日に義務休業を行わなかったとしても、地元小売店の商売が妨げられるわけではない、ということがわかってきました。

韓国で人口第4位の大邱広域市では、務休業日を第2・4週の、日曜日から月曜日に転換したところ、大型モール・スーパーの売上のみならず、地域小売業の売上も上昇が確認されたとのこと。

あるソウル市議会議員は、

大型マート規制の最も大きな目標は地域の小さな店と伝統的市場の活性化だったが、現実は消費パターンが変わってオンラインを主軸とする無店舗オンラインマート、オンラインショッピングモールなどのeコマース市場の拡張につながっただけだった

韓国・伝統市場守る「大型マート義務休業」…でも市場の消費支出は大きく伸びず

と分析しています。

政府が、大型スーパーvs.地元小売店という構図から、オフラインvs.オンラインという構図への変化を認知し、義務休業日の改正を推進している形です。

しかし規制緩和を受けたといえる小売業者たちですが、365日営業が可能なEコマースに比べて、年24日を無条件に休まなければならないのは不公正だとし、政府にさらなる踏み込みを希望する声は、依然として多い状況です。

BYD、ランボルギーニを意識したデザインのEVを富裕層向け市場に投入で、テスラに挑む - WSJ

https://www.wsj.com/business/autos/a-lamborghini-style-ev-byd-goes-upmarket-to-outmaneuver-tesla-2b698578

世界最大のEV市場である中国において、テスラを含む米自動車メーカー1台に対して5台を販売しているBYD。同社はEVの多様なモデルを展開し、20を超えるポートフォリオで、顧客のほとんどの好みと予算に対応可能。また中国にとどまらず、タイのEV市場でもトップとなったことに加え、オーストラリアやイスラエルなどでも急速に拡大中。また長期的には、欧米市場での販売拡大も狙い続けている。

担当者による要約

世界のEVの約3分の2は、中国メーカーにより製造されています。
中国最大手BYD(比亜迪)は、2022年に米テスラの生産台数を上回り、また2023年には300万台を突破、世界の自動車販売台数トップ10にランクインしました。

海外市場への進出も顕著です。
例えばEU市場において、中国からの輸入車に対して10%の関税をかけているにも関わらず、中国製EVシェアは1%から8%にまで上昇しています。

中国企業の進出に、欧米各国は産業保護の動きに出ています。

バイデン政権は2023年12月、中国やロシアなどの資本が25%以上を占める企業等が生産した蓄電池が使われたEV車は、2024年より税額控除の対象外とする指針を示しました。(出所:NHK News Web
またEUでは、フォンデアライエン欧州委員長による2023年9月の方針演説にて、中国政府の補助金により中国製EVがEU製より20%ほど安く販売されており、EUが競争で不利に立たされていると主張。関税を引き上げるかどうかの調査を開始したと発表しました。(出所:ロイター通信

世界規模での脱炭素に向けた取り組みにおいて、EVシフトを加速させるために、低価格化は本来ならば歓迎されるはずです。
アメリカ・EUが自国の産業保護を優先する動きを見せていることに、それぞれの現地でも批判の声があげられています。

しかし日本は、このEV合戦を、中国 vs. 欧米各国として傍観を決め込むことはできないでしょう。

前述のバイデン政権が発表した税制優遇の適用除外には、実は日産リーフも含まれています。
経済連携の枠組みにあっても、いつ輸出先各国の購入支援の撤廃や、関税上乗せの対象とされるのか、注視する必要があります。

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