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【警告!】TSMC拡張プロジェクト熊本に来たらどうなる?

先日の記事で、台湾での高雄市、中部科学園区、新竹科学園区、南部科学園区のTSMCの拡張プロジェクトにストップがかかり始めていることをご紹介した。

今回は、もし現在建設中のTSMC熊本工場(JASM)に加えて、その拡張プロジェクトが丸ごと熊本にやってきた場合、どれくらい負担がのしかかってくるのか、台湾のメディア、新新聞の記事の内容をもとに考えてみたいと思う。


エネルギー負担の増加

台湾の新新聞によると、高雄の工場新設、中部科学園区、新竹科学園区、南部科学園区の工場拡張によって、4カ所合わせると336万kWの増加となるという。
特に、高雄の新工場は規模が大きいため、126万kW増加する。

これは、台湾の原子力発電所1.7基分の増加である。

熊本にこの膨大な電力消費をする拡張プロジェクトがやってきたら・・・
今建設中の熊本工場の電力消費も膨大なので、九州の電力負担はかなりのものになると思われる。

TSMCは既に台湾の再生エネルギーの98%を使用しているという。それでも足りずに火力など、他の発電方法による電力も膨大に消費している。

半導体製造には、再生可能エネルギーの不安定な電圧は不向きなのでは?と思った方もいるだろう。
TSMCは、工場の近くに必ず高圧変電所を設置して対応している。

TSMCが再生エネルギーの大量消費をしていることで、台湾では、発電所の予備能力があるにも関わらず停電が頻発している。原因は、再生エネルギーの場合蓄電システム無しで大量の太陽光発電を系統連系すると、昼間に発電量が増えすぎて「棄電(大量の電気が捨てられる)」という現象が起こり、夕方になると大量の電気が消え、「ダックカーブ」となり、他の発電方法で補うようになるためだ。

熊本はどうだろう。TSMCの工場のために阿蘇山に真っ黒なメガソーラーが大量に設置され、美しい風景が消え失せてしまわないことを願う。

そして、再生エネルギーの発電効率が下がるたびに停電が発生する事態にならないかと心配が募る。


地下水の大量消費

TSMCは製造の過程で、洗浄のために膨大な水を利用する。

新新聞の記事によると、現在のTSMCの水の消費量は一日19万トン、年間で6,935万トンの水を使用している。
そして台湾の環境影響評価報告書によると、拡張プロジェクトによって水の消費量は倍増し、一日最大42万トン、年間1.5億トンになるようだ。

つまり、一日あたり23万トン、年間8,395万トン増加する計算だ。

熊本のTSMC工場は70%の水をリサイクルしていくとしているが、それでも一日1.2万トンの地下水を汲み上げ、年間約438万トンの地下水が使われることになるという。

もしもこれに拡張プロジェクトが加わった場合、一日24.2万トン、年間8,833万トンの地下水を消費することになる。
言葉が出ないほど膨大な量である。

台湾では、2020年に台湾で起こった干ばつの際、企業を優先する政策によって農地の灌漑がストップし、農業に水が回らなかった。半導体のためにコメを捨てたといわれている。


TSMCの電力や水の利用に関して、台湾では他産業や国民、農民や元内政部長官などからも批判が上がっており、拡張プロジェクトを海外に移す計画が持ち上がることも不自然なことではない。


計り知れないほどの環境汚染

新新聞では、「半導體業不能說的秘密:那些連專家都沒聽過的毒物,如何影響健康和環境?(半導体業界が言えない秘密:専門家さえ聞いたことのない毒物が健康と環境にどのように影響するのか?)」という記事が掲載されている。

半導体を製造するには数多くの化学物質を使用し、非常に有毒であることは否定できない事実である。半導体製造の工程は大変複雑であり、工程ごとに異なる化合物を必要とするため、その数は数百種類に及ぶこともあるという。半導体を洗浄・エッチングするために使用される溶液や化学物質は、人体に非常に有毒である可能性があるため、特に注意が必要であるという。

そして恐ろしいことに、製造工程で使用される有害化合物は半導体業界から開示されておらず、技術の保護を言い訳に秘密にしているという。

TSMC熊本工場では、工場から排出される汚染水は、菊陽町の下水道を通って熊本県の北部浄水センターに一旦溜められ、県の中心を流れる坪井川に流され、有明海へと流れていくという。県によると、汚染水の調査には下水道法が適用されるというが、下水道法の調査品目数はわずか28品目である。

TSMC熊本工場(JASM)の工場稼働だけでも多大な環境汚染と健康被害が予想されるのに、拡張プロジェクトがやってきたら死活問題である。

熊本県の担当者たちは、「TSMCの環境汚染や健康被害に関する情報は出ていない」と口を揃えるが、実際は現地メディアやニュースでたびたび報道されている。
新新聞の報道によると、台湾では、政府が率先してTSMCが環境評価を回避できるよう、抜け穴を利用している。
TSMCの環境汚染は国家ぐるみで隠蔽されてきたのだ。
台湾政府機関経由で情報が上がることはないだろう。


建設中のTSMC熊本工場(JASM)によって、熊本県民の生活と健康、そして環境汚染は危機的な状態になるが、これに拡張プロジェクトまで加われば、壊滅的な状況である。
熊本県に水俣病のような悲劇が繰り返されることがないよう、情報を周知し、アクションを起こす必要があるだろう。


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