見出し画像

『江戸の粋』 422字


こちら、花のお江戸の裏長屋。
ご亭主さん達が朝から何やらボヤいております。

「いや〜春だってぇのに冷えるねえ」
「ああ、こんなことなら綿入れじゃなくて、かかあを質入れするんだったぜ」
「ちげぇねえ」
「もっともウチのは人三化七。三文でも有り難えってもんだ」
「ちげぇねえ」

「何だって!?おまいさん達、聞き捨てならないねぇ!!」
と激怒する、おかみさん達。


かくして家から褌一丁で追い出され・・・
こうなりゃ自棄だと、土手の花見と洒落込むも・・・

「あれまぁ、なんだねえ」と、通りすがりの野次馬に嘲笑されるされる。

「べらんめぇ!こいつぁ『花冷え全員集合』ってえ粋で新気な遊びあすびさね」
「おうよ。涼しくていっそ気持ちが良いぜ」
嘯いたは良いが、その後は全員が仲良く風邪っぴき。

「馬鹿でも風邪はひくときゃひくもんだ、馬鹿」
と藪医者にまで怒られ、踏んだり蹴ったり。

藪にまで「馬鹿」と言われる馬鹿の風邪
言うほどに粋でもなし花の冷え

お後がよろしいようで・・・。

<了>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
拙作、お読み下さり有難うございます。
『たらはかに』さんの企画に応募させていただきます。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

やってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?