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「名言は好きです。でも、名言を言おうとする人は嫌いです」by タモリ

書籍 絶望名言
以前書評で読んで、欲しいと思っていた本。
タイトルにひかれて購入。
名言は名言でも絶望だ。

名言といえばたいがいは前向きで、背中を押してもらい、目線は上前方を向き、決して振り返らず、キラキラした言葉のことを指しそうだ。この本で紹介されている名言の数々は、それらとは真反対の闇の深いものだ。

なんでもNHKラジオ深夜便の月1コーナーを書籍化したものだそう。
アナウンサーの川野さんとともに名言を紹介するのは頭木弘樹さんという方。曰く、

「絶望名言、おかしなタイトルですよね。でもたとえば失恋したときには、失恋ソングを聞きたくならないでしょうか? それと同じで絶望したときには、絶望の言葉のほうが、心にしみることがあると思うのです」

書籍の はじめに より

確かに。

これらを解説するのは文学紹介者こと、頭木弘樹さん。二十歳の時に難病になり、十三年間(!)闘病生活をされたという。ラジオ出演されているということは、完全ではないにしても回復された証。ラジオもぜひ聞いてみたい。だが放送は午前4時台なのでまだ聞いたことがない。

書籍で紹介されているのは、カフカ、ドストエフスキー、ゲーテから太宰治、芥川龍之介、シェークスピア。そして中島敦、ベートーヴェン、向田邦子。さらには川端康成、ゴッホ、宮沢賢治にいたるまで多彩な顔触れ。作家たちの苦悩、悶絶にあふれている。

例えばひとり目のカフカでは、こんな「絶望名言」が紹介されている。

ぼくは人生に必要な能力を、
なにひとつ備えておらず、
ただ人間的な弱みしか持っていない。
無能、あらゆる点で、しかも完璧に。

身も蓋もない。冒頭からこんな感じだ。

芥川龍之介の項では、

どうせ生きているからには、
苦しいのは、
あたり前だと思え。

とある。一切皆苦、まるでブッダのようだ。やっぱり生きるのは大変なことなんだな。そう思うと、生きている自分らは、日々偉業を成し遂げているという「前向きな」気持ちになれないこともない。

この本、各人の絶望名言が5~7句くらいずつ紹介されている。相当な難儀、辛酸の漂うことばばかりなのだが、読み進めていくとなぜか希望も感じられてくる。このあたり、やはり今、生きているからこそ。

解説してくれる文学紹介者、頭木さんの「生きざま」によるところも大きい。

蛇足 以下、タモリの名言。
「名言は好きです。でも名言を言おうとする人は嫌いです。」

同感。


絶望に満ち溢れている・・・けれど!


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