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オスの異形は、性淘汰の結果

<概要>
環境で説明できない生物の特徴は殆どが性淘汰で説明可能とし、人間においてもこれは同じで、人間の脳はクジャクのオスの尾羽と同様、異性を魅了する能力の副産物だとして、生物学的なオスとメスの違いの延長線上としての人間の本性を解明した書籍。

本書は、訳者の人類学者長谷川真理子さんも「名著」と称賛しているように、記すべき内容が盛りだくさんなので、何回かに分けて展開予定。

<コメント>
NHKの動物番組(ダーウインがきた、ワイルドライフ)や英国BBC作成のプラネットアースなど、動物番組が大好きで繰り返しみていますが、性淘汰による動物の異形は動物番組でより実感できます。

本来生き物は環境に適応してその姿形を進化したと言われていますが、明らかに環境適応的に「おかしい」と断言できる異形があります。

よく取り上げられるのは「オスのクジャクの尾羽」。クジャクの羽は生きていくには全く不要。むしろ動くのも邪魔で、何よりも捕食者に見つかりやすい、見つかっても逃げにくい、という点で明らかに環境的に不適応。

それでもクジャクのオスが立派な尾羽を自慢げに保有するのは、立派であればあるほど、メスを惹きつけるから=交尾ができるから。

<スリランカ、ヤーラ動物公園にて撮影>

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オス鹿の巨大な角も同じ。

以下は南アフリカの希望峰でみたバンクボックという鹿の仲間。

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明らかに大きなツノがメスとの交尾の優先権があり、同じぐらいの大きさの場合は、ツノを使っての喧嘩によって優先順位をつけます。


北極海に生きる海の珍獣イッカクの角もそう。より大きな角(前歯が突出して大きくなったものです)を持つオスが、メスとの交尾の優先権を保有するらしい。

<ナショジオより借用>

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このように、一見環境適用的に不要どころか、生存するには明らかにハンディキャップな生き物の形質は、殆どが性的に優位に立つための形質。これはメスがオスを選ぶ際の基準に大きな原因がああります。

メスは出産する回数には限界があるため、より生命力の強いオスを選ぶ必要があります。

オスの異形は、生きるのに無駄なものであればあるほど、個体としての生命力が強い(=子孫繁栄の可能性が高くなる)とメスから判断される根拠となるのです。これが性淘汰。

オスとメスの根本的違いに関して、訳者長谷川さんあとがきにて曰く

オスとメスは繁殖に関する利益と損失の質が大きく異なる。そのすべてはオスが生産する精子は小さくて数が多く、雌が生産する卵は大きくて数が少ないという、元々の配偶子のアンバランスに端を発する

より多く自分の遺伝子を残すため、オスはより多くのメスと交尾するという戦略を選び、メスは一生のうちの妊娠回数には限界があるために、より質の高いオスを求めるという戦略を選んだのです。つまり、

オスはより多くのメスを求め、メスはより質の高いオスを選ぶ

というセオリー。

したがってオスとメスに違いがあるのは当然であり、特に人間に関しては差異なのか、差別なのか、をきちんと区別することが大事だと著者(訳者も)も主張していますが、より興味深い人間ならではの特徴は追って展開します。

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