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クロスカントリー大会

この日は神奈川県、葉山市にある池子海軍基地を訪れた。

9月になるとインターナショナルスクールの生徒によるクラスカントリーのシーズンが始まる。

シーズン前に指導していた生徒たちの応援、そしていつもの日本の大会とは少し異なる雰囲気を感じるのも兼ねた観戦だ。

欧米でもマラソン大会は人気である一方、学生がロードレースを頻繁に走ることは少ないようだ。春はトラック、秋冬にクロスカントリーを走る。


長距離走には大きく分けて3つのレースのスタイルがある。トラックレース(陸上競技場の

400mを主に使用)、ロードレース(公共の道路を走るマラソン大会)、そしてクロスカントリー(不整地を走る)だ。

市民マラソン、駅伝など馴染みのあるのはロードレースだと思う。今では日本全国多くの地で様々なマラソン大会が開催され気軽に参加しやすくもある。


トラックレースとなると競技志向が強いように感じられ、一般の人からはあまり馴染みのないものかもしれない。陸上競技として認知され、そこには短距離走、投擲、跳躍と行われる種目は様々だ。そのせいもあってかトラックレースはレベルの高い人たちが参加するものと考えられがちだ。

しかし現在では誰もが参加できるトラックレースも増え始めている。トラックレースに参加するわけでなくとも競技場の400mトラックを利用して練習する人たちも少なくはないだろう。


そして不整地を走るクロスカントリーがある。

名称は聞いたことがあってもレースを観戦したことがある人は少ないと思う。

私自身も学生時代に数回走ったことはあるが、メインとしてやったことはない。

日本では大きくトラックシーズン、ロードシーズンと区切られ、春から秋にかけてトラックレース、冬にロードレースを走るのが一般的だ。

学生の陸上も基本的に流れは同じになる。


人によって好みは異なり、グルグル回るトラックが苦手な人、走り進む中で景色の変わるロードを好む人、アップダウンなど変化に富むクロスカントリーを避けたがる人など様々だ。

しかし同じランニングであるため、速い人はどれを走っても速い。


基地内を進み会場に着くとすでにウォーミングアップを始める生徒たちが目につく。チームで一緒にジョギングを行い汗を流す。そこには日本人、ハーフ、外国人と様々な人種が混ざりあう。

会話を楽しみながら和やかな様子だ。

中学生の男子、女子、高校生の男子、女子の順でレースは進む。

スタート前には各学校が円陣を組み気合いが入る。この点は国の文化に大きな差はないようだ。

スタートの号砲が近づくと先ほどまでの騒つく雰囲気とは一変して会場が静まり返る。
号砲と共に一斉にランナーが飛び出す。

最初はやや下り基調のアスファルトの道を進み、数百メートルで折り返すと小刻みなカーブ、アップダウンを含んだ芝生の中へ入っていく。

木の間をすり抜けながら根っこなどか飛び出る足元の凹凸にも注意を払う必要がある。


混み合う集団を避けるために、極力走りやすい位置を走るため、必ずしも最短ルートがいいとは限らない。色々と神経を使いながら走らなければいけないようだ。


コース上では各学校の生徒がランナーに声をかける。

「Go 〇〇」「Keep going, Keep pushing」


大きな声援が響き渡る。


今回のクロスカントリーも個人レースではあるが、チーム戦でもある。基本的には通常のレースと同じように参加者みんなが一斉にスタートして競い合い個人の順位がつく。

1位が1ポイント、2位が2ポイントというように個人の順位がチームへのポイントとして換算される。各チーム上位5人のトータルポイントが少ない順に順位がつけられる。

そのためそこにはチームとしての一体感が生まれる。苦しくなった時に手を抜けば順位が下がる。その結果としてチームに影響を与えるためラストスパートの争いは上位だけでなく至るところで行われ一つでも順位を上げようと競り合いが行われる。

これらのポイントを競い合うチーム戦でもあるのだ。



ランニングはタイムによって自身の成果が分かりやすい。記録が伸びていくのは面白いものだ。これは誰にも共通するものだと思う。競技志向や速くなるために走ってなくても、いつものジョギングコースをより速く走れるように越したことはない。

上手にタイムを使うことで成長を実感し、ペースをコントールしていい練習をするのにも役立つ。

しかし人の成長とはそうシンプルなものでもない。自己記録で走れるかどうかは天候や気温なども大きく影響するし、個人の体調は流動的に変化するものだ。そのため走力は上がっていても必ずしも記録が更新できるわけではない。

タイムにこだわりすぎるあまり、目標のタイムで走れるか走れないのような思考に陥りがちになる。そのためタイムだけで練習やレースの良し悪しを決めつけてしまうと嫌気がさす。

タイムをどう使うかは個人の状況によって考えるしかない。


クロスカントリーではコースの特徴でゴールタイムは大きく異なる。路面にぬかるみがある、アップダウンが激しいなど、同じ距離でもコースが変わればゴールタイムが数分速くなったり遅くなったりもする。そのためタイムの比較はあまり重要ではない。

タイムにこだわりすぎず、その時の状況に応じて自分の力を出し切ることに集中する上ではクロスカントリーはうってつけかもしれない。

タイムを求めるのが良い悪いではなく、練習でもレースでもタイムを上手に用いて役立てることが大事だ。


ゴール後には各ランナーが互いに健闘を讃えあう。学校のレースのいいところは何度か繰り返すうちに、毎回近くでゴールする他校の生徒と顔なじみになるのも珍しくない。


次のレースでは今回少し前でゴールした選手について行ってみよう、などレース後にはいろんな思惑がそれぞれあると思う。もちろん「もう走りたくない」なども。

10月の最終週にかけてほぼ毎週のようにレースは行われる。

アジア圏内のインターナショナルスクールが集まるレースもあり、バンコクやグアム、香港などそれぞれの会場で開催されている。

競技を通していろんな国を訪ね、競い、知り合うことができるのはうらやましく思う。

ランニング(自分が走らないにしても)を通して旅に出る、外の世界を知る。それが私の楽しみでもある。
そんな気づきを改めて感じた一日。

日常からの学び、ランニング情報を伝えていきたいと思います。次の活動を広げるためにいいなと思った方サポートいただけるとありがたいです。。