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Happy Friday

遠い昔、恋に恋していた頃、6月18日が金曜日だったあの日…
わたしは大好きだった彼の車の助手席にいた
恥ずかしさで真っ赤な顔はうつむいたまま、膝の上で固くbagを握りしめて

やっとの思いで取り付けたデートの約束だったのに…
なのに、髪型はいまいちだし、服もダサいし、あ〜全部!
罪悪感と羞恥心でいっぱいだった

「なんでオレ?」ちょっとやんちゃな彼は微笑む
(そうだよね…わたしみたいな地味な子、興味無いよね…)
いつも自販機の前ですれ違う、豪快に笑う、そんなあなたに恋したの

『恋は盲目』…よく言ったもので、流れる汗も埃まみれの作業着も
わたしには輝いて見えたし、青春の落書きのようで眩しかった
いつもの時間、いつもの場所で、・・・知ってた? まちぶせしてたこと

頑張って、精一杯のおしゃれして、だけど髪型イマイチで
友達に綺麗にお化粧してもらっても、眼鏡は外せなくて
気の利いた大人びたセリフなんかも持っていない、ダメなわたし

(でも、来てくれた…)
それだけでもう満たされて、一緒にいられるだけでしあわせで
その先の会話や成り行きなんて、考える余裕もなかった…

思いつきじゃなく、もっとちゃんと計画してから誘えばよかった
せめてマユミちゃんに相談して、意見を聞いておけばよかった
(とにかく、この次会う時は、もっとちゃんと準備しよう…)

車に乗って嬉しさを噛み締めるもつかの間、頭の中を駆け巡ったのは
突発的行動への自分の言い訳と、まだありもしない次の約束
そして『ドキドキ…』、そして『そわそわ…』、気持ちばかりが跳ねる

「アンタみたいな真面目そうな人、オレなんかに声かけると思わなかった」
せっかく話をしてくれているのに、頷くのが精一杯だった
ゴメンなさい・・・たくさん話をしたいのに、緊張で声が出せない

誘う時は必死で…(何を言ったか覚えてないけど …)あんなに勢いがあったのに
来てくれたのに、何も言えなくなるなんて、サイテーだよね
「ごめんね…(わたしなんかのために…)」

ホントは「ありがとう」って言えたらよかったのに
でも「ごめんね」って、なんだかその一言ですべてを台無しにしちゃった
ネガティブすぎて、楽しむことより申し訳ない気持ちが大きくて

わたし、あなたが好きです…! こんなにも大好きなのに!
何も言えなくて、あなたはそれでも優しくて、・・・遠く、もどかしい
あの時の自分が一生許せない! 情けなくて、臆病で、無様なわたし

「オレ、最近彼女と別れたばかりで…あんま考えらんないんだ…」
そう言ってポツポツと自分の話をしてくれた
バカで、惨めでかっこ悪い男の話…嬉しかったけど、聞きたくなかったよ

バカで惨めでかっこ悪い、そう言ってるあなたはとても潔くて
ちっとも惨めでも、カッコ悪くもない男気のある横顔だった…
涙をこらえた胸が筋肉痛になるほどに、切なくしめつけられました

結局わたしは、あなたを正面から見ることも出来なくて
少しさみしげに遠くを見る目をした横顔を、胸にやきつけるだけに終わった
それでも素敵な時間だったの…Happy Friday…ほろ苦い恋の思い出

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです