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ネコのT子からの手紙

あたし、ネコのT子です。
南の土手にね、ちょうどいいくぼみがあって
今はそこに住んでます。

最近は近所のマキオさんとこのクヌギ林へ
椎茸の駒打ちのパートに行っています。
お気に入りの手提げバッグの中に、おやつのいりこと
駒打ちに使う大切な平べったい石が入っています。
クヌギ林につくと、マキオさんがもう既に何本も
カットして積まれたクヌギの木にドリルで穴を開けています。
それで、あたしも急いで手提げバッグから駒打ちの石を取り出して、
クヌギの穴に、椎茸の駒をタンタンタン、タンタンタンと
リズミカルに打ち込んでいくんです。

クヌギ林の中はちょっと暗いけど、晴れた朝には冬のお日様が
やわらかく、さし込んでくるのがとってもステキでね、
地面の霜がじんじん溶けて、まわりの空気もホッとあったかくなるんです。
たくさん積まれたクヌギの木のまわりで、椎茸菌の精が、
「ガンバレやっほ♪ガンバレやっほ♪」と応援してくれます。

マキオさんもあたしも、黙って仕事をして、お昼のちょっと前ぐらいに
一緒にお茶を飲みます。
マキオさんはしいたけ茶で、私はいりこティーです。
マキオさんはね、口数がとっても少ないけど、いつもこうやって
おいしいお茶を用意してくれるんです。
ユラユラのぼっていく湯気を見ながら、2人で心地よく黙ってお茶を飲むんです。
それからまた黙々と、椎茸の駒を打って、街の方からお昼の音楽が流れてきたら「お疲れ様でした」と言って手提げバッグをさげて、また南の土手に帰ります。

もしも、あなたがクヌギ林に来ることがあったら、
苔の座布団と、おやつのいりこも用意しておきますね。

                  ネコのT子 より


↑椎茸菌の精たちです


熊本の小さな集落で、ひょうたんを育てながら、 「お話とらんぷ」をテーマに、ひょうたんの らんぷをつくっています。 イヌ、ネコ、山の暮らしの風景と、 らんぷのことを、 少しずつ書きます。