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手が離れていく日々を噛みしめる

 土曜日。長女と次男の3人で、買い物ついでに散歩。長男はゲームがしたいからお留守番。
 持ち物は財布、ハンカチ、エコバッグ、ハンドクリーム、文庫本。

 途中で公園に立ち寄った。
 ふたりが満足するまで、ベンチに座って本を読む。

 すぐそばを、小さな男の子が走り抜ける。それを母親が追いかける。
「まてまて〜!」というお決まりのセリフに、男の子は満面の笑みで甲高い奇声を上げながら、たまに後ろを振り返って、また走りだす。
 母親は子どもを追いかけつつ、定期的にベンチに置いた大きなバッグからお茶を取り出して、子どもに飲ませる。

 数年前まで、私も同じように大きな荷物を持って、子どもを追いかけていた。
 本気の勝負がしたい長男。
 負けたくないから手加減してほしい長女。
 負けたくないけど手を抜いてほしくない次男。
 それぞれの欲求に全力で応えてきた。

 今、長女と次男を見る。
 気がつけば、歳が近い子たちと鬼ごっこを始めていた。本を読みながら耳をそばだてると、どうやら初めましてらしく、お互い名前も知らないようだ。それでも最低限のルール確認は済んでいる。

 遊具で遊ぶために必要な身体能力。安全確認。他者とのコミュニケーション。遊びを楽しむための創意工夫。
 母親である私が担っていた役割を、子どもたちは自分でこなせるようになっている。本当に楽になったものだ。

 子離れは寂しい、と聞くけれど、今のところ、私はその寂しさをあまり感じたことがない。
 むしろ、会話がスムーズになったり、いっしょにできることが増えたり、プラスの面が多い。
 留守番ができるようになったから、長男みたいに自分だけの時間を過ごしたいという意思も尊重したい。帰ったら今ハマッているゲームの進捗を聞くのが楽しみだ。

 小さな手を握っていた日々から、大きくなった手が少しずつ離れていく日々へ。
 しっかりと噛み締めて、彼らの成長をベンチから見守り続けたい。

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