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自分で作る元気の素

 私にとってスーパーの野菜売り場は、買い出し中のテンションが決まる重要な場所だ。葉野菜の価格が高騰しているときは肩を落とし、旬の野菜が棚いっぱい並ぶと口角が上がる。

 今回は後者だ。いつもは4等分にカットされるかぼちゃが、今日は丸々1玉で売られていた。量り売りじゃないのでなるべく大きいものを選んで両手で抱える。しっかりとした重みに目利きが成功したとしたり顔。マスクをしていてよかった。

 頭の中に友人から教わったレシピが浮かぶ。明日の朝ご飯はトーストとパンプキンスープに決まり。ビックゲストをカゴに座らせ、お供となる玉ねぎと牛乳を迎えにいく。

 夕暮れ時、晩御飯用の野菜たちと同じタイミングで、かぼちゃにも包丁を入れる。分厚くて立派な皮で中々刃が進まない。包丁の背に手を当てて体重をかけると、観念したように真っ二つになってゴロリと転がった。スプーンで種とワタを取り除き、再び包丁に持ち換えて小さく切り分けていく。

 玉ねぎ、バター、コンソメ、砂糖、醤油をちょっとで煮込み、丁寧にアクを取り、ブレンダーで滑らかになるまで混ぜ、仕上げに牛乳を入れて完成。

 出来立てアツアツをマグカップに注いで味見をすると、舌触りのいい甘味が本当に丁度良くて、じんわりと体に染みわたる。
 エナジードリンクよりも私はこっちの方がいい。もはや味見を域を超えて、何ならおかわりなんかもしちゃって、秋が詰まったスープからたくさんエネルギーをもらった。

「かわいいは作れる」という有名なキャッチフレーズがある。
 このパンプキンスープみたいに、元気も作れると思う。

 料理だけじゃない。好きなモチーフを散りばめた絵を書いたり、美しい言葉を見つけたら文章に取り入れたり、心に響いた歌詞を呪文のように口ずさんだり、お気に入りの糸を服に縫い付けたり。
 たくさんの元気の素を自分で作っていけたら最強になれると思う。

 そのためにも自分の「好き」を知る必要がある。アンテナを張って、しっかり味わったり、さりげなく感じたりして、それを言葉にして、記録して、元気が足りないときは思い出していきたい。

 朝、パンプキンスープにはスライスチーズをのせて焼いたトーストが合うと知った。
 また最強に近づいちゃったな。

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