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@tokyo 2050

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@tokyo 2050 という小説です。
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記事一覧

@tokyo #5

"我々は自然なる生、自然なる死を望む。"

そう書かれたポスターが丁寧に貼られた、しかし乱雑な一室の中で、ライアンは同志と次回のデモの打ち合わせをしていた。

『生命は生まれて死ぬ、それが生命50億年の摂理であり真理である!』

ってスローガンはどうかな? アイリッシュ・コーヒーを啜りながら、ライアンはヴェロニカに尋ねる。

「うーん、悪くはないけど、なんか固いよね。もっと砕けた表現の方が分かりや

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@tokyo 2050 #1

@tokyo 2050 #1

西暦2050年。@tokyo かつて世界有数の都市として栄えたこの街は今では古都としてマニアックな人気を誇っている。

世界は2032年にひとつになった。国というものがなくなり、地球政府ができた。かつての国境もなくなった。地球政府の公用語は英語、中国語、ヒンディー語、フランス語、スペイン語、そして日本語だ。

日本語は利用者数は1億人程度なのだが、世界有数の複雑で、美しい言葉という評価を受け、公用

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@tokyo 2050 #2

@tokyo 2050 #2

「あなたー。ごはん作ってー。美味しいピラフがいいな。」

妻は隣で目を覚ますと、相変わらず私に甘えてきた。彼女も料理は上手なのだが、作るのはそれほど好きではない。私は作るのが好きなので、win-win の関係というやつだ。

『うん。美味しいの作るよ。おっと、その前にコーヒー飲もう。』『To Robo, two hot coffee please.』

[Yes, Master.]

そう答えると

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@tokyo 2050 #3

@tokyo 2050 #3

妻と自分用にカレーピラフを作る。スパイスを調合し、かつお節と昆布から出汁を取る。

米は昨年、地球最優秀賞を受賞した @tokyo 米だ。小売だと10kg で8万円もするが、これは自分で栽培し収穫したものだ。

沸騰したお湯に米を入れ、こくち切りにした葱、そして醤油とソースを入れる。

あとはぐつぐつと煮込むだけ。コンピュータ制御なので、あとは何もすることはない。実はコマンドひとつで、robo が

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@tokyo #4

@tokyo #4

『ねえ、あすか。』

私は猫舌ゆえに慎重にコーヒーを飲む妻に切り出した。

「なになに?どうしたの?そんな真剣な顔、ベッド以外だと久しぶりだね。」

いつもどおり愛らしい子猫のような笑顔で、茶々を入れる。

『友達の健康省幹部から聞いたんだけれど、不老不死手術を人類全員に政府が行う計画が進行中らしい。』

「へー。そうなんだ。じゃあ、無料ってことかしら。まあ、地球でお金に困っている人なんて誰もいな

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@tokyo 2050 設定メモ

@tokyo 2050 設定メモ

IoT研究者にとって大切なことのひとつに未来を想像する、というものがある。

想像からしか創造は生まれない。

2050年
・人は有機ナノコンピュータを体内に埋め込んでいる。
・人の思考を完全に読み取ることができるようになる。
・血管内を細胞修復型のナノコンピュータが流れており、様々な怪我の治療や、病気を未然に防ぐことが可能となる。
・人間の意識をコンピュータにアップロードすることができるようにな

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