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千葉雅也『エレクトリック』

千葉雅也の小説作品はそのすべてが同一性と差異をめぐる書くことの試行におもえる。いや、それをいうならむしろ小説というものじたいがそもそも同一性と差異の奇怪なキメラだというべきなのかもしれない。ひとりの書き手により「ただ書かれ」、リニアにつむがれているはずの文章が、気づけばいつのまにか「べつのもの」をふくみこんでいる。小説を書き、あるいは読む体験の神髄とはこの差異を同一性のうちに、あるいは差異のうちに同一性を書き/読みこんでいくことなのではないか。そういえば町屋良平が千葉の第一作

    • 故永しほる『壁、窓、鏡』

      すごい詩集を読んだ。故永しほるさんの『壁、窓、鏡』(私家版、2023)。このあいだ北海道新聞文学賞を受賞した弱冠25歳による第2詩集。おなじ道民ということもあり興味をもって手にとったのだけれど、たんにつよい同時代感覚やシンパシーをかんじただけでなく、激烈な才能に突き刺されるような感覚をひさびさに味わった。 まず詩集ぜんたいの構成が独特。詩篇ひとつひとつに題が付されておらず、ダラっと意識が接がれていくような詩法なのもあって、渦中は異様に長い一篇の詩を読んでいるみたい。なんだけ

    千葉雅也『エレクトリック』