「持ち物検査」

私の勤める老舗のデパートでは、店員さんが売り場に私物を持ち込むには
厳しい制限があります。
デパートでは、基本的に財布などの貴重品以外の私物は売り場に持ち込めない事になっています。なので、持ち込む時には、支給される透明なビニールバッグに入れるように決まっています。

このような方法を取っているのは、昔、私物のバッグの持ち込みを認めていたら、店頭から商品を持ち帰る万引きが横行して、問題になったから、らしいです。

毎日、営業時間が終わると、一日働いて疲れ果た顔の店員さんたちが
制服から着替えるため、古い事務棟に戻ってきます。
この事務棟に繋がる廊下は天井も低く、明かりも少ないために、
歩く人々の雰囲気も暗くなってしまう。
しかも古い事務棟は、昔火事があったという噂もあって、
余計そんな風に感じてしまうのかもしれません。

バッグの話に戻ると、
事務棟に繋がる廊下を通って更衣室に向かう店員さんたちに、
廊下に立った係員数人が「お疲れ様」と言いながら
バッグの中をさりげなく見るようにしています。
そして、パッケージ付きの商品などが入っていると
呼び止めて確認するのです。

こう言うと、ちょっと嫌な感じもするのですが、
防犯の為で仕方ありません。

この呼び止め要員に、最近私は配属されました。

でも、早くも続けられそうな気がしていません。
どうしても店員たちのバッグを見る事が出来ないのです。

廊下を通る店員さんたちの、透明なバッグを見るたび、
その中に焼けただれた生首が入っているのが、見えてしまうのです。

ああ。また首が、私と目を合わせて、気味の悪い笑いを浮かべてきた・・・

　　　　　　　　おわり

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