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怪談「冬の部屋」・・・暖かい部屋でなぜ。ショートショートよりももっと短い、超ショート怪談。


ダウンジャケット。
セーターとフリースの重ね着。
分厚い手袋。
マフラーに目出し帽・・・

冬山登山に行く格好をして、
父は炬燵で死んでいた。凍死だった。

その手に高山植物の花が握られていたが、
特に誰にも不思議がられずに、自然死として片づけられた。

吹雪の中で、なぜかそんな思い出が頭に浮かんだ。
なぜ、父はそんな恰好で炬燵に入っていたのか・・・
今はその理由が分かる。

父が一人で住んでいたアパートの荷物整理をする為に、
ワンルームの小さなマンションを訪れたのだが、
一日ではとても片づけは終わらなかった。

仕方なく、この部屋に泊まくことにしたのだが、
数分前から俺の部屋の中に雪が降り始めた。
窓も扉も閉め切っている、隙間から吹き込んできたのではない。
この部屋の中で降っているのだ。

最初は、ちらほらと舞う程度だったが、
数秒後には吹雪に変わり、炬燵から出られなくなった。

助けを呼ぼうにも、雪はすでに天井まで降り積もっている。
父が亡くなったこの部屋で、もうすぐ俺も同じように・・・。
ああ。もう気が遠くなってきた・・・。

          おわり

*改訂


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