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「予知夢の同窓会」・・・あっという間に読める超ショート怪談。予知夢が流行ったクラスで。


「社会人になって初めての同窓会なんでしょ。思いっきり楽しんでね。
行ってらっしゃい」

妻の無邪気な言葉に送り出された俺だったが、
正直同窓会に行くのは少し不安だった。

中学の頃、俺は相当嫌な奴だった。
天邪鬼で、学校で流行っているものをことごとく否定し、冷めた中学生を演じていた。家庭環境は少し複雑だったこともあったが、要は拗ねていたんだ。

中学一年の時、世紀末ブームが起こり、予言や滅亡をテーマにした映画や小説が大ヒットし、俺の中学校でも未来の予知夢ゲームが流行った。

一冊のノートを教室のロッカーの中に入れておき、
誰でも良いから予知夢を見たという者が、
こっそりと匿名で「予知夢のノート」に書きこむというものだ。

それを週に一度読み返して、答え合わせをするという子供の遊びである。

大概は、1999年に人類が滅亡するとか、
来年大地震が来るとか、
火星から宇宙人がやって来るとか、
大げさで好奇心を煽るだけのものがほとんどだった。

そこで、嫌な奴だった俺だ。
ひねくれものの俺は、こっそり不幸な予言ばかり書き込んだ。

最初は、

「AとBは自転車で転んで怪我をする」

「Cは教科書を忘れて先生に怒られる」

といった他愛も無いものだったけれど

翌日、AとBが二人とも手に包帯を巻いて登校し、
Cは、本当に教科書を忘れて先生に叱られていた。

予知夢ゲームを知っている同級生は色めき立った。

幸いだったのは、同級生たちが次の予知の方に興味を示し、
誰が書いたかをあまり取りざたさなかったことだ。

もし、「予知夢が出来る奴がクラスにいる」と言い出したら、きっと予知夢より犯人捜しが話題になり、いずれは俺のやった事だとバレていただろう。俺はそんな時に上手くかわせるほど、嘘つきにはなれなかったからだ。

犯人捜しが行われないと思った俺は、少し調子に乗った。

「クラスでも公認のカップルだったDとE子は近々別れる」

と「予知夢のノート」に書いた時には、E子が泣きだし、大騒ぎになった。

これで、怪しげな予知夢ゲームも終わりになるだろうな、と俺は思った。

しかし、何日も経たないうちに、Dの浮気が発覚し本当に二人は別れてしまったのだ。

この奇妙な符合を、一番気味悪く思ったのは、俺だった。
そして、嫌な性格をむき出しにして俺は最後の文章をノートに書きこんだ。

「十年以内にみんな死ぬ」

これでクラスの連中も嫌になって予知夢ゲームを止めるだろうと考えたのだ。全く嫌な奴だった俺は。

ところが、その翌日、予想外の事が起こった。
他のクラスで予知夢を理由に喧嘩が起こり、職員室を巻き込んだ問題となったのだ。

思いがけず、急速に予知夢ブームは去った。

「予知夢のノート」もそれ以降見ていない。
知らないうちに、教室から紛失してしまい、以来見た者はいない。

「誰かが持って帰ったんだろうな。みんなが集まったら持ってる奴がいるか、聞いてみよう」

そんな事を考えながら、俺は会場の居酒屋で待っている。
開始時間から、もう30分も経った・・・
まだ、だれも会場に来ない。

          おわり



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