昨日２４日。「清原愛のgoing 愛 way」で
「旅行シーズンの不思議なお話」として紹介された
「思い出にない記念写真」朗読原稿に一部加筆したものを特別に紹介します。

楽しいはずの思い出の記念写真が・・・。

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「思い出に無い記念写真」　 作　夢乃玉堂

志郎とは、高校１年の時から付き合い始めて、もう４年目になる。
最近は、ちょっと倦怠期だ。

どこに遊びに行っても新鮮味が無く、
高級なレストランも味気なく感じてしまう。

「そんな時は初心に帰れ」

私は、倦怠期を乗り越えるため、スマホに残る写真を
一緒に見返す事にした。

楽しかった頃を思い出せば、二人の関係も良くなるかもしれない。

狙いは当たった。

「映画のテーマパーク、安曇野のキャンプ、白馬のスノボも楽しかったね」

私たちは思い出を語り合った。
自然にボディタッチも増え、久しぶりに二人で明るく笑った。
最後の何枚かを見るまでは・・・。

「何これ？」

それは沖縄の写真だった。
色鮮やかな守礼門、美しく澄んだ星の砂海岸、
厳かな雰囲気のひめゆりの塔。
どの写真も天気が良くて、奇麗に写っている。
そして、その明るい太陽の下で、
志郎と私が楽しそうに微笑んでいる・・・でも。

「私たち、沖縄に行ったこと無いよね」

声が震えた。スマホを覗き込む志郎の顔も強張っている。

どの写真も有名な沖縄の観光地だけど、行った覚えはない。
それなのに、二人一緒の写真がある。

「まさか心霊写真？　でも生きている自分たちが
写ってるなんておかしいよね。もうこの写真、削除しよう」

「ちょっと待って」

志郎はその「心霊写真」をじっと見つめた。
そして、私の方を振り向いて言った。

「よし。行ってみよう！　この写真の場所に行って、
写っている通りの格好で写真を撮ってみよう」

「え～」

変な写真が撮れたら、普通はお寺に行って供養するか、
削除して忘れようとするのに
志郎はやっぱりちょっと変わってる。

幽霊、ＵＦＯ、心霊現象、不思議な事が大好きで、
デートコースも平気で心霊スポットを提案してくる。

私は怖い話は、のっぺらぼうレベルでも大嫌いだから絶対に行かない。
いつも喧嘩寸前で心霊コースを回避しているが
志郎は不満げで、こっそり一人で行っているらしい。
そんな彼が落ち着いていられるはずがない。

「すぐに行こう。思い立ったら吉日さ」
吉日に怪奇現象を追っかけるのか？と思ったが、結局その週末、
私たちは４日間の沖縄旅行に出かけた。

「二人ともその写真と同じ服を着てさ、
現実と不思議な写真を比較してみようよ。
その時、何かが起こるような気がするんだな。くうぅ、ぞくぞくするぅ」

志郎は大はしゃぎだ。

まずは守礼門。
スマホに保存されている「心霊写真」を見ながら、
指先までポーズを合わせて、セルフタイマーで写真を撮ってみた。

「そっくりかどうか確かめてみようよ」

志郎に言われるままスマホを見返すと、
不思議な事に守礼門の「心霊写真」が消えている。

「あれ？守礼門の写真だけ無いわ」

「え～。そんなはずないだろう」

志郎が見ても、前後に撮った写真はあるのに、
守礼門の「心霊写真」だけが無い。

「たった今ポーズを確認するのに見たよね」

「うん。でも消えてる」

何度写真のホルダーを見直しても見つからない。

「見比べたかったのにな・・・
あ、でもこれは、新しい心霊現象かもしれない
聖地巡礼でさらなる怪奇が生まれる・・・」

「やめてよ。時間無いから次に行きましょう」

次の目的地は、星の砂海岸。

ビーチの砂を両手ですくって下に落とす。
そんなＣＭのようなポーズをして写真を撮った。

そしてやはり、このビーチでも新しく撮影すると「心霊写真」の方は消えていた。ひめゆりの塔も玉泉洞も、同じだった。
でも、私たちの心には不思議な変化が起きていた。
写真を撮るために観光スポットを回るうち、何だか楽しくなってきたのだ。

旅行が終わる頃、スマホには消えた「心霊写真」の代わりに
楽しい二人の記念写真が残された。

「新しく写真を撮ると前の写真が消えるのは、
もしかしたら、供養になっているのかもしれないな」

志郎は早速オカルトな答えを導き出していたが、私も供養だと思う。
もちろん、供養されたのは二人の倦怠期だ。

志郎は今でも「本当に心霊写真だったら、
ちょっともったいない事をしたかな」と残念がる。

大丈夫よ。こんな「心霊写真」ならいつでも用意してあげる。
次は北海道がいいかな。
あなたは知らないでしょうけど、
高校時代写真部だった私の写真加工技術はプロ並みなんだから。
私は北海道の観光サイトからダウンロードした
雪の時計台の写真に、彼と私の笑顔の写真を合成した。

　　　　　　　　　　　　　おわり

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「清原愛のgoing 愛 way」は、「SKYWAVEラジオ」で毎週木曜日
１６時００分～１６時５９分。

ナレーター俳優として活躍中の清原愛さんが、
皆さんに元気をプレゼントしてくれます。皆様是非お楽しみください。

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