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私は、いつまでも、独りになれない

私は、いつまでも、独りになれない。

せっかく独りになったのに、薬局の一角にあるフレグランスコーナーに行くと必ず嗅いでしまう香水がある。あの人が使っていた香水を見かけては、ついつい嗅いでしまう。あの人を思い出す。小学校を卒業して中学が同じだった。中学3年間、同じクラスだった。私もあの人も目が悪かったから席替えは一番前。隣同士になる確率が高かった。あの人は身体が弱かったから、学校を休みがちでちょっと寂しかった。寂しかったと思うようになって、私はあの人が好きなんだと思うようになった。「授業のノート見せて」って頼まれるだけで嬉しかった。あの人は、高校へは行かないんだろうなと思っていた。っていうか、中学を休みすぎて高校へ行けないんじゃないかって思っていた。私と同じ高校へ行くって知ったときは、嬉しかった。あの人のことが大好きで、誰にもとられたくなくて、どうしても付き合いたかったから、ダメでもいいから、中学の卒業式が終わって高校の入学式までの春休みに、私から告白した。

あの人とは、高校2年の夏休み前まで付き合った。あの人は謹慎になってしまった。いつもだらしなく着ていたブレザーをちゃんと着ていた。シャツの第一ボタンをちゃんと締めて掃除をしていた。なんか私のことを避けているような気がしていた。結局「こんな俺と付き合ってても、、、」って言われてフラれてしまった。

高校にいるときも、遊んでいるときも、あの人からは香水の匂いがした。誕生日、私はあの人から、あの人が使っていた香水の女性バージョンの香水をプレゼントしてもらった。私は匂いに敏感だから、自分に香水はつけないけれど、プレゼントしてもらって嬉しかった。いい香りのする香水だった。

そのプレゼントしてもらった香水が、車の芳香剤として並ぶようになったのはいつからだろう?見つけたときは嬉しくて、今でも車の中にぶら下げている。車の中に、あの人がいる気がする。

その車で毎日、仕事場へ向かう。
香水のコーナーを見つけては、あの人の香水を探して、匂いを嗅いで、あの人を思い出す。

私は、いつまでも、独りになれない。


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