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【書評】『南小国町の奇跡 稼げる町になるために大切なこと』


黒川温泉
を擁する南小国町における地域活性化の取り組みについて書かれています。「稼げる町」になるために、町の外部からマネジメントのプロを招きます。著者はその招かれた人です。いわゆる「ヨソ者」として変革のためにどんな活動をし、結果としてどんな変化が起きたかがわかります。

僕は、地域活性化は「若者・ヨソ者・バカ者」によって起きる、という説に懐疑的です。若者は経験不足、ヨソ者は地元の事情を知らない、バカ者はただの馬鹿にすぎない、ということは往々にあり得ることです。
特に「ヨソ者幻想」は深刻で、外から自称コンサルタントを呼んできて、課題解決を丸投げしてしまい、コンサルタントを儲けさせるだけでなんの成果も生まないのに、懲りずに同じことをする地域が後を絶ちません。コンサルタントの端くれとして、コンサルタントのイメージも地に落ちていくので、非常に苦々しく思っているわけです。

「若者・ヨソ者・バカ者」、特にヨソ者が力を発揮するためには、地元で覚悟を持って変革に取り組み、ヨソ者と一緒に動いてくれる人が必要です。南小国町の場合は、それが町長でした。町長自らがDMO設立に動き、外部の人に相談し、招聘して事業を進めていきます。こうなればヨソ者も力を発揮します。著者である柳原さん、柳原さんの会社・DHE(株)が見事な働きを見せて、稼げる町に変貌させていきます。

特筆すべきは、最初に取り組んだことが、町に出て聞き取りを行ったことです。それも場を用意してもらってヒアリングを行う、ということの前に、町に住み込んで町に溶け込む努力をしながら聞き取りに臨んでいます。これによって地元の人の本音が聞けたんだと思います。形だけのヒアリングを行い、本当の課題をつかめないまま、外から見た印象を基に、他の地域で成功した事例をそのまま当てはめて失敗する例が多い中、地に足をつけた取り組みだと思いました。

稼ぎを生み出す手法の一つにふるさと納税があり、この制度に批判的な僕からすると若干複雑な想いもあるのですが、現場としてはいまあるリソースを使って現状を打開しようとするのは当たり前のことです。ふるさと納税制度の問題は国政レベルで批判はしますが、制度がなくなるまで各自治体がそれを有効活用しようとすることは当然のことだと思っています。逆にそれすらも使えない自治体は努力が足りません。

後半は、町の人たちの声が多数、載っています。さまざまな事業に取り組む中で、地元の人がどんなことを感じたのか、知ることができます。町が儲かって町の赤字事業が黒字化してよかった、というレベルではなく、住んでいる人たちにも変化が起きていることが良くわかります。

地域活性化、地域支援といったことに取り組んでいる人、興味がある人がとっていはさまざまな示唆がある本だと思いました。

[目次]
はじめに
第1章 黒川温泉のある町、南小国 町ぐるみの観光地域づくりが始まった
第2章 「あるべき姿」づくりでゴールを設定する 町の魅力を「みつける」
第3章 SMO南小国によって町を機能させる 町の魅力を「みがく」「つなぐ」
第4章 町長も驚いた、南小国町の〝奇跡〟 「3本の矢戦略」を実行する
第5章 南小国町は、これからどこをめざすのか 「おすそわけ」の精神で持続的発展へ
第6章 なぜ、南小国町はうまくいっているのか 観光地域づくり成功のヒント


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