私の本が、売れません。

先日の初投稿には多くの方から反響をいただき、初日で2000名を超える方にフォローしていただくなど、たいへん勇気づけられました。本当にありがとうございます。これからも自分なりのペースで、しかしながら想いを込めて、一つ一つ発信させていただきますね。お付き合いのほど、よろしくお願い致します。

さて、以前の私であれば、この流れに乗ってどうしてもカッコつけたがり、さらなる熱い想いをぶちかまして、みなさんに「いいぞ、乙武!」と言っていただけるような投稿をしてしまっていたかと思うのですが、ここは自重。いまさらカッコつけても仕方ないので、今回は情けない私の現状について晒してみたいと思います。

「誰もが平等にチャンスを与えられる社会にしたい」

その想いにウソはありません。そうした社会を実現していくため、いまの私にできることは何だろうと考えたとき、「やっぱり文章を書こう」と思うに至りました。二十年前にモノを書くことで世に出てきた人間としては、やっぱりモノを書くことで再始動できたらと考えたのでした。

しかし、これだけ嫌われてしまった“私”が何かを語っても、「いまさら何を」「説得力がない」の嵐が吹き荒れることは容易に想像がつきます。そのバイアスを少しでも低減するには、あくまで創作という形式に則る小説が適しているのではないかと考えました。

そうして出版されたのが、こちら。


あ、間違えました。芥川賞候補になどなっていません…。こちらでした。

『ペンチメント』(講談社)

すいません、すいません。二度も間違えました。茂木先生、大好きです。

「こんなときに思わず友人の本を宣伝してしまう乙武さんってお茶目」という自己プロデュースは以上になりますので、いよいよ本題に移ります。


車椅子の青年がひょんなことから歌舞伎町でホストに挑戦する話——というと、「え、乙武さん、どうしちゃったの!?」と怪訝に思われそうですが、これ、読んでいただければ「なるほど、そう来たか」と納得していただける作品になっているんです。

主人公は周囲から「車椅子にホストなんて無理だ」と言われたことに反発し、「やってみせる」と意気込むものの、失敗続き。それでも支えてくれる上司や友人に支えられてホストとしての成功を掴んだかに見えたが——というストーリーなのですが、ひとことで言えば「レッテル貼り、うぜえよ」というお話です。

世の中には、「障害者だから◯◯」「ゲイだから◯◯」「ハーフだから◯◯」など、その人が帰属するカテゴリーによるレッテル貼りが、まあ辟易するほど横行しています。上記に掲げたマイノリティに対してだけでなく、「女性らしく」「長男なんだから」「ひとり親家庭で育ったから」など、そこまでマイノリティ性を帯びていない人々にも、世間は容易にレッテル貼りや“キャラ付け”を行います。

これって誰得なんですかね。それって誰かの人生を息苦しくしているだけですよね。と、いくら憤ってみたところで、おそらくこうしたレッテル貼りや色眼鏡って、そう簡単には社会からなくならないと思うんです。であるならば、気をつけなくてはならないのは“二次障害”。「どうせ自分は◯◯だから」と世間に貼られたレッテルを鵜呑みにして、みずからの人生に制限をかけてしまうこと。まずは、こうした事態を避けていかなければいけないな、と思うんです。

あ、この調子でこの本に込めた思いを語っていくと夜が明けてしまいそうなので、よかったらこちらを読んでいただければ。

そして、いよいよ本題です。こちらの『車輪の上』。まあビックリするほど売れていません。初版6000部というスタートだったのですが、そこからピクリとも数字が動いていません。当然、重版もかかっていません。心が折れそうです。いや、折れました。

けっこうメディアの取材も受けたんですよ。いくつもインタビューを受けたし、『FRYDAYデジタル』ではインタビュー記事のみならず、わざわざ歌舞伎町のホストクラブで本物のホストさんたちと撮影をするなんてことまでやっていただいて。

出版イベントもやらせていただきました。都内の書店でサイン会もしたし、『朝渋』という読書会があるとお聞きし、苦手な早起きをして90分、語り倒してきました。

それでも、まったく売れないんです。ね、心折れるでしょ。

そんなとき、ポキリと折れたその心を接着剤でつなげてくれたのが、佐渡島庸平さんです。あの『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』など数々のヒット作品を手がけてきた敏腕編集者。今年は、『君たちはどう生きるか』をリバイバルさせたことでも話題になりました。

そんな佐渡島さんが、『車輪の上』を読んでくれました。

「え、乙武さんがこんなに“書ける人”だとは思いませんでした」「物語として成立しているし、読者の心を動かす力がある作品ですね」

思いがけず、高評価してくださったのです。すかさず、聞かれました。

「(部数は)どれくらい行ってるんですか?」

正直に告白しましたよ。「まったく売れてません」と。「重版すらかかっていません」と。それを聞いた佐渡島さんは首を傾げました。

「おかしいなあ。もっと売れていい作品だと思うんだけど…」

うう…その言葉だけでも、おいらは十分にうれしいよ。ただし、次の瞬間に佐渡島さんの口から出た言葉は、私の背筋を凍らせました。

「ただ、これだけクオリティの高い作品を書いているのにあまり売れていないとなると、今後いくら本を出しても、部数的にはあまり変化がないと思うんですよね」

な、なるほど。グサリと刺さるお言葉。しかし、さすが佐渡島さん。的確な現状分析だけでなく、打つべき手もしっかりと示してくださいます。

「むやみにボールを投げても、それをしっかり受け止めてくれる人がいないと効果が薄いんですよ。乙武さんのメッセージを欲している人は多くいるはずです。その人たちに向けて、しっかりと情報を伝えられるような仕組みをつくったほうがいいと思います」

noteを始めてみようかなと思ったきっかけは、じつはこんなところにもあったんです。こうしてみなさんと私とをつなぐ契機をくださった佐渡島さんには、あらためて感謝したいと思います。

あ、これで終わると思った方、ちょっと待って。大事なことなのでもう一度言いますけど、『車輪の上』が売れてないんです。けっこう面白いのに、ちっとも売れてないんです。

年末年始、忙しいですか? 帰省する飛行機や新幹線の中、何して過ごしますか? 旅のお供に『車輪の上』どうですか? いろんなタイプのモテ男が出てくるので、「2019年こそモテてやる」と意気込んでるそこの男性陣、ご参考にいかがですか? イケメンがいっぱい出てきます。「この役はあの俳優さんが演じてくれたらいいな」なんて妄想を膨らます年越しはどうですか?

後悔はさせません。きっと心に残る作品になると思います。

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乙武 洋匡

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