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主権者教育って、小学校でもできますか?

最近、杉並区が元気だ。もう少し正確に言うなら、昨年7月に就任した岸本聡子区長が元気だ、ということなのかもしれない。今年に入ってから、従来の区政ではなかなか見られなかった政策を次々と打ち出し、注目を浴びている。

もちろん、すべてが良策というわけではないだろうし、個人的にも疑問に感じている政策もあるが、批判を恐れてこれまでと同じことしかしない政治家よりも、こうして意欲的に新機軸を打ち出そうとする政治家に、私たち有権者はポジティブな評価をしていくべきだと思っている。

なかでも私が注目しているのは、住民の意思が直接反映される「参加型予算」の実施だ。これは予算編成の際、住民から提案を募集したり、複数の提案の中から良いと思う案に投票してもらったりするなどして、区民の意思を反映させる仕組みだという。

ひとまず来年度は、インターネットを活用して国産木材の利活用など森林保全に関する基金の使い途について、区民から提案を募集したり、ネット投票してもらうなどして決めていくことを想定しているという。これがうまく機能すれば、さらにその範囲を拡大していくのかもしれない。

この「直接民主主義」的な試みに対して、ネット上ではおおむね好意的な反応が寄せられているが、もちろん懸念を示す声がないわけでもない。その懸念のなかで最も多く見られる意見は、「区民にすぐれた判断が下せるのか」という有権者の資質を疑うものだ。

たしかに、昨年の参院選で“暴露系YouTuber”であるガーシーこと東谷義和さんが28万7715票を得て当選したものの、これまで一度も登院せずに懲罰委員会に処分を検討されることになるなど国会議員としての資質が疑問視されている。だが、そんな議員を誕生させたのも有権者なのだ。そうした状況を踏まえた上で、「大切な予算を、無責任な有権者に託していいものだろうか」と懸念する声が上がることも無理はないだろう。

ここで考え方はふたつある。

「区民にはその資質がないのだから、決定権を委ねるべきではない」

「区民にも積極的に政治参加してもらうため、有権者としての資質を高めていくべきだ」

私は、後者を推している。いわゆる“主権者教育”を通して、主体的に政治参加できる市民を育成していくべきだと思っている。ただ、何も私はガーシー議員の誕生でそのように思うようになったわけではない。じつは、小学校教員を務めていた時代からそうした考えを持っており、担任していた子どもたちにも私なりに主権者教育をしてきたつもりだ。

私が担任していたのは、3年生・4年生。「そんな幼い子どもたちに効果的な主権者教育など可能なのか」と疑問を持たれるかもしれない。だが、可能なのだ。

あれは、4年生を担任していたときのこと。テーマは、「ゴミ箱」だった。

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