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#1. 自動運転タクシーWaymoのシステム

こんにちは、Virtual Motorsport Labの山下です。
僕らは自動運転レーシングカーの開発体験が出来るサービスを提供しています。その中で、自動運転や自動車システムについて興味はあるけど、どんなシステムになっているか知らない人も沢山いることに気付きました。そのため、そんな初学者向けの記事やニュースレターを発行していきます。

今回は、自動運転タクシーのパイオニア企業のWaymo(ウェイモ)を中心に、自動運転テクノロジーについて紹介しようと思います。

(1) Waymoとは ?

Waymoは汎用性の高い完全自動運転「Waymo Driver」を開発している企業です。元々はGoogleの自動運転プロジェクトから生まれた会社になります。事業としては、2018年にアリゾナ州フェニックスでサービスが開始された自動運転タクシー「Waymo One」が有名です。当初は限定的なユーザのみ利用可能で、かつ補助の人間ドライバーが同乗していました。しかし、現在は同乗無しの自動運転レベル4相当で運行しています。

Waymo Oneはサンフランシスコ、フェリックス、ロサンゼルスで走行しています。そして直近の事業としては、ride-hailing (アプリを使った配車サービス)に事業を集中することを発表しています[1]

また今年に入って、WaymoはUberと提携しており、フェニックスでのUberの配車サービスやフードデリバリーサービスにおいて、Waymo車両が用いられる見込みです [2]。現時点ではUberのユーザは、アプリ上で人間ドライバーか自動運転車両を選べるようです。

(2)第5世代Waymo Driverのセンサシステムについて

Waymoの自動運転システムは第5世代Waymo Driverと発表されています。自動運転システム構成は教科書に載るような王道の構成です。自動運転車両は先行車両、バイク、歩行者、障害物などあらゆる物体を認知、判断して走行する必要があります。ここでは、第5世代Waymoのセンサー周りの技術概要をまとめます。

センサ搭載図 (出展: Waymo-safety repot 2021)

(2-1) Lidar (Light Detection and Ranging)について

Lidarセンサーは、車両周囲にレーザーパルスを送信し、それが物体から跳ね返ってくるまでの時間を測定します。このデータを用いて、車両周囲の3D点群画像を描きます。上の車両図では緑色の波動の中心位置にLidarセンサが搭載されています。またWaymoには独自開発の3種類のLidarセンサーがあるようです。これら情報から、車両周囲の状況を俯瞰的に把握することが可能です。

Lidarの点群データ (出展: Waymo HP)

(2-2) カメラについて

Waymo oneのベース車両であるJaguar I-PACEsの場合、29台のカメラが搭載されており、車両周囲360度を同時に認識出来ます。また数百メートル離れた場所からでも、信号や工事現場、その他の状況を把握することが可能です。上の車両図ではルーフの上の青色位置に搭載されています。29台のカメラは図上では示されなかったのかもしれませんが、多くの運転支援システム(ADAS)では車両フロントガラスに搭載されることが多いです。自動運転用センサー系では、カメラが人間の目に一番近い原理のセンサーです。下図ではカメラで前方車両や歩行者が認識されています。

カメラの物体認識 (出展: Waymo HP)

(2-3) Radar (レーダー)について

レーダーは電磁波を使って、物体の距離や速度などの重要な情報を自動運転システムに提供します。上の車両図では紫色の波動中心に搭載されている。上述したカメラやLidarは悪天候などの外部環境に大きく影響を受けるが、レーダーは外乱の影響を受けずらく雨、霧、雪の中でも有効です。下図はレーダーの認識イメージであり、左枠に移る車両前方の右折車両が、車両前方の物体として認識されています。

レーダーの認識イメージ (Waymo HP)

(2-4) 慣性計測ユニット

慣性計測ユニットは、車両に高精度の位置および速度、方位情報を提供します。このユニットは、加速度センサおよびジャイロセンサを中心に、地図情報やGPS、車速、各種センサ入力を利用して正確な情報を計算しています。(車両図ではピンク色)

(2-5) その他センサー

上述のセンサ類が自動運転システムの中心的な役割を担うが、警察や緊急車両のサイレンを数百フィート先まで聞き取ることができる音声検知システムなど、多数の追加センサーも搭載されています。(車両図ではオレンジ色)

(3) まとめ

Waymoの自動運転システムである第5世代Waymo Driverのセンサー系を簡単にまとめました。実際の自動運転システムでは、本記事で紹介した自動運転用のセンサーを中心に、膨大な情報を踏まえて、車載コンピュータが走行経路を計画して、車両制御を行います。

個人的には、Waymo車両が29個車載しているのには驚きました。僕が2019年頃に自動車メーカーで「衝突被害軽減ブレーキ (自動ブレーキ)」の開発をしていた頃は、前方検知用の車載カメラを1個 +駐車支援用のカメラでした。小型車であったことも理由だと思いますが、完全自動運転を目指すWaymoの車両システムが扱う情報量は、量産車の運転支援(ADAS)システムより格段に大きい改めて感じました。

次回は自動運転のソフトウェアやシミュレータの活用方法についてまとめる予定です。質問や感想、取り上げてほしい内容があればコメントください。読んで頂いてありがとうございました!

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Virtual Motorsport Lab Inc.について
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https://vml-racing.com/

参考資料
[1] https://waymo.com/blog/2023/07/doubling-down-on-waymo-one.html
[2]
 https://jidounten-lab.com/u_41446
[3]
 https://waymo.com/waymo-driver/
[4]
 https://downloads.ctfassets.net/sv23gofxcuiz/4gZ7ZUxd4SRj1D1W6z3rpR/2ea16814cdb42f9e8eb34cae4f30b35d/2021-03-waymo-safety-report.pdf


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