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【編集者】トレイルランナー職業図鑑 #01

トレイルランニング 専門誌『RUN + TRAIL Vol.39』(2019年10月発売号)の特集は「UTMB 2019大特集」。

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「激走」の世代交代と銘打たれた特集は、TDS/CCC/OCCなどのレースレポートや、世界8位に入った小原将寿さんの特集、また、鏑木毅さんのNEVERプロジェクト完遂物語「50歳の夏の完全燃焼」、さらには

チーム戦で300km以上走破するPTL特集もあり、それはそれは"UTMB好き"にはたまらない誌面構成になっていました。

ところが、私は最後の20ページをごっそり担当。その内容が和田アキ子ばりの「あなたは何している人?」こと、普段の仕事人としての顔に迫るシリーズ"トレイルランナー職業図鑑"を書いていました。

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知っているようでじつは知らないあの人の仕事場を訪ねたこの小特集は、各職場の許可を頂いて、10人のトレイルランナーの密着取材を行い、密かな反響を得たものでした(笑)。

トレイルランナーは、ほんの一部のプロをのぞいてほとんどが普通に働く社会人。だからこそ、トレイル上で見せる「オフの顔」とは違う「オンの顔」をのぞいてみたくなって、職場に押しかけるこの特集の加筆修正版の第1回は、福島舞さんです。


目標はベストセラー
福島舞〜"楽しむ天才"の素顔 

 トレイルシーンでは、年下からは「舞さん」、年上からは「舞ちゃん」と親しまれ、いつも笑顔を絶やさない姿をSNSで見る人は多いだろう。

 人呼んで“楽しむ天才”。

 そんな彼女の普段の姿を上司の篠原さん同席でのぞいてみた。

▼アルバイトから出版社へ就職

 タレント活動を行なっていた20代前半では、ラジオのレギュラー番組で本のコーナーを持つほど、とにかく本が好きだった。そして、実姉の紹介でアルバイトを始める。それが今働いている出版社「青土社」だ。

 本の街・神保町にある青土社は、2019年に創業50年を迎え、古き良き時代を感じさせる雑居ビルの5階にある。

 この取材は8月のカンカン照りの日で、エレベーターを想定していたカメラマンが大粒の汗をかきながら荷物を手揚げする羽目になるほど、最新のおしゃれなオフィスではない。

 いつもキラキラしている彼女とのギャップはむしろ、好感に映った。

 その後、タレント活動に区切りをつけ、そのまま青土社にお世話になることに決める。配属は営業部だった。そもそもの話だが、青土社とはどういう出版社だろうか。

篠原
「俗に、人文系出版社と言います。神話・言語・哲学・文学・宗教・文明論・科学思想・芸術などの分野を取り扱う出版社で、なんだか堅そうでしょ? 雑誌『ユリイカ』を作っている会社と言えば、わかる人はいるかもですかね(笑)」

福島
「アルバイトからの流れでこうして働いていますけど、人文系って得意な分野じゃないんですよ(笑)。でも、最初は倉庫で本を整理したりとか地味な作業だったと思います。ウチは本の企画・編集から本屋さんへの品出しまで全部やるんですけど、本そのものが大好きなので、本に囲まれている環境もどの作業も好きです」

 営業部から編集部に異動して3年あまり。売る仕事から作る仕事へ移り、“楽しむ天才”は何をしているのか?

福島
「編集部に来て私が最初に手がけた本が『ひじきとつるり』。動物愛護に関する本です。鳥・動物・水の生き物を扱ったぬり絵図鑑三部作なんかもありました。当時、塗り絵が流行っていたから、売れる!と思って(笑)」

篠原
「福島は人文が好きで入ってきた人間ではないから、考える企画が他と違う。ただ、会社にもコンセプトがありますからね、会社の色にあった企画にチューニングしながら進めるようにしています」

福島
「そのチューニングを重ねながら編集したのが『子どもには聞かせられない動物のひみつ』という本です」

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 昔、『本当は恐ろしいグリム童話』という本があった。それの動物版と呼べるような目から鱗な情報が13も取り上げられている。

福島
「下ネタも多い内容で(笑)、みんなに人気のパンダは乱倫で、ペンギンが売春する話とか、イギリスの女性珍獣ハンターが体当たりで裏の顔を暴く動物エッセイなんです」

篠原
「人文ジャンルとしては『科学・生物』という落とし込みです。これでもかなり冒険したくらいで、福島の視点は社内に新しい風を送り込んでいます」


▼キリアンを知る上司から学ぶ、趣味と仕事の繋げ方

 舞ちゃんのトレイルランナーとしての活躍は今更語る必要もないが、それが仕事にどう活かされているのか気になった私は、上司の篠原さんに直接聞いた。

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