見出し画像

ちょっとオススメ映画「ペナルティループ」~日本のA24、木下工務店を応援してます~

 (種明かしにご注意) 何が何だか訳分からない映画です、はっきり言って。で、つまらない?と言われれば、そうでもなく興味をずっと引っ張る工夫はありました。だからどうなの? 面白いけどつまらない、としか言いようがありません、よくぞそんな映画を思い付き、それを実行してしまった事が驚きですね。

伊勢谷友介、山下リオ、ジン・デヨン

 若葉竜也、初?の単独主演映画を祝して、何も分からずままの鑑賞で、よけいに混乱した次第。若葉が6月6日にベッドで目覚め、大きな植物プラント工場の社員のようで、訪れた電気工事らしき伊勢谷友介扮する作業員を何故か殺し川に死体を遺棄する。この事を何度もループのように繰り返すのが本作。その上で、どうやら彼の彼女が殺害された復讐のようで、繰り返しも状況がまるで異なる摩訶不思議、さらに意識においても蓄積と言うか教育がなされ慣れ合いすら生ずる奇怪さ。

ちょっとウザイこの髪型

 タイムマシンもそうですが、ループものも洋の東西違わずちょくちょく映画に登場するシチュエーション。タイムマシン程には暗黙の了解はないけれど、繰り返しの過程で生まれる齟齬がポイントとなるのはほぼ共通。で、本作のリピートでは殺害の時間も手順も、そこに誘導する自販機のトリックも微妙に異なるのが観客を苛つかせる。即ち従前のループものの基本を大きく逸脱しており、それは多分ワザとであってそこを見せたい意図があるのでしょうね。

 その苛立ちから浮かび上がるのが包丁で伊勢谷の体をブスブスと幾度もメッタ射しにする「音」です。自らも返り血を盛大に浴び、復讐の域を大きく超えた殺戮には自らは罰せられない了解の存在を暗示し、事実誰一人として目撃者は現れない。リアルのようでこれはリアルではないわけです。実際次の6月6日には伊勢谷はピンピンしているではないですか、まるでゲームのリセットですね。ここに本作の種明かしがあるようですね。

 で、ここからが問題です。リセットによって何かが浮かんで真実が顔を出しちょっとした感動ものに・・・と予測したのが間違いで、結局何? で終わってしまうのが惜しい。女の書類焼却は何? このゲームの管理者のようなメガネの男、唐突な韓国語、「イカゲーム」のような不条理を思わせつつ何もない。答えが欲しい訳ではないけれど、娯楽映画としての留飲がないのですよ。

まるで変った伊勢谷

 それにしても若葉君は諸作で数多拝見してますが、相変わらずのボリューミーなロン毛で、何を演じてもこのヘアスタイルなのが違和感ありますね。応援しているのですから、役に応じて変化が欲しい。対する伊勢谷が本作の肝でしょう、例の問題後初の本格出演に拍手喝采です。流石の存在感に若葉が軽く見えてしまいます。最初は誰?状態でしたが、問題以前の過剰なギラギラ感がなくなり、薄い皮膚感覚から原石の輝きが現れたような感じです。

キノフィルムのロゴ

 本作を制作・配給する木下工務店さんは、良質な映画を支える気骨があり、米国で言えば「A24」のような存在に成長しました。よくぞ本作の製作にもGOを出したもので、惜しい作品でしたが、冒険に対し惜しみなく応援をしたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?