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うそのある生活 17日目

11月30日    晴れ     空がやたらと青い日

娘とテレビを見ていた。チャンネルを変えてほしい言うのでリモコンを探すと、いつもの置き場とは違うリビングの棚の上にある。あれ、と思っていると、案の定テーブルの上にももうひとつリモコンがあった。並べてみるとふたつのリモコンは全く一緒のもので、もともとひとつしかなかったはずなのに、いったいどういうわけでふたつに増えたのだろうと混乱した。

それはどうやら妻が買い足したらしかった。たしかに、近頃リモコンの効きが悪く、とくにチャンネルを変えるのが難しかった。テレビは妻が独身時代に買ったものだから、もう10年近く経っているだろうか。そろそろガタがきているのはわかっていたけれど、なんとなく面倒くさくて放っておいていたのを、妻が見兼ねたらしい。といっても、リモコンがおかしくなったのはもう去年の夏のことだから、結局は一年以上ほったらかしにしていたことになる。

妻とわたしは買い物無精というか、買い物をすることに興味がなくてつい億劫がるので、そんな風なことが起こってもつい放っておいてしまう。今回は妻が買い替えてくれて、リモコンの効きもよくなったのでありがたかった。こういうときに感謝を示すのが夫婦円満につながると思ったので、ありがとうとしきりに妻に感謝したら、はじめは、まあね、などといっていたのだけれど、褒めすぎたのか、妻がすこしおかしくなった。

今朝のこと。寒くなったので厚手のセーターを出そうとすると、気にいっている緑のセーターが二枚出てきた。これももともと一枚しかなかったはずのもので、おかしいなと思ってみると、セーターのほかにも、シャツやらコートやらわたしの服がどれもこれも二枚ずつになっている。

事情を聞くと、やはりこれも妻の仕業だった。なんでおんなじものを買ったの、と聞くと、「冬支度よ」と言う。服を二枚ずつにすることがどうして冬支度になるのかわからなかったが、妻が雪のようにさっぱりとした顔をするのでつい黙ってしまった。このぶんでは服だけじゃなく、家具や家電までふたつずつあるようにしてしまうかもしれない。さすがにそんなことは、と思うけれど、微笑む妻の顔を見るとわからなくなる。こんなことになったのも、妻の妻をやたらに褒めすぎたせいだろうか。とはいえ、感謝を伝えないのもおかしいし、夫婦生活は何につけ調整が難しいと思う。

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