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#3『ブランクーシ 本質を象る』アーティゾン美術館


こんにちは。

はぎをです。


第3回のアートの旅は
『ブランクーシ 本質を象る』
アーティゾン美術館
2024.3.30〜7.7

です。


コンスタンティン・ブランクーシ
(1876-1957)

コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)

はルーマニア出身の彫刻家です。

タイトルのとおり、対象をただ単純化したわけではなく、対象の本質なるものを抽出すべく努めた人です。


実は僕、ブランクーシが大大大好きで。
初めて見たのはイヴ・サン・ローランのドキュメンタリー映画を観た時。

『YVES SAINT LAURENT』(2010)


ファッションデザイナーの彼は美術コレクターの一面もあり、自宅にはたくさんの作品がありました。
その中におそらく木製の、人型の美しい彫刻がありました。

それがブランクーシの作品だったのです。


そのあと、大学の先生と話していた時にブランクーシという人の作品だと教わりました。


ただ、ブランクーシって作品を見る機会が全然無いんです。

同じ時代の芸術家の展覧会等で紹介されるぐらい。
最近だと、大阪中之島美術館で開催されたモディリアーニ展で展示されているのを見ましたが、2点のみ。


イヴ・サン・ローランのように個人所蔵だと、見るのはもう無理です。

写真等で見て美しいなあ、たくさん実物を見てみたいなあと思い続けて.....
まさかの東京で回顧展!
しかも日本では初の回顧展のよう。

すぐに飛んで行きました。



雨の中最寄駅から歩いてゆくと、洗練されたビルが横断歩道越しに見えました。

アーティゾン美術館はオフィスと美術館がある複合ビルです。

少し品良く傘を閉じ、あたかもオフィス利用者のような顔つきを演じながら中に入りましたが、警備員さんにチケットはあちらです。と案内されてしまいました。


日時指定予約制のチケットだったため、少し時間をつぶしながら美術館のある4階へ。

会場の入り口はシンプルな色と本人写真、そして"本質を象る"。


展覧会の設営や什器等は美術館によって特徴がありますが、アーティゾン美術館は洗練されていて、まさにブランクーシ。

美術館職員さんのセンスを感じます。



入ってすぐに目に入ったのは少年像。


『苦しみ』1907 ブロンズ

苦しみという題とは思えない艶やかな生命を感じます。


この作品は苦悶の表現がよく表れた初期バージョンがあったそうです。
初期バージョンでは折り曲げた左腕を含めた胸の辺りまでの像で、首を捻り身をよじるポーズがまさに苦悩を表現していたようです。
(初期作品が見てみたくて調べてみましたが出てきませんでした。悲しい。。)


こちらは第2作。
苦しみの表情は薄れ、素材の特性とフォルムを重視した作品だそう。

ブロンズの滑らかな表面は少年期の瑞々しい肌を感じさせます。


この作品が制作された1907年。
31歳、ブランクーシはオーギュスト・ロダン(1840-1917)(『考える人』で有名な彫刻家です。)から高い評価を受け、下彫り工としてアトリエに入りますが1ヶ月程で辞めたそうです。

ブランクーシが「大樹の下では何も育たない」という言葉を残していることから、辞めた理由は様々な想像ができそうです。





『苦しみ』の程近くに展示されていたのは有名な『接吻』。

『接吻』1907-1910 石膏


単純化されたフォルムに美しさがありつつも、どこか可愛らしい。
家に置きたい。。

接吻は昔からよくある主題で、同時期だとクリムトが有名ですね。

『接吻』グスタフ・クリムト


他にもマリー・ローランサン、エドヴァルド・ムンク、オーギュスト・ロダンなどなど。


今回展示されていたブランクーシの『接吻』の特徴はひとつの石塊を直彫りにより、素材の質感を残しながら、抱きしめる腕や頭部にみられる柔らかな曲線にあります。


直彫りによる表面の痕跡は乳白色の石膏の特徴と相まって、鉱石にも関わらずあたたかな印象を与えます。
髪の毛の表現でも石膏の異なった質感を見れるのがおもしろいです。


ギュッと抱きしめられた手が内側に入り込んでいたり、抱きしめられた胴体の部分が若干湾曲していたり。
接吻による愛情をあたたかに表現しています。



また、表面は女性主位な接吻に対して、裏面は男性主位な接吻に見えるなあ、と
思ったりしました。

どっちも良いなあ。





展示方法でとても良かったのはこちらの空間。

おそらくブランクーシのアトリエを再現したんでしょう。

ライトが独特ですよね。

実際の日照時間と同期しているらしく、訪れる時間によってライティングが変化するそうです。

そして配置が何より、良い。


ブランクーシは自身のアトリエに置かれている作品を時折移動させ、配置を変えていたそう。
そして自身でそれらを写真に収めている点からも作品と空間の関係性を意識していたように思われます。




『ミューズ』1918 磨かれたブロンズ


単純化されたフォルムとブロンズ。

なぜこんなにも引き込まれるのでしょう。



『空間の鳥』1926 ブロンズ

最後は最も単純化された作品。



この作品ではもはや対象である鳥の姿はなく、地から飛び立って飛翔する運動自体に焦点が当てられています。



作品の要素はただ本質を見出した運動だけにあるのではなく、飛行機のプロペラの造形のような工業製品の合理的形状にあるかもしれません。


そもそも本質ってなんでしょうね。
飛翔する運動は鳥の本質なんでしょうか。それとも特徴なのか。。。













ありがとうございました。


訪れる際はチケットのネット事前購入、歩きやすい靴とカメラを忘れずに。


会期

2024年3月30日[土] - 7月7日[日]

開館時間

10:00ー18:00(5月3日を除く金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで

休館日

月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日

主催

公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館、朝日新聞社

後援

在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、在日ルーマニア大使館

入館料 

ウェブ予約チケット一般1,800 円 *クレジット決済のみ
窓口販売チケット一般2,000 円

大学生、専門学校生、高校生  無料 要ウェブ予約
※入館時に学生証か生徒手帳をご提示ください。

障がい者手帳をお持ちの方と
付き添いの方1名無料 予約不要
※入館時に障がい者手帳をご提示ください。

中学生以下の方無料 予約不要

*ウェブ予約チケット:各入館時間枠の終了10分前まで販売。
*予約枠には上限があります。
*予約枠に空きがあれば、美術館窓口でもチケットをご購入いただけます。
*この料金で同時開催の展覧会を全てご覧いただけます。

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