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例祭(花祭)を見学しました【学芸員のバックヤード】

毎年7月15日に羽黒山山頂三神合祭殿にて行われる例祭。雨の中ではありますが、多くの人が集まりました。

例祭(花祭)とは

出羽三山神社ではこのように紹介されています。

稲の開花期にあたり、災厄のないことを祈願する祭である。
三山の神輿や稲の花に見立てた造花を飾った万燈などが鏡池の周りを一巡りするが、参拝者はこの花を取ろうと奪い合う。花を手にした者は神の恩恵が厚く、他に勝る良き実りが与えられるといわれている。

出羽三山神社ホームページ

ちょうど稲の花が咲くこの時期。羽黒山山頂にある鏡池の周りを、神移しの儀が行われた三基(月山神社・出羽神社・湯殿山神社)の神輿と、写真のような稲の花を模した「花梵天」(または万灯)と呼ばれる献燈が、地区の若者たちによって担がれ巡行されます。

若者衆が運ぶ花梵天
運ぶ人々と比べると花梵天は4~5m程あり、かなり大きいことが分かります。
神輿

その行列の中、参拝者は神木や花梵天の花を奪い合います。この花には、家内安全・五穀豊穣・商売繁盛の幸運があると言われており、その花は神棚に供えられます。

参拝者が花を取り合う様子

当日のタイムスケジュール

花祭は午前10時頃から、羽黒山内の東照宮で奉納される黒川能をはじめ
羽黒山にゆかりある庄内地域の芸能が繰り広げられます。

黒川能
今回は「竹生島」、「蟹山伏」、「老松」の三曲が上演されました。
羽黒太鼓
羽黒ならではの衣装やパフォーマンスと力強い演奏が特徴です。

正午からは、神輿舎から月山神社、出羽神社、湯殿山神社の三基の神輿が出されて、三神合祭殿で神移しの儀が行われます。
それから、献燈三基とともに神輿は三神合祭殿前の鏡池一周を巡行します。

稲の花と花梵天

花梵天
神輿御渡が始まる前は合祭殿の前に置かれていました。

花梵天は稲の花に見立てています。おや、稲の花といえば…

高寺八講の花笠にも使われている花ですね。このようにして高寺八講は出羽三山と縁があります。

花祭の巡行
高寺八講の薙刀を持つ山伏姿の舞い手と、花笠を被りビンササラを鳴らす舞い手が見られました。

高寺八講や出羽三山神社で行われる祈年祭(5月8日)では田植えを表現し、花祭ではその稲が無事に育つように願います。
花祭りの巡行では、前導山伏を先頭に、神木、万灯、神輿、斎主以下祭員
巫女、高寺八講連等が続きます。

神木
紙垂(しで)が付けられています。
花を取り合う様子
※画像はコロナ禍前のものです。

先ほどの画像では見えない為補足させていただきますが、花梵天はこのようにして体重をかけて重心を傾けて花を取りやすくしつつも倒れないように、花梵天に括り付けた縄で引きます。

花梵天を支えるための縄を作る若者衆
ねじって強度を高めています。

花には神の恩恵が厚く、それゆえ良き実りが得られると信じられているため、持ち帰って家の門戸に飾り、五穀豊穣、家内安全、悪魔退散の護神とします。そのために参拝者は花を取り合うのです。

夏の峰の面影とお盆

柴燈祭
※画像はコロナ禍前のものです。

花祭は、山伏修行である夏の峰のかつての盛儀でした。昔は、陰暦の4月8日から7月14日までの96日間羽黒三所権現の宝前に花を供えて、始夜(深夜)と後夜(未明)に鐘を撞いて現世・後世の安穏と菩提を祈るところから「花供(はなく)の峰」ともいわれていました。*¹
この期間の入峰は「夏の峰」と呼び、煩悩多き現世から悟りの彼岸に駈ける修行としていたようです。この夏の峰中の盛儀が6月15日(陽暦の7月15日)、羽黒山頂で行われる花祭りでした。夏の峰はこれより一か月間つづき、修行満願である最終日の前夜、つまりお盆(注1)の時期には柴燈祭という三界万霊の成仏を祈るお祭りが月山山頂で行われるのです。

注釈・参考

*¹ 『出羽三山修験道の研究』戸川安章著,1973

注1:鶴岡市は7月をお盆(新盆)とする地域と8月(旧盆)をお盆とする地域がある。新盆は主に鶴岡市街地や海側(加茂や湯野浜、温海)。