見出し画像

部下の進捗管理はもうやめよう。信じることから始まる進化型組織へのアップデート方法

世間では「働き方改革」が叫ばれており、ノー残業デーやリモートワークなど、新しい制度を取り入れる企業も増えています。しかし、制度を作ってみたもののうまくいかない、利用されない、なんて会社もあるかもしれません。

なぜ会社の制度を変えても上手くいかないのか?それは、その制度を運用するにあたって当事者の意識や慣習が変わっていないから、という可能性が高いです。どんなに最新で、他で流行っているアプリケーションを持ってきたところで、それが動くOSが整っていなければ運用できない、それと同じ様なイメージです。組織変革の本質は、どんな制度を作るかではなく、どんな意識のもとで運用していけるかという部分にあります。

前回の記事では、会社のバックグラウンドで無意識に動いている、意思決定をするブレイン「経営のOS」について紹介しました。今回はその続編として、「OSの種類」と「具体的なアップデート方法」をご紹介します。

経営OSには5つのバージョンがある(書籍『ティール組織』より)

さて、経営のOSといった時に、そもそもOSにはどのような種類が存在するのでしょうか?

OSの種類を説明するのに分かりやすい参考例として、「ティール組織」の5つの組織モデルがあります。ここでは便宜上、5つの組織モデルをそのまま5つの経営OSの種類として捉えていきたいと思います。以下に簡単に5つの組織モデル(OS)を紹介しますので、ご自身の会社はどの組織モデルに当てはまるのか、考えながら見ていってくださいね。

OS 1.0:Red(レッド)衝動型
力を持った支配者による(恐怖)政治、統治。全てを「力」を通じて見る世界観。
メタファー:狼の群、マフィア、ギャング

OS 2.0:Amber(アンバー)順応型
規律を重んじるヒエラルキー組織。形式的な肩書き、職務、指揮命令系統がしっかりとある。ルールや規範に従って行動することが大事。1つの正しいやり方があり、不変であるべきという世界観。
メタファー:軍隊、宗教組織、学校組織

OS 3.0:Orange(オレンジ)達成型
「より早く、より多く、効率的に」を重視する。実力主義であり、戦略的計画、年間予算、KPI、業績評価やボーナス制度を運用。「成功=お金」といった世界観。完全な物質主義で自分で触れるものや“科学的“に証明できないものには興味なし、存在しないという考え方。
メタファー:効率を追求する機械(例:資本主義の一般的な企業)

OS 4.0:Green(グリーン)多元型
多様性を尊重したボトムアップ型組織。行き過ぎた物質主義の見直し、社会的不平等、コミュニティー喪失や自然破壊への問題意識を持つ。社員は機械の部品ではなく、命の宿った個人として、全員で話し合うことを重視する。ヒエラルキー構造をなくし権限の委譲を進めたり、自分たちにとって大切な価値観やミッションを土台に文化形成し、それを追求する。
メタファー:家族

OS 5.0:Teal(ティール)進化型
自主自立であること、あるがままであること、そして存在目的を重視する。自らのエゴを捉え、それに対して一定の距離を取れる成熟した自我な状態である人たちが多く、1人ひとりの可能性や才能が発揮されていく働き方、生き方を大事にする。
メタファー:生命体

さて、皆さんの会社は、どの組織モデルに当てはまったでしょうか?

現在、日本企業の多くは、レッド・アンバー・オレンジのいずれかの組織モデルを主軸に運営されていることが多いです。

そういった組織では、「成功は売上(お金)の多寡で測れる」という価値観のもと規模を追い求める傾向があり、組織で働く人たちに対しては「成果を上げられる人に価値があり、優秀である人が正義」が当たり前になりやすくなります。そして、いかに早く、いかに効率的に、大きな成果をたくさん上がられるかを日々、競い、追い求める環境になりがちです。

そうした、オレンジ的OSの組織に対して、新しいOSに基づいたティール型の様な組織では、働く人たち1人ひとりの可能性を広げ、それぞれの才能がより輝く経営を模索し、実践してきています。

新しいパラダイムに基づいた経営が徐々に広がって来ている

例えば、いい波が来ているから、仕事を抜けてサーフィンに行く。働く場所も、働く時間も自由。お給料も自分たちで決める。

こうしたことは、皆さんの会社では実現可能ですか?それとも「何、言っちゃってるの?」という感じで、非常識なことでしょうか?

ティール型の組織では、上記のようなことが実現可能であり、社員が好きな時にサーフィンに行くことができる会社もあれば、働く時間も場所も完全自由で、目標もお給料も自分たちで決められる会社もあります。自主自律型の組織として成り立っているわけです。

こうした会社が示していることは、一昔前では(もしかしたら今でも?)非常識に思われたことが当たり前として実践されているということです。

ティール型組織のOSでは、「会社で働くということは、働く時間と場所が決められているものだ」や「勤務時間中は仕事しかしちゃいけない」、「お給料というのは上が決めるものだ」という前提が覆っていて、そうした前提を持たずに会社経営が行われているのです。

まずは、自分のOSを構成する”前提”の点検から

そういう自主自立の会社を目指したいし、経営OSのアップデートには興味はあるけど、「うちの会社でOSアップデートをするのは無理だよなぁ」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

難しいよなぁ、無理だろうなぁと思っている方は、まず組織をいきなり変えることを目的とせず、自分たちの現在地を知ることから始めてみてはいかがでしょうか?
経営のOSとは、その組織を率いるリーダーたちを中心に、社員の方々の前提意識によって構成されていますので、経営のアップデートを行う際には、自分たちの前提意識を棚卸していくことが大変オススメです。

自分たちの前提意識を棚卸しするとは、例えば、OSアップデートは無理だと思うその思いの根源に「意思決定権を社員に渡したら怠けるのではないか…」という不安や、「権限を握り、社員を管理統制しなければ会社はまわらない!」といった思いがあったりしないか、点検することです。そして、その思いが、どこから生まれたのか、深掘りをしていく中で、自分が意思決定を譲れない理由や、何かにしがみついてる背景が見えてくるかもしれません。

先ほど紹介したティール型組織では、社員全員が自発的に考え意思決定をすることをサポートし、応援するのが当たり前なOSです。ですので、頻繁に振り返りをする機会がありますし、社員個人も内省することが推奨され、それをサポートされています。

自分たちの前提意識を明らかにして、それを共有できる場を作り、対話を始めていくことから徐々にOSアップデートの土壌が育まれていきます。

上司の役割は「指示命令」から「サポート・場づくり」へ

ティール型組織の様なOSへアップデートしていく際には、それをリードする上司の役割が大切になります。ズバリ、「コントロール型」から「コーチング型」へとリーダーシップの取り方を徐々にシフトさせていく必要性があります。

これは、部下の中に答え(願い)があるという前提のもと、相手の力や可能性が最大限に発揮されていく様に、サポートしていくということです。

OSのアップデートを目指す欧米の企業では、マネジメント層に対してコーチング研修を行うことが増えてきており、コーチング型の関わりが出来ないマネジメント層はコーチング型を得意とする人たちとリプレイスされたりもします。

アンバーやオレンジの組織が、ティール型の様な組織を実現する上では、リーダー層の社員への関わり方が変化していく必要性があり、その際には指示命令を中心としたコントロール型から、サポートや自主自立を促すコーチング型への移行が鍵を握っています。

注意点:OSアップデート時に起こりがちな旧型OSの逆強化

最後に、早速OSをアップデートしようと形から入ってしまうと、うまくいかずにアップデートを諦めてしまうばかりか、旧バージョンのOSをより強化してしまう場合があります。(これはすぐに結果を急ぐオレンジ志向の強い方々によく起きがちなことです)

例えば、「そうか!コーチング型リーダーシップが大事なのか。」と知った上司の方が早速明日から、コーチング型だから指示命令ではなく、任せるんだなと思ったとします。そして、その上司の方は部下に対して「今後の目標は自分で立ててくれ。私から目標を強要するのはもうやめる」と、唐突にマネジメント方針を変えます。

「どんな目標を立ててくるかな」「どんな効果があるだろう」と思っていながら数日後に部下に目標を聞いてみると、、、部下は浮かない顔でもごもごしている。そんな部下を見て、上司は「なんだ、全然うまくいかないじゃないか、これなら前の方がよかったな…!」と思ってしまうわけです。

そして、その上司は、コーチングは機能しないと結論付け、成功体験がある旧型OSをより強く信じ、そちらに対する信奉を強固なものにしてしまうのです。以降、その上司にコーチング型をオススメしても、「それはうまくいかなかった」「結局任せてもうまくいかないから、指示命令の方が結果がでるよ」となったりします。

こうして、結果を急ぎ性急に進めてしまった結果、旧型OSの逆強化が起きてしまうというケースが起きてしまいます。すぐに結果を急ぎ、早く結果を求める心のまま進める、、、それそのものがオレンジ型OSの状態な可能性が高いですから、新しいOSへのチャレンジ時はよく自らを省みながら進めていくことをオススメします。

また蛇足ではありますが、部下を信頼する・自由にさせるというのは、決して「放置する」ことではありません。コーチング型とは従来の指示・命令の役割をやめることで、仕事や意思決定を部下に任せて放置することではなく、部下の意見・声によく耳を傾け、オープンに対話をしながら進めていくことです。そして、部下のことを見守り、意識を向けていることが大事になります。

まとめ

今回は、書籍『ティール組織』を参考に経営OSのバージョンを紹介し、多くの企業がなぜティールを目指すべきなのかと、ティールへとアップデートする方法を解説しました。以下で記事の要点をまとめます。

・経営OSのバージョンには、レッド・アンバー・オレンジ・グリーン・ティールの5つがある。
・OSアップデートの為には、まず自らのOS点検から始めることがオススメ
・ティール型OSへのアップデートでは、リーダーの役割は「コントロール型」から「コーチング型」へ変化していくことが望ましい。
・OSのアップデート時に注意したいのが「逆強化」。表面的に手法だけを取り入れるとアップデートに失敗し、逆に旧型OSを強化してしまうことがある。

皆さんの会社の経営OSは何色でしたか?それを確認されたあなたは、もうすでに変化への一歩を踏み出していると思います。このnoteが、組織づくりに悩んでいる方の参考になれば嬉しいです。今後もnote連載を通して、幸せなティール組織作りのヒントをご紹介していきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?