モンテッソーリのコスミック教育:東洋と西洋が出会うところ
ひとつの人類という意識。遠いゴールにも思えるが、これを達成するのが現代の課題のひとつであると思う。モンテッソーリの思想にはこの点でも聞くべきことがある。
モンテッソーリの小学生向けのカリキュラムにコスミック教育というものがある。そこでは世界と人間の歴史が物語として語られ、子どもたちはその印象を胸に生物、数、言語、アートなど日々の具体的な学びを進めていく。物語という形で全体を感じた上で、部分にフォーカスする。
そこに表れている世界観を要約すると以下のようになる。
・世界は不可分である
・あらゆるものはつながっている
・その中の主体にはそれぞれの使命がある
マリア・モンテッソーリというイタリア人がインド滞在後に生み出した、西洋と東洋のハイブリッド思想。もちろん仮説ではあるが、子どもが自分なりの世界観を作っていく際の手がかりとしてはかなり質の高い部類に入るのではないかと思う。
彼女の思想の中の西洋的要素
・人間は一人ひとり神に造られたものであり、個人の人格には無限の価値がある。
・一人ひとりの人間には使命がある。
東洋的要素
・人は自然と宇宙のただ中で生まれ、すべてと繋がって生かされている。
・孤立した「私」というものは存在しない。
・「私」の外にある客観的世界というものも存在せず、主体と客体という考えは妄想である。
西洋の人間観と東洋思想とが融合したこの世界観には、子どものための枠組みという価値を越えて、現代という時代に対するヒントがあるように思う。
たとえば…
小さな自我を手放す。
自然、宇宙、全体とのつながりを取り戻す。
大きなものと繋がった広くて深い我、排他的でない我々という意識を作り出す。
そしてこのような新しい人間が、地に足をつけて、能動的に未来を作りだす。
これが現代の大きな課題だと思う。たとえば持続可能な未来を作り出すことなど、現代が抱える問題は、人間観が根本的に変わらない限り解決できないものが多い。逆に言うと、深いところでのちょっとした変容は、現実を大きく変える力になりうる。
システム思考、U理論など、すでにビジネスの世界でも内面の変容や全体のつながりにフォーカスする方法が市民権を得つつある。最新のビジネス理論、古き宗教、そしてモンテッソーリ。どれも視線の先の先では同じものを見ている。
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