Copy_of_Copy_of_note_おすすめメディア後編

無料で手術し利益率25%、ハーバードが認めるインドの病院:アラビンド眼科病院

こんにちは!
メプラジャパンCEO の佐藤創(さとうはじめ)です。

今日は、私がものすごく大好きなインドの眼科病院、
「アラビンド眼科病院」についてご紹介します!

2011年にこの病院のことを知り、それから本・論文・ネット検索などで情報収集してましたが、おさえきれず2017年に現地を訪問して病院・関連施設の見学をさせていただきました。(インド南部の地方都市にあるので、なかなか行く機会がなかったのです。)

医療関係者に関わらず様々な分野にも通じるような経営をしている、素晴らしい病院です!

画像1


治せる失明をこの世からなくす

1976年、南インドの地方都市・マドゥライにて、アラビンド眼科病院(Aravind Eye Care Hospital)は開業しました。創業者は眼科医 ゴヴィンダッパ・ヴェンカタスワミー医師(通称:ドクターV )とその親族。病床数 11床の小さな病院でした。

ミッションは、
「治せる失明をこの世からなくす」
 To eliminate needless blindness.

白内障を中心とする眼の病気によって失明する人が多かった当時のインド。視力を無くすことは死の次に悲しいことだ、という想いと使命感で設立されました。質の高い医療を、先進国の富裕層だけではなく、新興国の貧困層にまで広げること。それがアラビンド眼科病院が目指したところです。

画像2

現在では、4000床のベッドを持ち、年間 250万人以上の患者を診察・治療しています。徹底的な効率化、必要なレンズと機材を自社開発・製造・販売し、治患者の実に 6割が「無料」で治療を受けています。

「マクドナルド」式の病院経営

アラビンド眼科病院は、マクドナルドの経営手法を研究して効率的な仕組みを作り上げて来ました。「大量」かつ「高品質」かつ「手頃な価格」でサービスを提供するため、標準化や規模の拡大などが進められました。

患者の半数以上が無料で治療を受けているのに、効率的な経営によって利益率 25%を達成。日本の病院の利益率が 1〜3%(そもそも約半数が赤字病院)と比較しても驚異的です。さらに、低価格を実現しながら、つねに余剰資金を備えて自己資金でまかなっているのも驚きです。

そのイノベーションとマネジメントについて、ハーバード大学ビジネススクールでは 20年以上もケーススタディとして扱われています。

スクリーンショット 2019-11-12 17.24.39

HBS:"McDonaldization of Eye-Care"

治療費を払うか決めるのは患者本人

アラビンド眼科病院では「治療費を払うかどうか」を決めるのは患者本人です。つまり、お金を持っている患者でも払わなくても良いし、貧しい患者でも「払いたい」という人は払うことができます。
これは、「患者の尊厳と自尊心を守るため」ということです。

ちなみに、先進国で白内障の手術を受ける場合に 3,000ドル(約33万円)の手術費がかかるのに対して、アラビンドでは  100ドル(約1万円)で手術を受けることができます。そしてもちろんこれは無料でも受けることができます。(日本では10〜20万円ほどでしょうか。)

希望する手術内容に応じて段階的な治療メニューが設定されており、患者の希望に応じて選ぶことができます。

画像5

1つの手術室に、ベッド4台・医師 2人

効率的なオペレーションを追求した形の 1つが、流れ作業方式の手術です。

アラビンド眼科病院では、医師 1人が手術する患者は 1日40〜50人。(日本の場合は 1日数名程度。)それを実現するのが特殊な手術室です。

手術室には、1つの部屋にベッドが4台並び、医師2人と看護師 6-8人程度が入ります。2台のベッドの間に手術機器が設置され、1人の患者の手術が終わるとそれをスイッチしてもう1人の患者の手術をすぐに開始します。手術室で行われる作業の70% を看護師が担当し、医師としての手技が必要な部分のみを医師が担います。

画像4

こうすることで効率的に多くの患者の手術を行うことができます。また、患者の個人情報・手術内容や医師の手術件数などもすべて独自のITシステムで管理されています。

大量に提供することで組織全体の効率性を上げるため、「無料」・「大量」であることはアラビンド眼科病院のモデルにとって必須条件。それによりマーケティング・医療者研修・ワークフローなどの効率化が図られ、組織全体のコストも下げることができます。

さらに、手術に使用する医薬品・器具や人口レンズも通常の 1〜3%のコストに抑えています。質の高い医療をより低価格で提供するため、なんとアラビンド眼科病院として「自社工場」を設立し、圧倒的な価格イノベーションを起こしました!

自社工場で医療材料の価格を 1/100 にし、126ヶ国に輸出

白内障などの手術をするにあたり必ず必要になるのが、眼の中に挿入する「眼内レンズ(人口水晶体)」です。当時、通常は 130ドル以上するこのレンズの費用を払えない患者が多く、治療できないことが課題になりました。

そこで、なんとアラビンド眼科病院は、眼内レンズ・縫合針・調合薬・手術機器などの眼科医療製品を自社で製造開発し、世界中に販売するための会社「Aurolab(オーロラボ)」を設立しました。

製造原価・流通コストなどを徹底的に下げることで、従来の1〜3% の価格で製造できるようになりました。従来 130ドル以上するレンズも、2〜4ドル程度まで価格を下げることに成功しています。

現在は年間180万個以上の眼内レンズの生産し、世界市場シェア8%、世界126の国々に輸出しています。

画像6

(工場見学の際に出会ったコンゴの眼科医は、Aurolab製品を爆買いして帰ってました)

世界に広がるアラビンド・ネットワーク

現在、アラビンド眼科病院はインド国内に留まらず、世界中の眼科病院の支援をしています。

主には教育・研究などの支援を行っており、世界中の研究機関をネットワークした研究財団や、教育機関を運営しています。インドの眼科医の15%がアラビンドの大学院課程で学んでいるそうです。

また、世界各地の眼科病院向けのコンサルティング事業も行っており、世界中でより良い医療をより安く提供するための多大な貢献をしています。

画像7

(病院に掲げられたドクターV のメッセージ)

アラビンド眼科病院について紹介している日本語の書籍はほとんどないのですが、「ビジョナリーであるということ」という本に、ドクターV とその一族の創業からの歩み、そしてこれからの展望などについて詳しく書かれています。この記事でも本の一部をご紹介していますが、金言が多すぎて掲載しきれませんでした。読むと胸が熱くなるオススメの 1冊です!!



今日はここまで!

ではまた次回!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◎ Twitter でも海外ヘルステック企業の情報などつぶやいています!
 https://twitter.com/hajime_mepla

◎ 最近 Linkedin も良く使っています。海外の動向を追うには Linkedin は非常に有効です!お気軽にリクエストどうぞ!
 https://www.linkedin.com/in/hajime-sato/

◎ 普段は医療ヘルスケア×アジア中心にこんなことやってます!
 メプラジャパンHP https://mepla.co.jp/

最後まで読んでいただき、ありがとうございます! より良い記事をお届けできるよう日々情報アップデートしていきます。